スリランカ:アーユルヴェーダ向けの大麻栽培を合法化【第93回 知っておきたい世界各国の産業用ヘンプ】
世界の三大伝統医学に数えられるアーユルヴェーダの国、スリランカ。大麻草はアーユルヴェーダで用いる薬草として親しまれてきた。伝統医療での使用は1961年に解禁されたが、2024年の法改正で伝統医療に用途を限定した大麻栽培が合法化された。その背景と制度、取り組みを紹介する。
1. スリランカの概況
スリランカ民主社会主義共和国(以下、スリランカ)はインドの南東に位置する島国で、人口約2200万人、面積は北海道の8割程度を有する。熱帯モンスーン気候に属し、年間を通して高温多湿である。シンハラ人75%とタミル人15%という2つの民族が多数を占める。宗教的には人口の約7割が仏教を、ヒンドゥー教とイスラム教、キリスト教をそれぞれ1割ずつ信仰している。ポルトガル、オランダ、英国の植民地、自治領を経て、1972年に完全独立を果たした。
農産品ではセイロン紅茶が有名だが、ゴムやココナッツのほか、稲作も盛んである。最近では、2021年4月に当時のラジャパクサ大統領が、化学肥料や農薬の輸入を禁止し有機農業に完全移行すると宣言して、話題になった。結果的に紅茶やコメの生産量が2割ほど減ったため、同年11月に宣言を撤回し、政治的混乱を招いた。国際有機農業推進連盟(IFOAM)は、国内で必要な有機農産物を十分に確保するには有機農業の普及体制などの準備が足りなかったことが混乱の原因だったと指摘している。
2. アーユルヴェーダの治療薬としての扱い
インド医学は「アーユルヴェーダ(Ayurveda)」と呼ばれる。サンスクリット語の寿命を意味する「Ayus」と、知識を意味する「Veda」の複合語で、「生命の学問」とも翻訳される。単に病気を治す医学の範囲を超えて、生命にとって何が有益で何が無益か、さらには幸福あるいは不幸な人生とは何かまで追い求める。紀元前約1000年頃にインドで編纂された宗教文書『ヴェーダ』に記されているが、その歴史はもっと古く、5000年~1万年以上前からあると言われている。そのため、アーユルヴェーダは、中国医学、ユナニー(グレコアラブ)医学とともに、世界の三大伝統医学の一つに数えられる。
アーユルヴェーダにおける大麻は、消化不良、痛み、皮膚疾患、性的衰弱、慢性下痢などの病気の治療に使う薬草である。サンスクリット語で「バンガ(Bhanga)」または「ヴィジャヤ(Vijaya)」と記す。スリランカに伝わる『サラルタ・サングラハヤ』は、医学に明るく、各地に治療院を建てたブッダダーサ王が西暦341年に編纂した薬局方だ。シンハラ語で書かれた約11冊の医療書には、大麻の薬効については50以上の疾患に対する100項目以上の処方例が載っている。
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