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1日1食を3ヶ月続けた正直な話

去年の秋、私は3ヶ月間だけ「1日1食」を試した。

きっかけは些細なことだった。旅先で撮った自分の写真を見て、なんとなく顔がむくんでいるなと思ったこと。健康診断で「体重がやや増加傾向」と書かれた紙を受け取ったこと。それと、SNSで流れてきた「1日1食にしたら人生変わった」という投稿を、深夜にぼんやり眺めていたこと。

動機はそれくらい軽かった。でも実際にやってみると、3ヶ月という時間はとても長かったし、思っていたのとまったく違う体験だった。うまくいった部分も、正直しんどかった部分も、ぜんぶ書いておこうと思う。成功談を書きたいわけじゃない。ただ、同じことを考えている誰かに「こういう人間もいたよ」と伝えたかった。

なぜ1日1食を始めたのか、そのときの正直な気持ち


「1日1食」という言葉に最初に出会ったのは、もう何年も前のことだ。当時は「そんなの無理でしょ」と思って読み飛ばした。食べることが好きだし、空腹を我慢するのが苦手だし、そもそも健康的な食事をきちんとしていれば体重なんて管理できるはずだ、と思っていた。

でも現実はそうじゃなかった。仕事が忙しくなると夜遅くにコンビニ飯になるし、旅に出れば美味しいものを際限なく食べてしまうし、「なんとなくカロリーを気にする」だけでは何も変わらないということが、30代になってようやくわかってきた。

体重そのものが大きな問題というわけではなかった。ただ、なんとなく体が重い感じ、午後になると眠くなる感じ、朝起きたときにすっきりしていない感じが続いていた。そういう小さな不調が積み重なって、「何かを変えてみようかな」という気持ちになっていた。

1日1食を試そうと決めたのは、ある意味では消去法だった。カロリー計算はめんどうだし、特定の食材を避けるダイエットは続かないとわかっていた。でも「1日に1回しか食べない」というルールはシンプルで、判断がいらない。それが私には向いていそうだと思った。

開始したのは9月の終わり。旅から帰ってきて、少し生活を整えたいタイミングだった。食べる時間は夕食、だいたい19時から20時の間にする。それだけを決めて始めた。

最初の1ヶ月、空腹との戦いと意外な発見

最初の3日間は、正直いって地獄だった。

朝起きて何も食べないでいると、10時頃には胃がしくしく痛む感じがした。お腹が鳴るし、頭がぼんやりする。仕事に集中しようとしても、気がつくとコンビニに足が向きそうになっていた。コーヒーだけ飲んで誤魔化していたけれど、正直「これは3日で終わりにするかも」と思っていた。

4日目あたりから、少しだけ楽になった。空腹感がなくなったわけじゃない。ただ、空腹に慣れてきた、というのが近い感覚だった。お腹は空いているのに、なぜかそれほど辛くない時間帯が出てきた。不思議なことに、空腹のまま外出して写真を撮っていると、むしろ感覚が研ぎ澄まされるような気がする瞬間があった。これは単なる気のせいかもしれないし、軽い低血糖の症状かもしれないけれど、空腹の時間が悪いものだとだけは思えなくなってきた。

体重は最初の1週間で1.5キロ落ちた。でもこれは体脂肪が落ちたというよりも、食事量が減ったことで体内の水分や消化物が単純に減っただけだろうと思う。浮かれて誰かに報告する気にはなれなかった。

もっと意外だったのは、「食べることへの執着が変わった」という感覚だ。1日1食にすると、夕食の時間が特別になる。何を食べるかを朝から考えていて、夕方になるとわくわくする。いつもなら「まあ今日はこれでいいか」と惰性で選んでいた食事が、その日いちばん楽しみにしていることになった。少量でも丁寧に食べるようになったし、食材のひとつひとつが美味しく感じた。食事の喜びが、回数ではなく質にシフトしていくのを感じた。

ただ、社会的な難しさもすぐに出てきた。友人に「昼一緒に食べよう」と誘われたとき、「今日はいいや」と断るのが気まずかった。なんでか説明するのも面倒で、「お腹空いてないから」と誤魔化したけれど、それが続くと関係性に影響しそうで気になった。1日1食という選択が、食事を共にする文化と相性が悪いことは早い段階で気がついた。

空腹のまま散歩に出た夕方、光の落ち方がやけに美しく見えた。空腹の時間には、そういう感覚の鋭さがある気がする。

2ヶ月目、体に出た変化とメンタルの揺れ

1ヶ月が過ぎた頃、体重はトータルで3キロ弱落ちていた。数字としては悪くない。でも正直、それよりも気になることがいくつかあった。

まず、疲れやすくなった気がした。旅先で長時間歩き回ったあと、以前よりも疲労の回復が遅い感じがあった。食事量が減っているのだから当然かもしれないけれど、「これは健康的な状態なのだろうか」という疑問が頭をよぎるようになった。

肌の調子は、最初の1ヶ月は良くなったように感じていたけれど、2ヶ月目に入ると乾燥しやすくなってきた。栄養が偏っているのかもしれない、と思って夕食に野菜やタンパク質を意識して入れるようにしたけれど、1食でバランスをとるのはなかなか難しかった。

それよりも困ったのは、メンタルの変化だった。

空腹の時間が長いと、些細なことでイライラしやすくなった。夕方の仕事中、思っていたより集中力が持続しない日が増えてきた。「これは1日1食のせいなのか、それとも仕事の疲れなのか」の判断がつかなくて、なんとなくもやもやした気持ちが続いた。

2ヶ月目の中頃、一度だけ昼食を食べた日があった。急な会食があって、断れない流れになってしまった。食べながら「ルールを破ってしまった」という罪悪感を感じて、それがとても嫌だった。食事に罪悪感を持つようになるのは、健康的じゃないと思っていたのに。

その日の夜、少し冷静に考えた。私はいま何のためにこれをしているのか、と。体を整えたかったはずなのに、食事に対してこんなにも神経質になっていたら、本末転倒かもしれない。ルールに縛られて、食べることを楽しむどころか怖れるようになっている気がした。

そこで少しだけルールを緩めることにした。昼食は週に1〜2回は許可する。ただし、その場合は夕食を軽めにする。完璧に守ることよりも、長く続けることを優先しようと思った。

振り返ると、この「ルールを自分で調整する」という判断が、3ヶ月間続けられた理由のひとつだったと思う。最初に決めたルールに固執しすぎないこと。食事法はあくまで手段であって、目的ではないということ。2ヶ月目はそれを学んだ月だった。

3ヶ月目、終わりに近づいて気がついたこと

3ヶ月目に入ると、生活のリズムがようやく安定してきた。

朝は何も食べずにコーヒーを一杯だけ飲む。昼は飲み会や会食がある日だけ軽く食べる。夕食をその日の楽しみにする。そのサイクルが自然に回るようになってきた。空腹感も「辛いもの」から「状態のひとつ」くらいの位置づけに変わっていた。

体重は3ヶ月で合計4キロ落ちた。停滞する時期もあったし、むしろ増えた週もあった。数字は波打ちながら、それでも全体として下がっていった。体重計の数字に一喜一憂しなくなってきたのは、良い変化だったと思う。

体の感覚としては、むくみが減ったのをはっきり感じた。朝起きたときに顔がすっきりしている日が増えて、靴がゆるくなったのに気がついたのはこの時期だった。胃腸の調子が良くなったというか、「消化のために体力を使いすぎていた」感覚がなくなってきた。

ただ、筋肉が落ちた感触もあった。体重が減ったのに、体型があまり変わっていない気がする日があった。これは食事量を減らすだけではなく、運動を組み合わせないと解決しないのだろうと思った。1日1食は「食べる量を減らす」ことには直結するけれど、それだけで体を理想の状態に近づけられるわけじゃない、という当たり前の事実を改めて実感した。

メンタルについては、2ヶ月目に比べると落ち着いていた。ルールに対する罪悪感は薄れたし、食事を楽しむ感覚が戻ってきた。1食だからこそ、その1回にちゃんと向き合えるようになった気がする。食材を選ぶ、調理する、ゆっくり食べる。そのプロセスが丁寧になった。

面白かったのは、旅先での食体験が変わったことだ。旅に出ると、土地の名物を食べたいという欲求がある。1日1食を意識してからは、旅先で「今日の1食は何にするか」を真剣に考えるようになった。有名なお店に行列して食べるほど、その一皿への期待が高まる。以前よりも旅の食事が記憶に残るようになったと感じる。

3ヶ月後、やめてわかったこと

3ヶ月が終わったあと、私は1日1食をやめた。

やめたのは「失敗した」からではなくて、「いったんここで終わりにしよう」と思ったからだ。体重は落ちたし、食事との付き合い方も変わった。目的はある程度達成できた気がした。それよりも、友人と気兼ねなく昼ごはんを食べたいという気持ちの方が強くなっていた。

やめてからしばらくして、気がついたことがある。

体重はリバウンドしなかった。これは意外だった。食事の量を元に戻したら絶対に戻ると思っていたけれど、3ヶ月間で食べる量の感覚が変わっていて、以前ほどたくさん食べようという気にならなくなっていた。胃が小さくなったというよりも、「これだけで満足できる」という感覚が身についていた。

食事への雑な向き合い方が減った。コンビニでとりあえず何か買う、という惰性の食事が明らかに減った。何を食べるかを少しだけ考えるようになった。これは1日1食を通して得られた習慣の変化だと思う。

一方で、1日1食そのものが万人に合うとは思わない。成長期の人や激しい運動をする人、体が細い人には向かないだろうし、食事を誰かと共にすることに価値を置く人には、社会的なストレスが大きいと思う。私も2ヶ月目に食事への罪悪感を感じたとき、「これは自分に合っていないかもしれない」と真剣に考えた。

結局のところ、1日1食は「すごく良かった」とも「おすすめです」とも言い切れない体験だった。変化はあったし、学びもあった。でも苦しい時間もあったし、向いていない部分もあった。

それがリアルだったと思う。誰かの「人生変わった」という体験談を読んで試してみたいと思うのはわかる。でもその人に合ったことが、自分にも合うかどうかは別の話だ。自分の体と向き合って、調子が悪いと感じたらすぐに見直す、という当たり前のことを、この3ヶ月で改めて学んだ気がする。

食事法についての情報はSNSにあふれているけれど、大事なのはトレンドに乗ることじゃなくて、自分の体が何を求めているかを観察することだと思う。1日1食は私にとって、その観察を始めるきっかけになった体験だった。

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