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第2回 基礎:平衡定数と速度定数 — BLIとSPRを学ぶシリーズ —

皆さま、こんにちは。本シリーズでは、BLIとSPRを学んでいきます。
BLIは Bio-Layer Interferometry(バイオレイヤー干渉法)、SPRは Surface Plasmon Resonance(表面プラズモン共鳴) の略であり、いずれも分子間相互作用をラベルフリーかつリアルタイムで解析するための代表的な手法です。参考資料としては、”A Compendium for Successful BLI and SPR Assays”、和訳すると「BLIおよびSPRアッセイを成功させるための総合ガイド」になりますが、こちらを使います。
下記のリンクから入手可能です。

今回は第2回目になります。
最初にご紹介するのはこちらのFigure(12ページ参照)です。

Figure 4
単一のデータポイントのみを含む標準的なエンドポイントアッセイは、全体的な親和性に関する非常に基本的な情報しか提供しません。エンドポイントアッセイ(A)では、すべての分子が同じ結果データセットを示すことになります。一方、速度論に基づくアッセイ(B)では、分子ごとに大きく異なる速度論を示すことが分かります。ある化合物は非常に高い会合速度(on-rate)を示し、これは相互作用の形成にほとんどエネルギーを必要としないことを意味しますが、同時に非常に高い解離速度(off-rate)も示し、形成された相互作用が比較的弱いことを意味します。これらの速度論の違いにもかかわらず、全体の親和性は会合速度(kₐ)と解離速度(k_d)の関数であるため、速度論データのフィッティング(C)によって同じ親和性が観測され、また親和性アイソサームとしてプロットした場合にも明確に確認できます(D)。速度論およびデータフィッティングに関する詳細は、第4章および第5章を参照してください。


Fig.4が示していること:親和性(解離定数)だけでは分からない情報がある

ここで非常に重要な図(Fig.4)が出てきます。本書の中でも、BLIやSPRの価値を最も端的に示している部分だと感じます。
この図のポイントはシンプルで、「親和性(実際には解離定数 $${K_D}$$)だけでは分子間相互作用の本質は分からない」という点にあります。$${K_D}$$は、結合と解離の速さのバランスで決まる平衡定数であり、最終的な(平衡状態に到達した後の)結合の強さを表す指標です。

エンドポイントアッセイでは違いが見えない(Fig.4A)

まずFig.4Aでは、抗原濃度に対するシグナル(OD)が示されています。これは典型的なエンドポイントアッセイであり、平衡状態における結合量を見ています。この測定で得られるのは、あくまで平衡状態における解離定数$${K_D}$$であり、平衡に至るまでの過程については何も分かりません。

リアルタイム測定で初めて見える違い(Fig.4B)

Fig.4Bでは、時間に対する応答が示されており、会合(association)と解離(dissociation)の挙動が観察できます。
ここで重要なのは、同じ$${K_D}$$を持つ分子であっても、カーブの形が大きく異なる点です。

赤の線で示されている分子は速く標的分子と結合して速く解離し、緑の線で示された分子はゆっくり結合してゆっくり解離します。青の線はその間にあります。エンドポイントアッセイでは同じ親和性を持つように見えていた分子が、リアルタイムで見ると全く異なる振る舞いをしていることが分かります。

解離定数は速度定数の比で決まる(Fig.4C)

Fig.4Cでは、会合速度定数(kₐ)と解離速度定数($${k_d}$$)の組み合わせが示されています。

ここで示されているすべてのケースにおいて、

$$
K_D = k_d / kₐ
$$

となっており、$${K_D}$$は同じ値(1.0 nM)になっています。

つまり、$${K_D}$$はあくまで速度論の結果として得られる平衡定数であり、その内訳となる$${kₐ}$$と$${k_d}$$は大きく異なり得ます。

同じK_Dでも相互作用の性質は異なる(Fig.4D)

Fig.4Dでは、横軸にon-rate($${kₐ}$$)、縦軸にoff-rate($${k_d}$$)をとったプロットが示されています。

斜めの線は同じ$${K_D}$$を持つ組み合わせを表しています。
(上側の線は相対的に解離が速く、そのため親和性が弱い($${K_D}$$は大きい)相互作用を示し、下側の線は相対的に解離が遅く、そのため親和性が強い($${K_D}$$は小さい)ことを意味しています。

これは、同じ$${K_D}$$を持つ分子であっても、

* 結合の速さ($${kₐ}$$)
* 解離のしやすさ($${k_d}$$)

といった性質が異なることを意味しています。


まとめ

この図が示していることは明確です。
解離定数($${K_D}$$)は平衡状態における結合の強さを表す重要な指標ですが、それだけでは相互作用のダイナミクスは分かりません。

リアルタイム解析によって、会合速度($${kₐ}$$)と解離速度($${k_d}$$)を分離して評価することで、同じ$${K_D}$$を持つ分子間の本質的な違いを捉えることが可能になります。

今日はここまでです。前回の記事は以下のリンクからお読み頂けます。

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