#98 俺、修論という言葉に震える パパ、いんせーになる
〇月×日
気付けば、
修士1年も終わりが近づいてきた。
未だに、
授業の課題には苦戦している。
文献を読んで、
レポートを書いて、
インタビューをして、
データをまとめる。
毎日、
目の前のことをこなすだけで精一杯だ。
そんなある日、
何気ない会話の中で、
先生が言った。
「修論はね──」
……
修論。
その二文字を聞いた瞬間、
頭の中で何かが止まった。
そうか。
4月からは、
修士2年だ。
そして、
修士2年といえば、
修士論文。
修論が完成しなければ、
卒業できない。
……急に
現実味が増した。
そういえば、
一期上の先輩が、
研究室で修論を書いていた。
いや、
正確には、
泊まっていた。
夜遅くまで研究室に明かりがついていて、
「あれは、かなり大変なやつだ。」
と思っていた。
今になって気付く。
来年、
あそこにいるのは、
自分かもしれない。
想像してみる。
もっとデータが増えて。
もっと分析して。
もっと文献を読んで。
もっと書いて。
最後には、
一冊の論文になる。
……。
想像しただけで、
少し震えた。
いや、
結構震えた。
でも、
きっと、
今の自分が想像している修士2年と、
実際の修士2年は違うんだろう。
大学院に入る前も、
勝手に想像して、
勝手に不安になっていた。
でも、
ここまで来られた。
だから、
今回もきっと同じだ。
未来を心配し過ぎても、
修論は一文字も進まない。
と思うことにしよう。
まずは、
目の前の研究。
目の前の課題。
目の前の一日。
それを積み重ねた先に、
修論があるのだと思う。
……たぶん。
いや、
そう信じたい。
どうやら、
社会人院生は、
一年先の未来に震えながら、
今日の課題を終わらせる生き物らしい。
(たぶん、つづく)
