EA開発記録 #10】US500/US100のティックデータで米指数を検証——結論は「今のところエッジなし」
はじめに
日経225側の新規ロジックのネタが尽きたタイミングで、以前から保留にしていた「資産クラス拡張」(US100/US500など)に手をつけてみることにしました。過去の検討(EA開発記録 #7 )では「日経225と米指数の相関の強さを考えると分散効果が薄いかもしれない」という理由で後回しにしていましたが、実際にティックデータを用意できたので、仮説を数字で確認するところから始めました。
結論を先に書くと、今回試した3つの角度——①日経225の補助フィルターとしての活用、②米指数自体のORB順張り、③米指数自体のORB逆張り——のいずれも、はっきり使えるエッジは見つかりませんでした。「ダメだった」という結果ですが、どこをどう確認してそう判断したか、過程をそのまま残します。
データ整備:日経225と同じ手法がそのまま通用した
US500・US100ともに、日経225と同じMT5サーバー時刻基準・月次CSV形式(2020年5月〜2026年5月)でした。日経225で確立した変換ロジック(Europe/HelsinkiタイムゾーンでDSTを自動処理、月ごとのストリーミング処理でメモリ制約を回避)がそのまま使えました。
サーバー時差の検証は決め打ちせず実データで行いました。米国レギュラーセッション開始(米国東部時間9:30)でティック数が急増するタイミングをサーバー時刻で特定したところ、夏時間・冬時間のどちらでもサーバー時刻16:30に一致しました。米国側DSTとサーバー側DSTの切り替えタイミングがほぼ一致しているため、打ち消し合って一年中固定の時刻になる、という日経225よりもシンプルな結果です。
US100は容量が大きく(ティック合計で日経225・US500の数倍)、ディスク容量の制約から5回に分けて受領・処理しました。各回ごとに「JST変換→H1集計→生ティック破棄」を行い、最後に5パートを結合しています。月境界での重複・分裂はゼロ件で、日経225で起きた11月の分裂のような問題は発生しませんでした。
基本統計
日経225 US500 US100 年率ボラティリティ 18.6% 16.5% 21.4% 日次レンジ平均 1.64% 1.38% 1.86% 2022年リターン -10.6% -19.9% -33.7%
US100(Nasdaq100)は想定どおり最もハイボラ・ハイベータでした。2022年の下落規模も日経225より大きく出ています。
角度①:前夜の米指数の動きは、日経225のOR幅予測に使えるか
仮説:米国市場(JST深夜〜早朝に開く)が荒れた翌朝は、日経225のOR幅(始まり数十分の値動き)も広がりやすいのでは。
JST同日のリターン相関を見ると、日経225とUS500は0.69(年次でも0.60〜0.80)という強い相関でした。ただし前日のUS500→翌日の日経225というラグ1日の相関は**-0.03**でほぼ消えます。つまり米指数の動きはほぼリアルタイムでその日のJST日経225に伝播しており、1日空けると関係が切れる構造です。これは以前懸念していた「分散先としては弱い」を裏付ける結果でした。
これを逆に「予測に使えないか」という方向で検証しました。前夜(JST前日22時〜当日6時)のUS500レンジと、当日のOR幅近似(H1の9時台high-low、%ベース)の相関は 0.226。日経225開発記録 #8の過去の教訓 (「探索期間と検証期間を分けないと過剰最適化を判断できない」)に従い、前半(2020年5月〜2023年3月)で閾値を確定し、後半(2023年4月〜2026年5月)で固定して検証しました。
探索期間 検証期間 上位20%(閾値2.0%) vs 下位 の差 +0.097% +0.570% p値 0.0018 0.0009
方向性は両期間で再現(統計的に有意)したものの、効果の大きさが検証期間で約6倍に跳ね上がるという不安定さが見られました。検証期間の上位サンプルを調べると、2025年4月8〜11日(前夜レンジ最大10%超)という突出した4日間が混じっており、これを除いても差は縮まりませんでした(+0.49%)。つまり単発の異常値だけが原因ではなく、「直近、両資産とも構造的にボラが上がっている時期」という背景がある可能性が高いです。
US100でも同じ検証を行いましたが、ほぼ同じパターン(相関0.234、探索+0.129%→検証+0.642%、同じ2025年4月のイベントが上位に再登場)が出ました。指数を変えても結論は変わらず、「方向性はあるが、フィルターとして安定して使える強さではない」という判断に落ち着きました。
角度②・③:米指数自体のセッション内ORB(順張り・逆張り)
日経225のORBと同じ発想で、米指数自体の値動きにブレイクアウト戦略が成立するかを確認しました。
まず1日のボラティリティ分布を時間帯別(JST)に見ると、両指数で完全に一致するパターンが出ました。JST22時〜翌1時台が最もボラが高く(米国レギュラーセッション開始直後)、13時台が最も静か(米国市場の引け後)です。
ボラが集中する22-23時台を中心に、H1粒度の簡易ORB検証(その時間のH1バーをOR代理とし、次のバーの終値でブレイク方向判定→順張り/逆張りでの追従を見る)を24時間分すべてで走査したところ、21〜1時台がやや上位に見えました(sharpe_like 0.03〜0.05程度)。
ただ、これを探索期間・検証期間に分けてt検定したところ、順張り・逆張りともに、すべてのOR形成時間でp値が0.09を下回るものはほぼなく(唯一の例外も検証期間で再現せず)、統計的に有意なエッジは確認できませんでした。最初の走査で見えた「21-1時台が良さそう」という傾向自体が、24時間×2指数×順張り/逆張りという多重検定の中で偶然上振れただけだった可能性が高いです。
これは日経225の日足検証(EA開発記録 #8 )で見えた「順張りブレイクアウトはほぼ機能しない」という結論と同じ方向で、米指数CFD市場でも単純なブレイクアウト・平均回帰だけでは食えないという点で一貫していました。
この検討で整理できたこと
「相関が強い=分散効果が薄い」という以前の懸念は、数値で裏付けられた
JST同日相関0.69、ラグ1日でほぼ消失という構造は、米指数を日経225と並行して保有する戦略の弱点を明確にしました。
「使えないと分かった」ことにも価値がある
3つの角度すべてで否定的な結果でしたが、これにより「米指数データに今すぐ手を出す優先度は高くない」という判断ができました。データドリブンな検討であっても、出た結果が良いものでなければ過剰に粘らず、別の方向に資源を割り直す——日経225開発記録の過去の教訓(エッジのないロジックは撤退)がそのまま当てはまりました。
探索期間・検証期間の分割は、今回も「効果の誇張」を検出した
前夜フィルターの効果が検証期間で5〜6倍に跳ね上がる現象を、もし全期間一括で見ていたら「強力なフィルターが見つかった」と誤判定していた可能性があります。分割検証の手順を最初から組み込んでいたことで、過剰最適化を回避できました。
US500とUS100は、今回試したロジックに関してはほぼ同じ結論になった
ボラティリティの大きさは異なるものの(US100の方が高い)、相関の強さ・フィルター効果・ORBの有意性、いずれも両指数で同じ方向の結果でした。今回の範囲では、どちらかを優先的に使う理由は見当たりませんでした。
次回に向けて
今回試していない切り口として、米指数のカレンダーアノマリー(曜日効果・月初月末など、日経225の曜日効果EA検討と同じ枠組み)や、ティックからの正確な15〜30分ORでの再検証が残っています。ただ、現時点ではいずれも優先度は確定していません。
今回の検証はここで一区切りとし、結果を記録として残します。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を推奨するものではありません。自動売買には元本割れのリスクがあります。バックテスト結果は将来の運用成績を保証するものではありません。
#自動売買 #EA #MT5 #日経225 #US500 #US100 #システムトレード #投資 #トレード記録 #MetaTrader #資産クラス拡張 #相関分析
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

