富山が「2025年行くべき52ヶ所」に選ばれたらしい。(超インドアな私でもここだけは絶対行ってみてほしいと思う場所を紹介)
2025年1月7日にアメリカの「ニューヨーク・タイムズ紙」が「2025年に行くべき52カ所」を発表。その中で富山が選ばれた、と紹介されていた。
「2024年に地震と豪雨で壊滅的な被害を受けた能登半島の玄関口として、復興途上にありながらも、復興の一環として観光客を魅了している、として評価された」とのこと。
学生のときは石川県にいたけど、私は生まれも育ちも今も富山。
確かに何食べても美味しいのは魅力だけど取り立てて他に何もない。
職場でも喜びの声とかより
「なんで選ばれたん?」
「金でも積んだんじゃないがけ?」
「そいダラみたいこと言われんちゃ。」
「でもそれくらいせんと選ばれんちゃ。」との声で持ちきりだった。
でもせっかくだから「行ってみたい」と思っている人には満足してもらいたい。
ピックアップされていたのは「おわら風の盆」とか「富山市ガラス美術館」だけど、私がどうしてもオススメしたいのは
「黒部峡谷」です。
超インドア派の私でもまた行きたいと思うし、一生に一度は訪れてもらいたい場所。
数年前に行ったのだが、その時は
「トロッコと関電竪坑エレベーターで行く黒部峡谷パノラマ展望ツアー!!」ていうのがやっていた。
黒部峡谷トロッコ電車の終点「欅平駅」の先、普段は立ち入ることができないエリアや北アルプスの山々を間近に展望できるルートを散策する、特別企画の日帰りツアーである。
普段見れないところも見られるのでわーわーきゃーきゃー言ってたら関西電力の人に
「都会から来られたんですか?」と聞かれ
「いえ!黒部市出身です!」って言ったら
「めっちゃ地元やん‥」て言われたけど地元やからこそ行かんかった場所ってありますよね?



今はこのツアーはしてないんだけどまたやらないかなぁ。(令和6年能登半島地震の影響で、黒部峡谷鉄道の全線開通に合わせて予定している黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放・旅行商品化の開始は、令和8年以降となるそう。)
今したらめっちゃ外国人多そうだけど‥。
2002年の紅白。中島みゆきさんが黒部ダムで「地上の星」を歌ってくれたのはもう昔のことだが、私は鮮明に覚えている。
みゆきさん、途中ストールみたいなの脱いだけど死ぬほど寒くなかった?
(中島みゆきさんは「プロジェクトX」にお礼を申し上げる意味で番組に登場した場所で歌いたい、と富士山、青函トンネル、黒部ダムの3ヵ所が候補にあがり黒部ダムを選んでくれたらしい。)
ツアーはワクワクするし楽しいのだが、どこか厳かな雰囲気もある。
形容しがたいこの雰囲気。
トンネル工事ではたくさんの犠牲者を出したからなのだろうか。
黒部峡谷鉄道本線の駅で同線の終着駅である「欅平駅」に吉村昭の「高熱隧道」という本が紹介されていた。
⚠️小説のネタバレが嫌な人、グロいのが苦手な方はこの先は読まない方が良いかもしれません。
有名な「黒部の太陽」も同じ黒部ダムのトンネル工事だが、これは第四発電工事の話である。
小説は第三発電所工事の話。黒四ダムにいきつくまでの第一発電所(ダム)~第三発電所を戦前に作り上げる難工事が主なエピソード。
時は1936年、戦争に向かって突き進む日本は製造業とその電力供給源を拡大するための施策を行なっていた。そこで計画されたのが仙人谷ダムと黒部川第三発電所の建設。
高熱のトンネルでダイナマイトを使う鑿岩作業。
泡雪崩(ほうなだれ)により一夜にして三階建ての宿舎が消える。泡雪崩のショックから神経に異常を来たすものたち。
160度を超える高熱地帯を貫通させるために、ダイナマイトの自然発火による死と隣り合わせで進んでいく。掘り進める。専門家たちが「おおよそ摂氏95度」と予測を立てるが、実際にトンネルに入ると107度。
また別の日は何と150度温度計が割れてしまっていた。この日は160度を超えていたのである。
摂氏160度って想像できるだろうか。
私には想像もつかない。
自然VS人間。
技師VS人夫。
人夫→雑用の力仕事をする労働者。ニンプ、古い場合ニンブとも呼ぶ。今は差別用語と捉えられる場合も。
人智を超えた自然の脅威。特に人が住んでいないような場所の自然の脅威なんて人間が予測を立てられるものではないだろう。
そして‥いつの時代も現場の人間と管理する側の人間には温度差というか埋められない何かがある。
小説は技師側の視点で描かれており、常に死と隣り合わせのような環境で過酷な労働を強いられた人夫側の心情はあまりわからない。
技師は人夫たちのことを「単純で素朴で考えることが嫌で貯えができるくらいの特別賃金を出せば働いてくれる人たち。」と思っている。
爆発で亡くなられた人夫たち。
遺体はバラバラで肉塊が散乱するが「佐川組」の工事事務所長の根津はその破片を拾い上げ、出来る限り糸で繋ぎ合わせようとする。そして白い布をかける。駆け付けた遺族に惨たらしい姿を見せまいとする配慮である。
根津の本心はわからない。
次々と増える犠牲者。その死を悼むというより人夫にこれ以上不満を抱かせないためにしていたのではないかと思ってしまう。(例えそうであってもバラバラの遺体を長時間かけて縫い合わせようとすること自体すごいことではあるが。)
高額の日当が出るとしてもその代償は自分たちの命かもしれない、ということに人夫たちももう気付いている。
私は単純バカな人間なので、どれだけ過酷であってもトンネルが貫通すれば最後は技師も人夫もお互い「良かったね」「やり切ったね」となるラストかと思っていた。例えその貫通した一瞬だけだったとしても。
何せ国家の威信をかけたプロジェクトを遂行したのだから。
しかし待っていたラストは感動も達成感も誇らしさもなかった。
待っていたのは「人夫たちの爆発寸前の憎悪」だけだった。
ラスト、長老(?)みたいな人が技師たちに言う。
「あんたたち。急いで山を下りなさい。これ以上ここにいるとどうなっても知らんぞ。」
技師たちは山を下りる。限界まで膨れ上がった人夫たちの憎悪の視線を背に受けながら。
技師たちも指示はしてもトンネル工事をストップさせる権限はない。政府の命令だから本来憎むべき対象はそちらなのだが、技師たちに憎悪が向けられる。
ここまでひどくなくないにしても、ブラック企業とか今でも似たような構図ではないだろうか。
私はよく本を紹介しているが今回は積極的にはオススメしない。
今まで読んだ本の中で一番こわかったから。
読んだ後、表紙を見るのすらこわくてタオルに包んでいた。
だが一生に一度は読んでおいても損はないと思う。
もし人夫側の視点で描いたら「蟹工船」以上に凄惨かもしれない。
吉村昭と言えば三毛別羆事件をモデルとした『羆嵐』(くまあらし)も有名だが読む勇気はない。
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