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あの夏の北海道

8月上旬の朝、新千歳空港行きのフライト。北海道には数年前に上陸しているが、学会発表のついでに札幌や小樽を回った程度。その後、年に数回の一人旅をするようになってから、北海道のことは頭の片隅にあったものの先送りになっていた。ようやく行く気になった時には、憧れの寝台列車は消え、この春いくつかの駅も廃駅となった。とはいえ実質初の北海道旅。窓から見えるウイングレットのハートマークを眺めつつ、まだ見ぬ北の大地に思いを馳せる。

道中の移動は夏旅の恒例となりつつある18きっぷを利用する。はじめは稚内まで行くことを考えたが、ウェブサイトや書籍で情報を集めていると、どうも道東の方が面白そうと思い直す。前々から行きたかった美瑛は途中で寄り道できそうだ。ここでは大人しくレンタカーを半日借りることとする。あとは、海の見える駅を訪問したいので、何駅か候補を探す。釧網線の北浜駅は道中立ち寄れるだろう。他には北舟岡駅が良さげだが、室蘭の少し北なので道東とは反対方向になる。ここは最初か最後に行くしかないだろう。せっかく道東まで行くのだから、釧路を超えて根室まで行きたい。釧路-根室間には18きっぷのポスターにもなった厚床駅がある。この区間の通称ともなっている花咲駅も気になる存在であったが、この春廃止された。こんな感じで出発直前まで大体の行先と宿泊地を決めていくが、旭川から網走方面が上手く乗り継げないことに気づく。あれやこれや調べていると、前日のうちに旭川から少し東の上川まで行っておけば、翌朝の列車で網走まで抜けられそうだ。これで行程の目途が立った。

新千歳空港から先ずは苫小牧まで行く。ここで2時間ほどの待ち時間がある。駅周辺を軽く散策した後、モスに入った。せっかく北の大地に降り立ったのにチェーン店で待ちぼうけのような感じになっているが、実は体調が万全ではないので丁度よい。駅に戻り室蘭行きの普通列車に乗り込む。しばらく走ると海が車窓に現れ、開いた窓から心地良い風が入ってきて、旅に出た実感が湧いてくる。ほどなくして室蘭駅に到着した。ここから地球岬まで歩きたいのだが、少し離れているのとあまり時間もないので近場の八幡宮を参拝し、港近辺を歩いて駅に戻った。

室蘭駅周辺

東室蘭駅を経由して、北舟岡駅に到着した。学生を中心に10名ほどが下車する。前調べでフェンスと駅標識越しに見える海が印象的で訪ねたいと思った駅だ。しばらくやり過ごしていると、他の乗客がはけていき、やがて駅に静寂が訪れる。待合室に入ると駅ノートが壁に掛けられていたので、手に取りページをめくってみる。学生たちが書いたと思われる、およそ品があるとは言えない内容で溢れており、そっとノートを閉じた。何度か列車の通過を見送っていると、やがて陽が傾いてきてフェンスや駅標識をオレンジ色に染めてゆく。夕日を見に来たであろう男2人組とともに、日が落ちるのを見送った。その後、苫小牧まで戻り、少し歩いてホテルにチェックイン。夜食もそこそこに眠りについた。初日に北舟岡駅に行けたので、明日からは美瑛や道東方面に集中できるであろう。

2日目の朝、旭川までの乗車券と岩見沢からの特急券を窓口で購入する。18きっぷはこの日使わない予定だ。旭川駅でレンタカーを借りる際、行先を答えるとエリアマップを手渡してくれた。237号線を辿っていくと30分程で美瑛の丘エリアに到着する。セブンスターの木周辺やジェットコースターの路、青い池といった定番コースを一通り廻る。何度かカメラのレンズを入れ替えたが、ゴミが入ってしまい時間を取られた。WindowsXPの壁紙を思い出させるような風景の連続に、いつしか集中力を欠いていたらしい。しかし、空は微妙に霞んでおり、広大な丘を廻り切ったような実感もなかった。最後は駅周辺を少し散策したが、目当ての場所を見つけることもできなかった。いつかじっくり再訪したいと思いつつ、この地を後にした。

今はなき。
青い池

レンタカーを返却したあとは、急いでコンビニに駆け込んだ。悲しいことにまだ体調が戻り切っていないらしい。少し駅で休憩した後、この日最後の移動となる列車に乗り込む。旭川駅は広く現代的な駅舎だが、乗り込んだ列車は扇風機がキュインキュインと回り、ディーゼルエンジンの音が鳴り響いていた。車窓から、旭川の市街越しに沈んでゆく夕日を見送る。こじんまりとした上川駅に降りると、辺りはすっかり暗くなっていた。この日はミニホテルに宿泊する。チェックイン時に少し話をし、歩いてすぐ近くのラーメン屋に行くことにする。しかし、ドアを開けると店主らしき方が無常にも本日の営業終了を告げる。ホテルの名前を出せば入れてもらえそうな気もしたが、何となくそのまま引き返した。結局、ホテルのすぐ側にあるセコマで夕食を調達する。何を食べたか記憶が曖昧だが、サッポロクラシックの限定品はしっかり呑んでいたらしい。

暮れゆく旭川の街
上川駅の夜は更けて
現在は別のホテルになっている

3日目。ホテルの朝食を頂きたかったのだが、始発に乗らないと東方面に抜けるのがかなり遅くなってしまうので、早々とチェックアウトする。早朝の上川駅。駅標識をよく見ると隣駅が張り替えられた痕跡がある。これも春のダイヤ改正によるものだろう。ここから隣駅までは1時間弱の山越え区間となるが、乗っているのは私一人だけであった。次の白滝駅ではさすがに数名の乗客があり、車内が少し賑やかになった。遠軽駅で乗り継ぎ。ここで進行方向も逆となる。夏だが待合室にはストーブが設置されたままになっており、ここが確かに北国であることを実感する。やがて列車は網走駅に到達した。

この数年後、東雲駅も廃止となった。
朝一で石北峠を越えるこのダイヤは今はもうない。
遠軽駅

この日の午後は北浜駅に立ち寄りたい。釧網本線に乗換えとなるが、次の列車までの待ち時間が長い。駅周辺を少しぶらぶらしたり、待合室で高校野球を見たりしてたが、バスを利用することにした。バスは少し市内を廻り、やがて青く光るオホーツク海が姿を現した。釧網本線と合流し、平行して走りながらバスはやがて北浜駅前に辿り着いた。この駅は喫茶が併設されており展望台もある。展望台に上がって辺りを眺めていたら、側にいた子連れの親に写真を頼まれた。女満別から来たらしい。喫茶に入り、シーフードなオムライスを頂く。体調もようやく回復しており、この旅でようやく現地らしい食事にありつけた。食後にはおまけのpinoも。帰りの列車まで喫茶内でオホーツクの海を眺めながらのんびり待つ。何とも贅沢な時間に感じられた。少し早いがこの日の行動を終え網走のホテルにチェックインし、洗濯を始める。部屋が予約時からアップグレードされており、快適に過ごせた。この3日間は天候にも恵まれ、すでに満足感があったが、南に台風が迫っているらしい。明日はこれまでのようには行かなそうだ。

この旅の装備
X-T1
XF35mmF1.4 R
XF18mmF2 R
XF56mmF1.2 R

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