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The Strokes :ニューヨークの路地裏から世界を変えた5人

 21世紀のロック史において、2001年という年は明確な「前」と「後」を持つ。The Strokesの登場前、世界の音楽シーンはProToolsの多重録音、ニューメタルの轟音、ポップパンクの過剰なエネルギーで埋め尽くされていた。そこへ突如として現れた5人のニューヨーカーは、たった8本のマイク、一つの地下スタジオ、そして研ぎ澄まされた楽曲群だけを武器に、世界中のリスナーに「ロックとはこういうものだった」という稲妻のような啓示をもたらした。

彼らのキャッチコピーとして繰り返し使われた「ロックの救世主(Saviors of Rock and Roll)」という言葉は、大袈裟どころか控えめでさえある。The Strokesが成し遂げたのは、過去と未来を同時に鳴らすという奇跡だった。Velvet Undergroundの禁欲的な美学とRamonesのミニマルなパンク精神を血肉に、Television的なツインギターの絡み合いを纏い、それらすべてを2001年のニューヨークというフィルターに通した音楽は、発表から四半世紀を経た今も色褪せることなく輝き続けている。


バイオグラフィー:5人の出会い、そして伝説の誕生

運命的な出会いと前史

The Strokesの物語は、ニューヨークという街の特権的な階層構造と、そこから逃れようとする若者たちの衝動から始まる。

Julian Casablancas(ボーカル)、Nick Valensi(ギター)、Fabrizio Moretti(ドラムス)は、マンハッタンのDwight Schoolに在籍していたティーンエイジャーとして出会い、1997年に非公式のバンドを結成した。その後、Casablancasの幼い頃からの親友でLycée Français de New Yorkに通っていたNikolai Fraiture(ベース)も加わった。

Casablancasの父はモデルエージェンシー「Elite Model Management」の創設者John Casablancasであり、彼は絵に描いたようなマンハッタンの特権階級の子弟だった。しかし音楽への渇望は、その出自を超越していた。Albert Hammond Jr.はCasablancasとスイスの名門寄宿学校「Institut Le Rosey」で同窓となり親交を深め、1998年に映画学校進学のためニューヨークに移り住んできたところでバンドへの参加を誘われた。

こうして5人の化学反応が始まった。彼らの社会的背景は実に多様だ。Nick Valensiはチュニジアとフランスにルーツを持ち、9歳で父を亡くし、5歳からギターを弾き始めた。 Albert Hammond Jr.は著名なシンガーソングライターAlbert Hammondを父に持ち、ロサンゼルス生まれ、スペイン語を母国語とするアルゼンチン系の血を引く。 多国籍な感性が、あの独特のニューヨーク美学を生んだ一因だろう。

地下室から世界へ

バンドは1999年9月14日にThe SpiralでThe Strokesとして初ステージを踏み、その後マンハッタンのHiFi Bar、Lower East SideのLuna Lounge、そしてMercury Loungeなど様々なロッククラブに頻繁に出演した。 夜ごとの演奏と昼間の猛練習、その繰り返しがバンドを鍛え上げた。

Mercury Loungeの若いブッカー、Ryan Gentlesがバンドの才能に惚れ込み、職を辞してバンドのマネージャーに転身した。 この決断がThe Strokesの運命を大きく変える。

2000年、バンドはLuna Loungeでのショーの後でプロデューサーのGordon Raphaelと出会った。Raphaelとともに「The Modern Age」「Last Nite」「Barely Legal」の3曲をレコーディングした彼らは、そのデモをイギリスのRough Trade Recordsに送付。Rough Tradeはその音楽に強い関心を示し、2001年1月にThe Modern Age EPとしてリリースした。

このEPが生み出した大きな話題、特にイギリス音楽プレスの熱狂は、記録的な入札合戦へと発展した。バンドはRCA Recordsと契約し、2001年10月にデビューアルバム『Is This It』をリリースした。 NMEはリリース前から「Last Nite」を「Single of the Week」に選出し、バンドはUKツアーを完売させた。

キャリアの変遷:栄光、沈黙、そして復活

2003年のセカンドアルバム『Room on Fire』は「Reptilia」「12:51」を収録し、ガレージロック・リバイバルのリーダーとしての地位を不動のものとした。

2006年の『First Impressions of Earth』は野心的な試みで、全英チャートで1位を獲得し、商業的に成功した。しかし内部では疲弊が蓄積し、バンドは長い休息期間へと入った。

約5年間の活動停止後に2011年のAngles、2013年のComedown Machineをリリースし、シンセやニューウェイヴの影響を取り込んだ新たな実験に挑んだ。

そして長期沈黙の後、2020年に満を持して帰還する。Rick Rubin産の第6作『The New Abnormal』は高い評価を受け、2021年の第63回グラミー賞でBest Rock Albumを受賞。これはバンドにとって初のグラミーノミネートかつ受賞だった。

現在の動向については、2025年秋にAustin City Limits Music Festivalのヘッドラインを務めるなど短いツアーを行い、Australia's Harvest Rock Music Festivalにも出演した。 2022年10月にはRick Rubinが、コスタリカでThe Strokesとともに新アルバムのレコーディングセッションを完了したことを明かしたが、2025年1月現在そのアルバムに関する続報はなく、Casablancasはthe Voidzでの実験的音楽に重点を置いている。


音楽的アイデンティティと構造分析

「欠落」のサウンドデザイン

The Strokesの音を他と区別する最大の要素は、何が「ない」かにある。プロデューサーGordon Raphaelが繰り返し語るように、当時のニューヨークでは全てのプロデューサーがProToolsの登場に熱狂し、巨大で複雑なプロダクションを追い求めていた。スネアドラムに3本のマイク、そこに808のサンプルを重ね、さらにBob Clearmountainのサンプルを加える、そんな時代だった。

Raphaelはその逆を行くことにした。インダストリアル音楽シーンで培った経験から、彼はJulianのボーカルに最大限の歪みをかけ、ドラムのマイキングは3本だけにとどめた。

Is This Itの制作において、Raphaelはドラムキットへのマイクを3本のみ使用した。一本をキットの上部に、一本をバスドラムに、そして一本をスタジオの隅に置くという、Velvet UndergroundのプロダクションとパンクバンドのRamonesに触発された直接的な手法だ。

このミニマリスト的アプローチにより生まれたのが、あのDNA的なサウンドだ。音の「隙間」がそのまま聴者の想像力を刺激し、楽曲に息を吹き込む。

ツインギターの哲学:対位法的構造

The Strokesのギターサウンドは、二人の個性の衝突と融合から生まれる。Nick Valensはギブソンが作らなかった最高のギターと称した1995年製Epiphone Riviераを愛用し、元のハムバッカーを取り外してホットワイヤードのP94ピックアップ2本に交換した。一方Albert Hammond Jr.は1985年製の70年代リイシューFender Stratocasterを主軸とし、彼がそれを選んだ理由は「着こなした時にかっこよく見えたから」という直感的なものだった。

初期のセットアップはほぼ同一で、アンプにはFender Hot Rod DeVille 2x12を使用。Hammond自身はその「ガサついた音」を気に入っており、その上にVisual Sound Jekyll & Hyde Overdriverとソロ用のMXR Microampという組み合わせでサウンドを作り上げた。

ValensiのEQバランスは「ミッドを中心とした直線的なトーン」に特徴付けられる。ベースを最小限に抑えてAlbert Hammond Jr.のギターとの干渉を避け、ミッドレンジでバンドの「中核」を形成する。

プロデューサーRaphaelは、この音楽の構造的本質をバッハまで遡る音楽理論で説明している。Julianがメロディを歌う時、そのバックでは3つの別々のメロディと旋律的なドラムラインが同時に鳴っている。これはハーモニー・カウンターポイント様式、つまりバッハの時代に遡る対位法だ、とRaphaelは語る。

この複雑なポリフォニーが、表向きシンプルに聞こえるThe Strokesのサウンドに、何度聴いても新たな発見をもたらす奥行きを与えている。

Julian Casablancasのボーカル:歪みという詩

Julianのボーカル処理は、あの独特のダウンタウン的倦怠感を生み出す中核だ。Raphaelはインダストリアル音楽の経験から着想を得て、Julianの声にプリアンプで最大限の歪みをかけた。ドラムマシンもシンセサイザーも歌声も全てが歪まされていた工業音楽の美学を、生のボーカルに応用したのだ。

Casablancasのボーカルは、ピッチ補正を一切施されることなくそのまま収録された。不完全さが、真実性となった。

歌詞の哲学:都市の若者の倦怠と愛

Casablancasの真の強みは、エネルギーと雰囲気を捉え掌握する能力にある。彼は冗長なソングライターとは一線を画す簡潔な手法を取ることで、一つ一つの言葉に独自のリズムを見出す余白を生んでいる。

初期3作を貫くのは「ニューヨークの若い夜」の文学だ。愛の始まりと終わり、友人との過去、大人になることへの戸惑い、都市という舞台が持つ冷たい輝き。歌詞の内容は決して革命的ではない。しかしCasablancasの天才は、その「普遍的な感情」を「今ここにしか存在しない瞬間」として固定する能力にある。

「Someday」の歌詞は、ノスタルジア、愛、友情、そして時間の不可逆な流れという普遍的なテーマを扱う。当時これはソングライティングの主流ではなかった。インディロックは主流ではなく、ポップパンクとニューメタルが主流だった時代に、バンドはロックがそれらである必要はないことを証明した。

一方、後期作品では視野が広がる。『First Impressions of Earth』では暗く重くなり、社会への不満と哲学的な問いかけへと歌詞が転換した。「Ize of the World」ではマルクス主義的理論も織り込みつつ世界を痛烈に批評している。

Casablancasの政治的影響源として、オリバー・ストーン、ノーム・チョムスキー、ハワード・ジンらの名前を挙げており、お気に入りの哲学者としてマーティン・ルーサー・キングJrを挙げている。

系譜:何に影響を受け、何を生み出したか

影響を受けたアーティストの系譜は明確だ。Velvet Underground、The Stooges、Television、Ramones、The Modern Lovers、そして70年代のニューヨーク・パンク全般。Casablancasのソロアルバム名「Phrazes for the Young」がOscar Wildeの著作からの引用であるように、文学的な視座も血肉となっている。

生み出したフォロワーの系譜もまた壮大だ。Arctic Monkeys、The Killers、Interpol、Franz Ferdinand、Bloc Party、Kings of Leon、そして現在のindie rockシーンの無数のバンドが、2001年のEast Villageの地下室で生まれたあのサウンドから直接的・間接的に影響を受けている。Gordon Raphaelはロンドンに移転後、The Libertinesのデビューアルバムをプロデュースし、The Strokesが生み出した波がUKのインディロック復活にも波及したことを示す。


ディスコグラフィー徹底解説

第1作:Is This It(2001年)

これは単なるデビューアルバムではない。文明論的な事件だ。

Casablancasが制作チームに告げたコンセプトは「過去から来たバンドが未来にタイムトリップして作ったレコードのように聴こえるもの」だった。アプローチは明確になった:曲のほとんどはライブ演奏の質感を持たせ、一部の楽曲はあえて「ドラムマシンを使っているかのようなインスタジオプロダクション」にするという。

しかし制作は困難を極めた。RCAと契約後、バンドはPixiesやFoo Fightersを手がけたプロデューサーGil Nortonとのセッションを試みたが、その音が「クリーンすぎる」「気取りすぎている」と感じ、3曲録音した後にそのセッションを全て破棄した。バンドはNortonの高級スタジオを後にし、Gordon Raphaelとトランスポーターラム・スタジオに戻った。

Raphaelの地下スタジオには8つのマイク入力を持つ単一の888インターフェースしかなかった。それがまさにThe Strokesに必要なものだった。

プロダクション的な白眉は、ドラム録音の革命性だ。キック1本、オーバーヘッド1本、そしてコーナーに1本というパンクロック的な3マイク方式。ギターアンプマイクにEQはなし。Casablancasのボーカルは極小のPeaveyプラクティスアンプを通して録音された。

このアルバムが時代に投げかけた問い「Is This It?(これが全てなのか?)」は、音楽に対する問いであると同時に、自分たちが生きる時代への問いでもあった。

第2作:Room on Fire(2003年)

「第二作のジンクス(Sophomore Slump)」という魔物に対し、The Strokesは凄まじい正攻法で打ち勝った。

Is This Itよりも研ぎ澄まされ、よりエレクトリックな雰囲気を纏ったRoom on Fireは、「Reptilia」の冒頭ギターリフ一発で聴者を完全に制圧する。この曲のリフは恐らく21世紀のロック史で最も有名な8音の一つだ。「12:51」ではスタイリッシュなニューウェイヴのグルーヴが顔を出し、バンドの音楽的視野の広さを示す。

プロデューサーはまたもGordon Raphael。しかし今度は資金と時間に余裕があった。結果として生まれたのは、Is This Itの荒削りな魅力を保ちつつ、より意図的にコントロールされたサウンドだ。

「The End Has No End」の洗練されたポップ構造、「Under Control」の繊細な美しさ、「What Ever Happened?」の狂気じみた疾走感。11曲33分という圧縮された密度は、ポストパンクの精神を21世紀に完全に蘇らせた。

第3作:First Impressions of Earth(2006年)

賛否両論を引き起こしたが、時を経るごとに再評価が進む問題作だ。

前2作が33分・33分という圧縮された形式だったのに対し、本作は70分超。プロデューサーはGordon RaphaelからDavid Kahneへと交代した。10ヶ月を要した制作は、実験的な層と野心的なアレンジメントを特徴とし、混合気味の批評にもかかわらず商業的に成功し、全英チャートで1位を獲得した。

「Juicebox」の不穏なベースラインに乗ったオープニング、「Heart in a Cage」の怒りに満ちたエネルギー、「You Only Live Once」の哲学的なポップソング。そして「Ize of the World」という10分に迫る大曲では、社会批評とプログレッシブロック的な構造が融合する。

バンドが抱えていた軋轢と疲弊が、皮肉にもアルバムに鋭利な棘を与えた。後年の「Deep Cuts」として最もコアなファンに愛されているのがこのアルバムだ。

第5作:Angles(2011年)

5年間の活動休止後にリリースされたAnglesは、Casablancasが以前のように楽曲の大部分を書くのではなく、他の4人のメンバーも音楽制作に加わるという超協調的なアプローチを取った。

その「不協和音の協調」が生んだのが、このアルバムの独特の歪な魅力だ。「Under Cover of Darkness」は初期の煌めきを取り戻したかのような疾走感、「Taken for a Fool」は後期Talking Headsへの愛が滲む。「Games」「Metabolism」など、シンセポップの要素を大胆に取り込んだ楽曲群は、The Strokesというバンドの進化可能性を示していた。

第6作:The New Abnormal(2020年)

キャリアの実質的な第2幕だ。

The New Abnormalの制作は2016年にまで遡る。Rick Rubinとのセッションを経てマリブのShangri-Laスタジオで録音されたこのアルバムは、内部の緊張と個人的プロジェクトへの散漫さを経たバンドの「再統合」を感じさせるものだった。

アルバムタイトルは2018年11月、カリフォルニアの山火事の最中に前カリフォルニア州知事Jerry Brownが発した「the new abnormal(新しい異常)」という発言から着想を得ている。山火事は録音スタジオのあるマリブにも影響を与えていたが、スタジオ自体は無事だった。

「The Adults Are Talking」の精巧に組み上げられたギターの絡み合い、「At the Door」の幽玄なシンセサウンド、「Bad Decisions」のNew Order直系のポップ構造。全9曲は、各メンバーの個性が一つの磁場に収束した奇跡だ。

アルバムのカバーアートはJean-Michel Basquiatの絵画「Bird on Money」。この選択は偶然ではない。バスキアがニューヨークという街のダウンタウン精神を絵画で表現したように、The Strokesはそれを音楽で表現してきた。


ライブ・パフォーマンスの魅力

The Strokesのライブは、「完成」と「危うさ」が紙一重の上で踊る体験だ。

Julianはステージ上で酒に酔い、歌詞を忘れ、時に「なぜこんな曲を書いたんだろう」という表情で演奏することがある。しかし、そのルーズさこそが体験の核心だ。彼はヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リードと同様、不完全さを武器にする。

あるファンの証言は典型的な体験を言葉にしている:「Barely Legal」で爆発するように始まり、「New York City Cops」で終わるまで、5枚のアルバム全てが網羅されていた。Julianは最高の意味で極めて自信に満ちていた。観客がギターリフを演奏されている音よりも大きな声で歌っている瞬間があった。それは素晴らしいショーの証だと思う。

伝説的なエピソードとして語り継がれるのは、2002年のCarling Weekendフェスティバルのヘッドライン公演後、ニューヨークのRadio City Music HallでWhite Stripesと共演した際の場面だ。ジャック・ホワイトがステージに上がり「New York City Cops」のギターソロを演奏した。

5人の演奏は技術的に磨き上げられているが、決してショーケース的ではない。Albert Hammond Jr.はBuddy Hollyのようにギターを高く水平に構えて踊り、Fab Moretiはドラムの向こうから常に仲間の動きを目で追い、Nikol Fraiture は重力のように全員を支える。その中心でJulianは、酒と歌と世界への呪詛を混ぜ合わせながら、あの声を放つ。


Deep Cuts:ファンだけが知る逸話と秘密

バンド名の成立と「ストローク」の意味 「The Strokes」という名は、複数の解釈が可能だ。水泳の「ストローク」(力強い一搔き)、絵画の「筆触」、そして音楽における「一打ち」。しかしメンバーたちは公式な説明をほとんど避けており、その曖昧さこそがバンドの知的な遊び心を示している。

「New York City Cops」の9/11問題 「New York City Cops」はアルバムのUSバージョンから削除されたが、その理由はバンドが9/11後の警察への市民の献身的な対応を目撃し、その状況でこの曲を収録することが不適切と判断したためだ。バイナル版はその発売日が偶然にも9月11日であったため、オリジナルのトラックリストを維持している。

Julianのボーカル録音のハーモニクス Gordon Raphaelは「私の人生でJulianの声を一度も音程補正したことがない」と語っている。その生々しさが、人工的に完璧化された現代のボーカルプロダクションとの決定的な違いを生む。

「I'll Try Anything Once」という幻の名曲 「You Only Live Once」のデモ版「I'll Try Anything Once」は、Nick Valensがピアノで静かに叩き、JulianがCasablancasが彼の書いた最高の歌詞を呟くという、公式バージョンとは別次元の傑作だ。コアなファンの間ではバンドの真のハイライトとして語り継がれる。

Casablancasの政治活動と芸術家としての自意識 2020年には、The Strokesがバーニー・サンダース上院議員のニューハンプシャー州予備選を前夜に支持するコンサートを開催した。アルバムに「Ode to the Mets」(ニューヨーク・メッツ賛歌)という曲を収録するほどの地元愛と、ノーム・チョムスキーを政治的影響源として挙げる知性が共存する人物がJulian Casablancasだ。

コスタリカの山頂レコーディング Rick Rubinがジョー・ローガンのポッドキャストで明かした話は、バンドの本質を示している。コスタリカの山頂の家を借り、外に機材を設置し、バンドは「海に向かってコンサートをするように」毎日演奏した。彼らは去りたがらなかった。それは最高の体験だった。


最初に聴くべき1曲:「Last Nite」

この曲の冒頭6秒で、The Strokesの全てが分かる。Albert Hammond Jr.のレゲエのリズムギター、Valensの切り裂くようなリードライン、Fraiture の重力のようなベース、Fab Moretti の無愛想だが完璧なグルーヴ、そしてJulianの声。この曲は4分の間にThe Strokesという宇宙の全てを凝縮している。

ニューヨークの路地裏、誰かとの夜の終わり、言い訳と後悔が混じった早朝の帰り道。

沼ったら聴くべき1曲:「The Adults Are Talking」

『The New Abnormal』のオープナー。2020年のThe Strokesが到達した頂点であり、彼らの成熟と変容を余すところなく示す6分間だ。

JulianとNikolaについての関係性の複雑さを歌ったとも読めるこの歌詞は、単純な「コミュニケーションの断絶」という普遍的テーマを超え、成人した人間が社会の中でどう自分を保つかという問いを投げかける。曲の後半に挿入される数秒のスタジオ雑談の断片は、このバンドの「仕事」と「人間」の境界の曖昧さを、詩より雄弁に物語る。


The Strokesが2001年に生み出したものを、技術的に模倣することは難しくない。Epiphone Riviera、Fender Stratocaster、Fender Hot Rod DeVille、Jekyll & Hyde Overdrive。この機材を揃え、Gordon Raphaelの録音哲学を学べば、表面的な近似値は作れる。

しかし「Is This It」の冒頭、タイトル曲のイントロであの音楽が空間を満たす瞬間の感覚を模倣することは、誰にもできない。それは機材の問題でも、録音技術の問題でもない。あの5人が、あの時、あのニューヨークの地下室で生み出した「共鳴」の問題だ。

Gordon Raphaelはこう語っている:「本当によく作られた楽曲は、どの時代においても古くなることがない」。

Casablancasは2025年、The Strokesに留まり続けることへの葛藤を率直に語った。経済的な理由でバンドを維持する圧力が、創造性を後退させたことを認めた。その正直さもまた、Casablancasというアーティストの本質だ。完璧な存在を装わず、破綻と創造の間を生きる。

The Strokesの音楽が永続する理由は、彼らの楽曲が「ある瞬間の真実」を捉えているからだ。ニューヨークの若者が深夜の路地裏で感じる孤独と歓喜、愛の始まりと終わり、世界への怒りとその世界への愛。それは時代が変わっても消えない人間の感情であり、Casablancasの言葉とあの5人のサウンドが融合した時にのみ現出する、唯一無二の化学反応だ。

彼らの第7作がいつか完成した時、それはまた別の時代への問いかけとなるだろう。「Is This It?」

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