【女体化願望】男嫌いの40代既婚男性が女装して男に身を委ねた体験談と心理
前編:鏡の向こうの境界線
今年の夏で、40歳になった。
世間一般から見れば、私の人生は「順風満帆」と呼んで差し支えないものだと思う。真面目だけが取り柄の会社員として積み上げてきたキャリア、私を立ててくれる妻、そしてすくすくと育つ幼い子ども。家庭の温もりも、社会的な信用も、すべてこの手の中にある。
だが、私の胸の奥底には、誰にも……たとえ妻にすら絶対に打ち明けられない、恐ろしいほどの矛盾をはらんだ「暗闇」が渦巻いていた。
私は、男という生き物が嫌いだ。
電車で隣に座る男の汗の匂い、居酒屋で大声を上げる粗暴な立ち振る舞い、男社会のくだらないマウント合戦。同じ性別であるはずの「男性」に対して、私は強い同性嫌悪を抱いて生きている。もちろん、自分自身の男としての身体にも、どこか言いようのない不快感を覚えていた。
それなのに——私の妄想の中に現れるのは、いつも「男性」だった。
正確には、「女性の身体になった私」を、圧倒的な力で組み伏せる男性だ。
それも、誰でもいいわけではない。汗臭さも雑味もない、徹底的に清潔で、無臭で、自分よりも遥かに大きくて力強い存在。そんな男の腕の中で、抗う術もなく身を委ね、受動的な存在として支配される。そんな愚かで、背徳的で、矛盾に満ちた妄想に、私は長年苛まれてきた。
「……また、こんなことを考えている」
深夜、家族が寝静まった静まり返る書斎で、私は自らの身体に手を伸ばしていた。
日中の真面目な自分を脱ぎ捨て、脳内で「女」になりきり、架空の男に支配されるイメージを膨らませる。しかし、絶対に最後まで達しないように、快楽の頂点の手前で無理やり行為を中断する。寸止めを繰り返すたびに、身体の奥底に熱い欲望が、ドロドロとしたマグマのように溜まっていくのが分かった。限界だった。この歪んだ願望を、頭の中の妄想だけで終わらせるには、私の理性が悲鳴を上げていた。
「一度だけでいい。現実の体験として、確かめてみたい」
その一心で、私は震える指先でスマートフォンを操作し、都内にある「女装専門店」の予約を入れた。
◇
決行の日。会社には適当な理由をつけて有給休暇を取った。
雑居ビルの一室にあるその店の扉を叩く時、心臓が肋骨を突き破るのではないかと思うほど激しく脈打っていた。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
出迎えてくれたプロのメイクスタッフに促され、私はメイクルームの椅子に座った。
40歳の、どこにでもいる冴えない男。鏡に映る自分の顔を見るのが辛くて、私はそっと目を閉じた。
カチャカチャと化粧品が触れ合う音、顔に触れる筆の柔らかな感触、甘いパウダリーな香り。丁寧に下地が塗られ、アイラインが引かれ、ウィッグが装着されていく。
「はい、出来上がりましたよ。目を開けてみてください」
スタッフの声に背中を押され、おそるおそる目を開けた。
「……え?」
そこにいたのは、40歳の私ではなかった。
透明感のある肌、可憐に彩られた目元、ゆるやかに巻かれた髪。適切な骨格補正とプロのメイク技術、そして厳選された可愛らしい服を身にまとった鏡の中の人物は、どこからどう見ても、可憐な10代の女の子そのものだった。
「すごくお似合いですよ。とっても可愛いです」
スタッフの言葉が遠くに聞こえるほど、私は自分自身の姿に衝撃を受けていた。
長年、私を縛り続けていた「男」という重たい鎧が、完全に剥ぎ取られた瞬間だった。性的指向や性別の壁を越えて、私は今、確かに「受け身の存在=女性」として、新しい世界に足を踏み入れたのだ。
興奮と恐怖で手が震える。
私はバッグからスマホを取り出すと、事前にインストールしておいたマッチングアプリを開いた。
プロフィールは「女装」。そして、私が求める条件はただ一つ。
——日焼けした肌、がっちりとした長身、ムキムキの体躯、そして圧倒的な清潔感。
恐る恐る画面をスクロールしていた私の指が、ある一枚の写真の前でピタリと止まった。
中編:葛藤と接触
画面に映し出されていたのは、私が妄想の中で何百回と描き続けてきた、理想そのものの男性だった。
小麦色に日焼けした肌、シャツの上からでも分かる分厚い胸板と逞しい肩幅。完璧に鍛え上げられた体躯でありながら、写真からでも伝わってくるほどに爽やかで、徹底的に整えられた清潔感。プロフィール欄には「185cm、ジムトレーナー、タバコは吸わない」と書かれている。
日本人離れしたその圧倒的な存在感に、私の心臓は早鐘を打った。
日常で街を歩く男たちには嫌悪感しか抱かないはずなのに、なぜだろう。この「完璧に洗練された力強さ」を前にすると、胸の奥が熱く疼くのを感じる。
震える指でマッチングのボタンを押すと、拍子抜けするほどあっけなくメッセージが返ってきた。
『はじめまして。写真、すごく可愛いですね。今から会えますか?』
心拍数が跳ね上がる。断る理由はなかった。
指定されたホテルの部屋番号を聞き、私は可憐な衣装の裾をそっと整えながら、タクシーへと乗り込んだ。
◇
ホテルの部屋のドアの前に立った時、足の震えが止まらなかった。
40年の人生で積み上げてきた真面目な自分、家庭、社会的立場——すべてを投げ捨てるような背徳感。だが、長年溜め込んできた欲求と、完璧に施された女の子のメイクが、私を後押ししていた。今の私は「40歳の男」ではない。抗えない力に支配されるのを待つ、一人の「女」なのだから。
意を決して、ドアベルを鳴らした。
カチャリと音がして、扉が開く。
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