【漫画原作】背徳のモーパイ 第三話(完)
三十分後。鼻にティッシュを詰めこまれたモンドが目を覚ます。
起きあがるや否や、床に落ちていた牌を一つつまんで、背中にピタッと当てる。
モンド「……あかん。やっぱ、わからんくなっとる」
七瀬「モンド、大丈夫?」
A「おまえ、今日は特に様子がおかしかったからな。しばらく休んどけ」
モンド「ちゃう……ちゃうねん、みんな……じつはな……」
***
三人「背中でモーパイできるようになっただ――!?」
A「……で、おまえはその背中を使って麻雀卓になって、七瀬ちゃんが勝てるように、アドバイスをしていたと……」
C「冗談にしては手が込んで――」
モンド「冗談やない!……けど、あの数え役満のあと、〝プツッ〟っていう音がしたかと思ったら、それからサッパリわからんくなってもうたんや」
七瀬「(ハッとして)プツッって……もしかしてコレ抜いたときかな?」
七瀬は、指先につまんだ15センチはあろうかという白くて長い糸を見せる。
モンド「なんや、その糸?」
七瀬「モンドの背中に生えてたのよ。珍しいから捨てられなくて、ずっとつまんでたの」
モンド「ホンマかいな?……てか、ずっとつまんでたって……はよ捨てろや」
B「それは〝福毛〟だな」
モンド「……? フクモウ? びょ、病気か……?」
B「体に害はない。むしろ福毛は〝福をもたらす〟〝幸運を呼び寄せる〟といわれていて、縁起がいいものなんだ。だから抜かずにそのままにしておく人も多いらしい」
モンド「! てことは、この福毛様が、おれに背中モーパイの能力を授けてくださって、勝たせてくれようとしてくださったってことか」
それがわかると、モンドはぷるぷると怒りが込みあげてきて、七瀬に迫り、
モンド「七瀬ぇ、よくも大事な福毛様を抜いてくれよったな――!? せやからモーパイ能力が失くなったんや! 東一局で失くなったら、なんも意味あらへんやんけ――!!」
七瀬「……ごめん」
と素直に謝る。
モンドはバツが悪くなって、そっぽを向く。
A「というか、まだ信じられねえが……今日はここまでだな。次はイカサマなしで頼むぜ」
と三人が笑って部屋をでていく。
部屋にはモンドと七瀬の二人。
モンド「いやっ、あの~……すまん、いいすぎたわ。てか、七瀬の協力がなかったら、どうしようもなかったんやし……あ、あとは片づけとくから、もう帰ってええで」
と牌を片づけようとする。
そのモンドの手を、七瀬がぎゅっと押さえる。
モンド「な、七瀬!?」
七瀬「あたし、もっと麻雀してみたい」
モンド「エエッ!? せやけど、おれには背中モーパイが、もう……」
七瀬「そうじゃなくて、今度は一人で打てるようになりたいの。だから、もっと教えて」
モンド「そら、もちろんええけど……一日二日習ったくらいで、いっちょまえになるんは難しいでぇ~?」
七瀬「じゃあ、毎日来る」
モンドはドキッとする。
七瀬「か、勘違いしないでよ! モンドがちゃんと授業に出るかどうか、監視するのも兼ねてるんだから」
モンドはしばし呆然としていたが、大声で笑って、
モンド「わかった! 七瀬がそこまでいうんやったら、授業にもちゃんと出る! せやけど麻雀も手は抜かへんで!」
それを聞いて、七瀬はニコッと笑顔になる。
福毛が扇風機の風に飛ばされて、窓の外に舞っていった。
