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あの夏の北海道②

翌日。今日は網走を離れ釧路、そして根室まで向かう予定だ。空気はややひんやりしており、缶コーヒーで体を温める。車窓から見えるオホーツクも昨日とは打って変わり、今にも荒れそうな様相を示している。それでも列車は釧路まで、特にダイヤを乱すことなく辿り着いた。しかし、駅構内の雰囲気から察するに、次の根室行きは運休の気配を漂わせている。さすがに今日はここで足止めとなりそうだ。駅舎で蕎麦を食しつつ、この後の行動を考える。どうやら釧路湿原まで行くバスは走っているようだ。ややリスキーではあるが、湿原行きのバスに乗り込んだ。雨は降っているが、展望台までの遊歩道は歩くのが困難というほどではない。間近に見る湿原は壮観ではあったものの、正直馴染みがなくてピンと来なかった。これ以上の行動は控え、大人しく駅前に戻りホテルにチェックインした。旅先でこのような足止めをくらうのは初の経験となる。部屋で明日の計画を立て、宿泊を1日延長し、ホテル内で夕食も済ませ眠りについた。

荒れ気味の釧網本線で唯一撮っていた一枚。そしてこの駅も…。
サテライト展望台より

5日目。台風はほぼ去り、天気は回復の兆しをみせていた。 今日は根室まで行けそうだが、その前に釧網本線を川湯温泉駅まで戻り途中下車する。思ったより涼しかったこともあり、駅内にある足湯で体を温める。この路線は北浜駅のように喫茶併設の駅が複数あり、海の見える駅ではないがここも訪れてみたかった駅のひとつだ。窓から食器、カップまでこだわりを感じさせる店内の雰囲気を味わいつつ、ビーフシチューを頂いた。周辺の摩周湖や屈斜路湖も気になるのだが、今回は駅を訪問するだけ。釧路方面に戻る列車は観光客を中心にそこそこに込み合っていた。どうやら台風も去り、車内も本来の賑やかさを取り戻したらしい。

途中の茅沼駅。いずれ訪れることになる。
喫茶オーチャードグラス

ひとつ手前の東釧路で降り、いよいよ根室行きに乗る。列車は湿原の中をひた走り、やがて厚床駅に到着する。この駅の色違いのベンチが素敵なのだが、ここで降りてしまうと旅程が狂ってしまう。車内からピントの合い切らない写真を一枚撮るだけに留まった。午後4時過ぎ、終着の根室駅に到着した。乗ってきた列車はこのまま釧路方面に折り返すらしい。ホーム内で東の果てに辿り着いた感慨に浸っていると、列車に乗る人と見送る人が手を振り合い、別れを惜しんでいた。ここは、最果ての駅でもあり、誰かの出発の駅でもある。大勢が納沙布岬行きのバスに移動する中、私は旧花咲駅付近を通るバスに乗り込んだ。他の乗客はほぼ地元のご老人たちのようだ。最寄りのバス停で降り、しばらく歩くといかにも車両を改造したかのような待合室が見えてきた。中を覗くと綺麗に片付けられている。一方、線路や電線にはカラスたちが群がっていた。ふと駅舎の階段を見ると、長年の営業を感謝するメッセージが書かれていた。ここから歩くと花咲港まで出ることができそうだ。周囲は視界を遮るような高い建物はなく、空が広く感じられる。ロシア語で書かれた看板を見かけるようになり、確かに今東の果てにいることを実感する。そうして辿り着いた港は、ウミドリたちが騒々しく飛び回っており、何だか不穏な空気を感じた。港を折り返し、途中でバスに乗り、根室駅まで戻る。後は帰りの列車を待つだけだ。ふと見ると、西の空がオレンジ色に染まろうとしている。吸い寄せられるようにその方面に歩き出していた。今夜は縁日でもあるのだろうか、出店の準備が進んでいるのが遠くに見える。太陽と海がはっきりと視界に入り、私は足を止めた。東の果てで夕日を眺めるのも変な感じがしたが、この瞬間確かにこの旅の終着駅に付いたような気がした。駅に戻り大人しく列車を待つ。時間にならないとホームには入れないスタイルらしい。動き出した車内で日が暮れるのをぼんやり眺める。釧路まではそれなりに長いのだが、もはや時間は感じなかった。

いつかあのベンチに座りたい。
今では正真正銘の最東端の駅となってしまった。
当時は何と書いてあるかわからなかったが、今ならすぐにわかる。過激な内容かと思いきや…。

この旅の装備
X-T1
XF35mmF1.4 R
XF18mmF2 R
(XF56mmF1.2 R)

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