【漫画原作】背徳のモーパイ 第二話
翌日。三人の男がモンドの部屋にあがってくる。
そこにはモンドと七瀬の姿。
モンド「おまえら、待ちくたびれたで――」
A「なっ!? なんで七瀬ちゃんがここに? まさかおまえら付き合ってるのか!?」
七瀬「ば、バカいわないでよ、だれがこんな田吾作と! 面倒くさかったけど、どうしても来いっていうから」
横でクールぶっているモンドが、ひそかに心を痛めている。
三人のうちの一人がモンドのそばに駆け寄り、耳元で、
B「……モンドよ、七瀬ちゃんを帰してやれ。好きな娘の前で恥をかきたいのか」
モンド「クックック……なに勘違いしてるんや。今日おまえらの相手をするんは、おれやない、この七瀬や」
三人「はあ!?」
モンド「七瀬の勝ち負けは、おれがぜんぶ受け持つ。つまり代打ちっちゅうわけや」
A「な、なんだそりゃ……おまえもついにヤキがまわったか……」
B「女の子に代打ちを頼むとは……」
C「ダサいな……」
モンド「おまえら好き勝手ぬかしとんちゃうぞ! おれはちゃんと〝卓〟やるわ!」
三人「……たく、やる?」
モンド「そうや。おれが四つんばいになって、麻雀卓になる。自慢やないけど、おれの背中って結構広いほうやし。がんばれば、いけるはずや」
三人 M(……!! この暑さと酷い負けっぷりで、ついにモンドがおかしくなった!)
と三人のだれもが思う。
A「そ、そういえば、おれ、用事を思い出した」
B「お、おれも、午後に必修の講義があったことをすっかり……」
と三人は帰ろうとするが、モンドが三人の前に立ちはだかる。
モンド「勝負したってくれ、七瀬と! 七瀬には麻雀のルールは仕込んどいた! そんで、おれを雀卓として使ってくれ! 頼むわ!」
A「あ……あのさ、いくらおまえの図体がデカイからって、背中の上で麻雀するのは無理があるだろ」
モンド「フフフ、コイツがおる」
と押入れから何かをとりだす。
それは「ポケッタブル本格ミニ麻雀牌セット」。
モンド「前に四人で旅行にいったとき、新幹線のなかで使ったミニ麻雀セットや!」
C「なつかしいな」
B「いや、でも、そこまでするか……」
モンド「そこまでするか、ってとこまで来とるんや、おれらは。しかもこの牌はミニのくせに、牌の絵柄はただの印刷やなくて、ちゃんと彫られてるってとこがミソで――」
といいかけて、あわてて口をつぐむ。
三人は目を見合わせたあと、あきらめたようにため息をつく。
***
A「うわっ、汗で牌が張りつく……全然まざらねえ」
B「お、おい、そっち牌が落ちたぞ……」
C「狭い……」
上半身裸のモンドが、両手両膝をついている。
彼の背中の上で、かきまぜられる牌。
メンツはモンドの代わりに七瀬が入っている。
一人が山を持ちあげて積もうとするが、崩れてしまう。
モンド「バランスがわるいんや! 山は積まんと、二列に並べるだけでええねん! あと、手牌も倒れやすいから、伏せながらやったほうがエエと思うなァ!」
三人「(ビクッとして)は、はい……」
モンド M(すべては、勝つため……こちとら負けすぎて、学食のカレーも喰えへんのや!)
麻雀が辛うじて進行している。モンドはじっと目を閉じて、集中している。
モンドの脳内には、背中の上に広げられた牌(捨て牌とドラ表示牌と🀆以外)が映しだされている。
モンド M(完璧や……全員の手牌、山にある牌まで全部わかる……わかるんやでぇ!)
モンドはハッとする。七瀬の手牌が以下となっていることに気づく。
🀌🀌🀌🀍🀑🀒🀓🀔🀕🀖🀝🀞🀞 ツモ🀟
七瀬「えーっと……ドラは🀝の次だから、🀞でしょ……うーん」
と何度も手牌を立てたり伏せたりしながら確認する。
最終的に🀞をつまみだす。
モンド「待て待て待て待て……」
とモンドの頭のすぐ前にすわっている七瀬にむかってささやく。
ビクッとする七瀬。
モンド「一夜漬けにしてはセンスええで七瀬……せやけど、ちゃうねん……切る牌は……」
A「……おい、小声でもバレバレだぞ。助言ってアリなのかよ?」
B「しかし、モンドの位置から七瀬ちゃんの手が見えるわけないんだが……」
と三人は首をひねっている。
七瀬はモンドからのアドバイスを聞き終えると、
七瀬「……わかった、これを切ればいいのね……リーチ!」
と🀍を横向きに置く。
三人のツモ番がすぎて、七瀬がツモ牌をとる。それは🀌。
七瀬「あれ? これは……?」
モンド「カンせえ!」
七瀬が🀌を四枚倒す。
すると、新ドラ表示牌が🀋。
A「げげっ、乗ったぞ」
モンド「リンシャン牌を引け!」
七瀬「は、はいっ!(とリンシャンを引き)あっ、これって……?」
モンド「ツモ――ッ!!」
七瀬が手牌を倒す。
🀑🀒🀓🀔🀕🀖🀝🀞🀞🀟 暗カン🀫🀌🀌🀫ツモ🀞
A「ちょ、ちょっと待てよ……表ドラが🀞と🀌で……裏ドラが……また🀞!?」
B「か、数え役満……だな」
C「すげー待ち……」
モンド「やった……やったで、七瀬!」
とパッと明るい顔になって、麻雀開始からずっと閉じていた目をあける。
と、すぐ目の前には七瀬のむっちりとした太ももがある。
モンド M(ぶっ! あ、アカン……これはヤバい……刺激が強すぎる……)
と思いつつも、目は七瀬の太ももに釘付けになっている。
その一方で七瀬は自分のアガリ手をまじまじと見つめて、
七瀬「そんなにスゴい手なんだあ……」
と感動している。三人が七瀬に点棒を払い終えると、牌を崩しはじめる。
七瀬「あっ……」
七瀬の手牌も崩される。
七瀬は名残惜しそうに牌がまざっていくのを見つめる。
が、やがてあきらめたように自分も牌をまぜはじめる。
そのとき、
七瀬「……?」
とモンドの背中の上にある「何か」に気づく。
七瀬はそれに手を伸ばす。
一方そのころ、モンドはまだ太ももに見入っていた。
次の瞬間、モンドの頭の上に、七瀬のふっくらとした胸がムニッと当たる。
モンド M(――ッ!!? こ、この頭の上にのってるモノは……まさか――!?)
プツッ――という音が、モンドの頭のなかに響く。
モンドは、頭のなかが真っ暗になっていることに気づく。
モンド M(……って、アレ? なんや? 牌が……わからんくなってもたぞ……)
七瀬「どうしたの、モンド? 具合悪いの?」
とモンドの顔を覗きこむ。
七瀬の可愛い顔を目前にして、モンドは鼻血をだして卒倒する。
