【京菓子展】2025-"小堀遠州と松花堂昭乗"に応募してみた話/其の③
9.話してみたかった人
9月30日、有斐斎弘道館にて受賞式が執り行われた。
受賞式など私にとっては滅多にない事なので有り難く参加する事にしました(ちょうどお彼岸明けの代休で良かった)。その会場で私はある3名とお話したいと思っていた。
一人目は"熊倉功夫"先生。
熊倉先生は静岡の"MIHO MUSIUM"の館長や"お茶の都ミュージアム"の館長をされている方で、お茶の都ミュージアムでのお茶会では何度かうちの上生菓子を使ってもらっている。一度お話したいと思っていたが、多くの参加者に囲まれていて、今回もお話に行けなかった。
もう一人は"暦本純一"氏
今回私が審査員特別賞を頂いた"暦本純一"氏。恥ずかしながら今回の事があるまでは存じ上げませんでしたが、情報テクノロジーの分野でとても有名な方でした。こうした一見和菓子の世界とは離れた分野の方々が審査員に加わっていることも公募展の特徴で、色んな観点から審査されるのが面白いです。私のお菓子が選ばれたのも、コンセプトにSF的要素があったから暦本氏に選ばれた様な気がします。また私の母校の多摩美術大学の客員教授もされていて同じデザイン科(学部は違う)ではあったのも驚きでした。今回はスケジュールの都合でお会いする事は叶いませんでしたが、今回の和菓子の事、イメージのきっかけになったSF小説「三体」の事などいつかお話できたらなと思いました。
最後に"原研哉"氏
この方はデザイン部門優秀賞の受賞者ですが、デザイン業界では超有名な方で、誰もが使っているだろう身近な物をたくさんデザインしています。また武蔵野美術大学の教授でもあります。
私も美大生の頃やデザイナーをしていた時はよく原さんの作品を見て勉強していました。デザインのトークショーなども行ったのも懐かしい記憶です。そんな方が今回和菓子の公募展に参加していた事は驚きでした。どうやら美大のゼミの一環で生徒さん達と一緒に応募したようです。原さんらしい無駄を削ぎ落とした極めてシンプルな哲学的な作品でした。お菓子としてというよりアート作品のようでした。

ご挨拶程度しか出来ませんでしたが、ご本人的にもこの賞には意外だったのか、とても謙遜していたのが印象的でした。私的には他の美大生の作品も見てみたいと思いました。数十年を経て憧れていたデザイナーと交流ができた事、原氏にとっては本業ではないとはいえ、同じ部屋に作品が並べられた事はとても光栄でした。

10.菓子作家と菓子職人
今回の公募展の印象としては参加者に和菓子屋の職人(特に男性)が少いように感じました。雰囲気としてお菓子作家やお菓子教室の生徒の作品が多いのかなと思いました。選外の人までは分かりませんが、入選者は割と女性が多く相対的に女性の参加者が多いいのではないかと思っています。地域の和菓子組合の会合に参加すると男性ばかりで女性の職人は本当に少いので、この様な和菓子の公募展で女性が活躍する事は嬉しくもありました。また逆に和菓子職人の応募が少いとするとそれはそれで少し淋しいと思いました。
菓子作家と菓子職人、どちらも菓子に携わる仕事ですが、この「作家と職人」の違いは、また別のnoteで書ければと思います。
11.公募展の種類
公募展にもいろいろあって、一つは審査する人がその道の巨匠の場合、もう一つは審査員がその他のジャンルの著名人または一般の人の場合です。文学なら芥川賞と本屋大賞の様な違いが近いかもしれません。今回の公募も審査する側はお菓子を作る人ではないので、どちらかというと後者の公募展。どちらも良い面があり、今回の場合は審査員の独自の目線で良いと思った物が選ばれるので、誰でも参加でき、受賞するチャンスもあるので、多彩な作品が集まりやすい。また審査する側がその道の巨匠だと、応募の敷居も高くなるのでレベルは上がるが限定的なコンペとなってしまい和菓子の裾野が広がらない。また純粋な作品の評価以外にもこれまでの経歴も評価に影響しそうです。
12.終わりに(感想)
この公募展を通して、テーマを学び京文化に触れる事が出来た大変良い経験となりました。
実制作部門の大賞は昨年に続き、京菓子らしい格式ある見た目でありつつ、食材には新たな感覚が加えられていて、伝統と革新を秘めた菓子が選ばれているなと思いました。


デザイン部門は仕上がりの菓子も素晴らしのですが、応募者が直に描いたデザイン画も展示で見たいと思いました(ホームページでは見れます)。ラフスケッチでもいいし、綿密なコンセプトを書き込んだ文章でもいいので、審査の対象となった原画を展示会場で見たいと個人的に思いました。今回もデザイン部門は大賞が小学生で優秀賞には60代の先生もいて、とにかく幅広く自由な発想で作れるので本当に誰が選ばれるか予想がつかないのが面白いと思います。
今回の様なプロアマ問わずの幅広い公募なら一般の目線を取り入れて、会場での投票やホームページやSNSの投票で決まる観客賞の様な一般参加型のラフな賞があっても面白いかもしれないと思いました。
毎年どんなテーマが出されるのか楽しみにしています。テーマを考えるだけでも十分に楽しめるし、結果を見るのも楽しみです。実際に作るとなると相当大変なのですが、あまり深追いせず、普段の菓子作りと同じ様に、"楽しんで作る"を心掛けたいと思います。展示に関わってくれた全ての方々にありがとうございました。

