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プロテインは断食中にOK?目的別に考える

「ファスティングをしているけれど、プロテインは飲んでいいの?」——この疑問は、断食に取り組む多くの方が抱えるものです。とくに筋トレをしている方や、筋肉を落とさずに体を整えたい方にとっては切実な問題でしょう。結論から言えば、「目的によって答えが変わる」というのが現時点での考え方です。本記事では、断食とプロテインの関係を目的別に整理し、継続しやすい実践法をご紹介します。


「断食中にプロテインを飲みたい」——よくある悩みと迷い

断食を実践している方から、こんな声をよく聞きます。

  • 「16時間断食中、プロテインだけなら飲んでもいいと思っていた」

  • 「筋トレの日は断食を崩してでもプロテインを飲むべきか迷う」

  • 「断食で体重は落ちたけど、筋肉まで減っている気がして不安」

  • 「ネットの情報が矛盾していて、結局どうすればいいのかわからない」

共通しているのは、「断食のメリットを得たいけれど、筋肉は守りたい」というジレンマです。この迷いが解消できないまま、断食そのものをやめてしまう方も少なくありません。実は、この問いに正しく向き合うためには、「自分は何のために断食をしているのか」という目的の整理が欠かせません。


断食中にプロテインを摂るとどうなる?——メカニズムを整理する

断食とプロテインの関係を理解するうえで、押さえておきたいポイントが二つあります。

インスリンとmTORの活性化

プロテイン(たんぱく質)を摂取すると、体内ではインスリンの分泌と、細胞の成長シグナルであるmTOR(エムトール)経路の活性化が起こります。mTORは筋たんぱく質の合成を促す一方で、細胞の"お掃除機能"であるオートファジーを抑制する方向に働くとされています。つまり、断食中にプロテインを摂ると、厳密には「断食状態」が中断される可能性があるのです。

ただし、2025年に発表されたヒトを対象とした研究(Singh et al., JCI Insight, 2025)では、35gのたんぱく質を摂取した1時間後でも、ヒトの末梢血単核球(PBMC)におけるオートファジーの活性(フラックス)に有意な変化が見られなかったという報告もあります。動物実験の結果がそのまま人間に当てはまるとは限らず、ヒトにおけるオートファジーの調節メカニズムには未解明な部分が多いのが現状です。

筋肉のたんぱく質代謝

筋肉は常に「合成」と「分解」を繰り返しており、このバランスが筋肉量を左右します。NIH(米国国立衛生研究所)のPMCに掲載されたレビュー論文(Wardenaar & Moore, Frontiers in Nutrition, 2021)では、断食のように食事回数が少なくなると、筋たんぱく質合成(MPS)を刺激する機会が減り、筋肉にとっては最適とは言えない可能性が指摘されています。とくに1回の食事で約0.25〜0.3g/kg体重のたんぱく質を摂ると筋たんぱく質合成が最大化されるとされ、その効果は約3〜5時間で低下する(いわゆる"マッスルフル"効果)ため、食事の「回数」と「間隔」が重要になります。

目的によって"正解"が分かれる理由

上記を踏まえると、次のような整理ができます。

  • オートファジーを最大限に活かしたい場合:断食時間中はプロテインを含め、カロリーのあるものを控えるのが原則です。とはいえ、ヒトにおけるオートファジーの計測は技術的に難しく、どの程度の摂取量で「スイッチが切れるか」は明確にわかっていません。

  • 筋肉を維持・増量しながら体脂肪を落としたい場合:食べられる時間帯(フィーディングウィンドウ)に十分なたんぱく質を確保し、筋トレと組み合わせることが優先されます。この場合、断食の時間を極端に長くするよりも、食事回数と質の管理が鍵になります。

  • 断食を長期的に継続したい場合:完璧を目指しすぎて挫折するよりも、自分の目的に合った「許容ライン」を設定し、無理なく続けられる形を見つけることが大切です。


目的別・プロテインと断食の実践法

ここからは、目的別に具体的なアクションをご紹介します。

実践1:オートファジー重視なら——断食時間中はプロテインを控える

断食のねらいが細胞レベルでのリフレッシュにあるなら、断食時間中は水、白湯、無糖のお茶やブラックコーヒー程度にとどめるのが基本です。プロテインシェイクは食事の一部として、フィーディングウィンドウ内で活用しましょう。

実践2:筋肉維持が最優先なら——食べる時間帯でたんぱく質を分散する

国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジションスタンドでは、1回あたり20〜40g(体重1kgあたり0.25〜0.40g)の良質なたんぱく質を3〜4時間おきに摂取することが、筋たんぱく質の合成に好ましいとされています。16時間断食(8時間の食事枠)であれば、2〜3回の食事に分けてたんぱく質を配分するのが現実的です。たとえば体重60kgの方なら、1食あたり15〜24g程度を2〜3回に分けて摂ることを意識してみてください。

実践3:筋トレ日は断食スケジュールを柔軟に調整する

筋トレ後のたんぱく質摂取は、筋たんぱく質合成を高めるうえで重要と考えられています。もし筋トレの時間が断食時間帯に重なる場合は、その日だけフィーディングウィンドウをずらす、または断食時間を少し短くするといった柔軟な対応も選択肢のひとつです。「断食のルールを一日でも破ったら失敗」と考えず、週単位で全体のバランスを見ることで、継続しやすくなります。

実践4:1日のたんぱく質総量を確認する

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18〜64歳の男性で1日65g、女性で50gのたんぱく質摂取が推奨されています。筋トレを行う方はさらに多くのたんぱく質が必要とされ、体重1kgあたり1.2〜2.0g程度を目安とする見解もあります。断食で食事の回数が減ると、総量が不足しがちです。フィーディングウィンドウ内の食事で意識的にたんぱく質を含む食材(肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など)を取り入れましょう。

実践5:「断食+筋トレ」の両立チェックリスト

継続のために、以下のポイントを定期的に確認してみてください。

  • フィーディングウィンドウ内で、たんぱく質を2回以上に分けて摂れているか

  • 筋トレ後2〜3時間以内にたんぱく質を含む食事ができているか

  • 断食時間の長さが自分の生活リズムや体調に合っているか

  • 体重だけでなく、体力や筋力の変化にも注意を払えているか

  • 無理や我慢が続いていないか(継続できることが最も重要)


よくある質問 Q&A

Q1. プロテインシェイクは断食を「破る」ことになりますか?

一般的にはそう考えられています。プロテインシェイクにはたんぱく質だけでなくカロリーも含まれるため、インスリンの分泌やmTOR経路の活性化を通じて断食状態を中断する可能性があります。ただし、Singh et al.(JCI Insight, 2025)の研究では、35gのたんぱく質摂取後1時間のヒトPBMCでオートファジー・フラックスに変化がなかったとの報告もあり、「断食が完全に無効化される」かどうかはまだ議論の途上です。目的がオートファジーの活性化であれば断食時間中は控えるのが無難ですが、筋肉維持が最優先であれば、フィーディングウィンドウ内での活用が合理的です。

Q2. 16時間断食でも筋肉は落ちてしまいますか?

短期間の16時間断食で筋肉が大幅に落ちる可能性は低いとされています。Jefferson Healthの情報によれば、近年の研究では、間欠的断食がスポーツパフォーマンスや除脂肪体重に対して、他のダイエット法より大きな悪影響を与えるわけではないとされています。ただし、NIH掲載のレビュー(Wardenaar & Moore, 2021)は、長期的に食事回数が少ない状態が続くと筋たんぱく質の合成機会が制限される可能性を指摘しています。筋トレの継続と、フィーディングウィンドウ内での十分なたんぱく質摂取がポイントになります。

Q3. 断食の日と筋トレの日を分けたほうがいいですか?

必ずしも分ける必要はありませんが、筋トレ後に速やかにたんぱく質を摂取できるスケジュールを組むのが望ましいと考えられています。ISSNのポジションスタンド(Kerksick et al., JISSN, 2017)では、運動後の栄養摂取が筋たんぱく質合成の回復に重要であると述べられています。たとえば、フィーディングウィンドウの開始直後に筋トレを行い、その後すぐに食事を摂るというスケジュールは、断食と筋トレを両立させやすい方法のひとつです。

Q4. 断食中、どうしても空腹がつらいときはどうすればいいですか?

まずは水分をしっかり摂ることが基本です。白湯や無糖の炭酸水、ブラックコーヒー(カフェインの摂りすぎには注意)などが選択肢になります。それでもつらい場合は、断食時間を少し短く設定し直すことも検討してみてください。16時間が難しければ14時間から始めるなど、段階的に取り組むほうが継続しやすくなります。断食はあくまで手段であり、体調を崩してまで行うものではありません。


まとめ

断食中にプロテインを摂ってよいかどうかは、「何を目的に断食しているか」によって答えが変わります。オートファジーを重視するなら断食時間中は控えるのが原則ですが、筋肉の維持や筋トレ効果を優先するなら、食べる時間帯でのたんぱく質確保がより重要です。

大切なのは、自分の目的に合ったルールを設定し、完璧を求めすぎずに続けることです。断食もプロテインも、使い方次第で健康をサポートする有力なツールになり得ます。迷ったときは、まず「自分は何のためにこれをやっているのか」に立ち返ってみてください。


参考文献


本記事は公開情報をもとに作成した一般的な情報提供です。医療・診断・治療を目的とするものではありません。体質や健康状態により適切な方法は異なるため、不安がある方は医療専門職へご相談ください。

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