父、関西のおばちゃん化説 (番外編研究ノート)
〇月×日
先日、
妻に言われた。
「最近、関西のおばちゃんみたいだね」
と。
失礼である。
いや、
おばちゃんは
リスペクトしている。
たぶん
こちらは
社会人大学院生である。
一応、
研究もしている。
論文も読んでいる。
なのに、
なぜ関西のおばちゃんなのか。
理由を聞くと、
妻は言った。
「だって、飴持ち歩いてるじゃん」
確かに持ち歩いている。
しかも、
数種類。
そして、
人にも配っている。
言われてみれば、
少し心当たりがあった。
そもそも、
若い頃の自分は、
そこまで
甘い物が好きではなかった。
嫌いではない。
食べれば美味しい。
でも、
積極的に食べたいとも
思わなかった。
むしろ、
ブラックコーヒーを飲んでいる方が、
少し大人っぽい気がしていた。
たぶん、
格好をつけて
背伸びをしていたのだと思う。
ところが最近、
様子がおかしい。
仕事が終わる。
大学院の授業が終わる。
論文を読む。
研究のことを考える。
すると、
甘い物が欲しくなる。
チョコ。
クッキー。
どら焼き。
シュークリーム。
なぜだろう…
頭を使っているからだろうか。
年齢だろうか。
若い頃の反動だろうか。
それとも、
もう格好をつける必要が
なくなっただけだろうか。
理由は分からない。
ただ、
甘い物を欲している
自分は確かにいる。
とはいえ、
毎回ケーキを
食べるわけにもいかない。
コンビニへ行けば、
だいたい解決する。
チョコもある。
シュークリームもある。
アイスもある。
だいたい欲しいものは揃っている。
だから最近は、
コンビニの誘惑と戦っている。
その時、
家族の顔を
思い浮かべようにする。
妻。
長女。
次女。
そして耐える。
どんな天秤のかけ方なんだ。
シュークリームと家族…
自分でもよく分からない。
ただ、
意外と効果はある。
そこで考えた。
゛飴ちゃん゛
これなら、
いつでもどこでも食べられる。
持ち運びもできる。
しかも、
ローコストである。
一袋買えば、
たくさん入っている。
社会人院生の
財布にも優しい。
ただし、
弱点もある。
暑さである。
気付くと、
袋の中で少し
飴が溶けている。
そして、
包み紙に仲良く
くっついている。
そこは、
仲良くならなくていい。
あれはちょっと
イラッとする。
完璧な存在ではないらしい。
それでも、
思わぬ効果もあった。
人との距離が少し縮まるのである。
「よかったらどうぞ」
そう言って渡すだけで、
会話が始まる。
若い学生とも。
留学生とも。
意外と話の
きっかけになる。
以前、
留学生に飴を
渡したことがあった。
すると後日、
お礼に母国のお菓子を
持ってきてくれた。
思わぬ物々交換である。
おかげで、
こちらも海外のお菓子を
知ることができた。
どうやら、
国際交流は教室だけで
行われるものではないらしい。
飴ちゃん1つでも始まる。
外交官ではない。
ただの飴ちゃんである。
それでも、
十分世界と
渡り合っている。
もしかすると、
飴ちゃんは
サムライブルーなのかもしれない。
ちょっと何を言っているのか、
自分でもよく分からないが…
そして、
何種類か持っていると、
選ぶ人にも
特徴がある気がしてきた。
フルーツ系を選ぶ人。
ミルク系を選ぶ人。
のど飴を選ぶ人。
飴の選び方には、
その人らしさが出る気がする。
そんな心理テストもありそうだ。
「飴ちゃん診断」
みたいな。
もちろん、
そんなものが本当にあるのかは
知らない。
ただ、
研究者っぽい悪い癖で、
つい観察してしまうのである。
いや、
調子にのって
研究者っぽいと言ったが、
まだ論文を一本も出していない。
ただの院生である。
そして最近、
気づいたことがある。
昔、
関西のおばちゃんは、
なぜ飴を持ち歩くのだろう
と思っていた。
今なら分かる。
あれは、
ただのお菓子ではない。
コミュニケーションツール
だったのである。
気づけば自分も、
飴ちゃんを持ち歩き、
人に渡し、
勝手に分析まで始めている。
どうやら、
社会人院生のおじさんは、
関西のおばちゃんに
近づくらしい。
今回、
1事例ではあるが、
そのデータは取得できた。
ただし、
一般化できるほどの
エビデンス(根拠)はない。
引き続き、
経過観察が必要である。
自分を。
ちなみに、
娘たちはまだ、
父がおばちゃん化していることを
知らない。
今後の研究課題である。
以上、研究ノートより。
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