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正解のない現場で、何を語り合うか? ~「SOUNDカード™」がひらく“対話”の可能性


こんにちは。青森大学の佐藤淳(さとうあつし)です。
このブログ「Unlearningから始まる自治のデザイン」では、地域や組織をかたちづくる“見えないOS(operating system)”に目を向け、そのアップデートを探求しています。
今回は、私が研修などでも取り上げている「対話(ダイアローグ)」と、その実践のための補助ツール「SOUNDカード」をテーマに、自治体職員や地方議会議員のみなさんと一緒に考えたいと思っています。やっかいな問題が山積する現場で、どうすれば関係性を崩さず、前に進むことができるのか。実践の中で見えてきた「対話の力」について綴ります。

SOUNDカード

なぜ今、対話なのか

いま、私たちは「VUCA」と呼ばれる時代を生きています。
変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)──この4つの頭文字を取った言葉が示すように、これまでの経験や正解が通用しない局面が、自治の現場にも押し寄せています
そうしたなかで、頻繁に立ち現れるのが「やっかいな問題」です。
正解が存在せず、複数の価値観がぶつかり、解決してもすぐに次の課題が出てくる。問題の構造が複雑で、誰が何に困っているのかも見えにくい。しかも、それが「人と人との関係性のなかで生じている」ということが多いのです。
たとえば、ある職員にとっては「上からの指示だからやらなければ」と捉えられている業務が、別の職員からは「市民のためにはならないのでは」と感じられていることがあります。どちらも“間違っていない”のに、話し合いがうまくいかない。これは、意味付けの違いが対話されないまま放置されているからです。
こうした背景からも、いま必要なのは「正しい答え」ではなく、「お互いの意味付けを確認しあい、新しい関係性を築くこと」なのだと私は感じています。そのためのアプローチとして、対話──そしてSOUNDカードという手法に注目してきました。

対話とは何か、「SOUNDカード™」の可能性

そもそも「対話(ダイアローグ)」とは何でしょうか。
意見を戦わせる「討論」や、正解を導き出すための「議論」とは異なり、「対話」は、参加者同士が互いの「意味付け」を確認し、新たな関係性を築いていくプロセスです。社会構成主義という哲学的な背景にもとづき、「何が正しいか」よりも、「どう意味づけているか」を共有することを大切にします。
こうした対話の実践をサポートするツールとして、2022年にオーセンティックワークスの中土井僚さんが開発したのが、「SOUNDカード™」(以下、カード)です。私自身はこのSOUNDコーチ養成講座の第一期修了生として、自治体や議会の現場で実践を続けてきました。
カードは、
S(Status:現状認識の共有)
O(Outcome:ビジョン・ありたい姿の創出)
U(Understand:課題の深掘り)
N(Negative Check:懸念事項の確認)
D(Drive:具体的アクションの決定)
という5段階のステップで構成されています。
それぞれのカードには、「あなたが常々思っていることは何ですか?」「あなたが問題、気掛かりに感じることは何ですか?」など、多彩な「問い」が書かれています。参加者は自分でカードを選び、その問いについて順番に話す──たったこれだけで、普段は言い出しにくい本音や、内に秘めていた違和感が、自然と場に出てくるのです。
中でも、私が特にパワフルだと感じているのが、最初のS=Statusのカードです。ここでは、それぞれが現状への意味付けを語ることができます。立場や役割の違いによって見えている風景がいかに異なるかに気づき、「ああ、この人はこう感じていたんだ」と、相互理解の土台が生まれていきます。
この「意味付けを聴き合う」プロセスこそが、対話の出発点です。そしてその出発点がしっかり築かれることで、後のビジョンづくりや課題の構造理解、行動への合意形成がぐっとスムーズになるのです。
SOUNDカードは、カードの「問い」により、誰でも深い対話を引き出すことができます。その力を、私自身、数多くの現場で実感してきました。

Statusのカード

対話による変化と可能性

SOUNDカードを使った対話を重ねてきて、私が最も強く感じているのは、「関係性の質が変わると、場が自然と動き出す」ということです。
かつての私は、「どうすればこの課題を解決できるか」という視点で物事を整理しがちでした。しかし今では、「この課題に、どんな意味付けがなされていて、誰がどう感じているのか」に目を向けるようになりました。
実際に現場でSOUNDカードを使うと、参加者の表情や言葉に変化が現れます。あるときは、いつも無口だった職員が自分のカードを手にして、「本当はこう思っていたんです」と語り出したことがありました。別の場面では、対立していた議員同士が、「なるほど、あなたにはそう見えていたのですね」と自然に歩み寄る瞬間もありました。
これらは、たった1回の対話で劇的な変化が起きるということではありません。けれど、SOUNDカードを使うことで、対話のハードルが下がり、場が柔らかくなり、互いに聴き合える“下地”が育まれていきます。
特に、「やっかいな問題」と呼ばれるような課題に対しては、誰かが決断して強引に進めるのではなく、「関係性の中で解く」ことが求められます。そんなとき、正論よりも、「問い」と「意味付けの共有」が力を発揮します。対話の積み重ねが、やがてその場の“OS”をアップデートしていくのです。
私は、対話を“特別な手法”としてではなく、地域の日常に溶け込む「新しい習慣」として広げていきたいと考えています。その小さな実践の積み重ねが、自治の風景を変えていくと信じています。

青森市役所 総合計画策定のワークショップ
滝沢市議会 予算審査の議員討議

おわりに

SOUNDカードは、「問い」を通して人と人をつなぎ直す、小さくて力強いツールです。
そして「対話」とは、決して特別な人だけができる技法ではありません。誰もが、自分の見ている世界を言葉にし、相手の世界に耳を傾けることで、関係性を変え、前に進む力を育てることができるのです。
自治体や議会の現場では、日々多くの課題に直面しています。中には、「どうにも動かない」「意見が合わない」と感じることもあるでしょう。けれど、そうした場面こそが、「対話」の出番です。何が正しいかを決めるのではなく、どう意味付けているかを確かめ合う。そこに突破口があるのだと、私は多くの現場で確信しています。
SOUNDカードは、そのための“対話の入り口”をひらく道具です。
もしこの記事を読んで「やってみたい」と思っていただけたら、ぜひご連絡ください。
自治の営みは、制度や仕組みだけでなく、日々の関係性の中でつくられていきます。
「対話」は、その関係性に新しい風を吹き込む営みです。
一緒に、その風を地域の中に広げていきませんか。

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