映画note『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』(1954)
マキノ雅弘監督の東宝版『次郎長三国志』シリーズの第八部「海道一の暴れん坊」。本作の主役は清水の次郎長ではなく、森の石松です。親分を差し置くようで申し訳ないが、本作はシリーズでも最高傑作の声がある逸品です。
古い映画ですので、ネタバレを気にせず書いてます。森の石松の物語は映画によって描き方に違いはあるでしょうが、極端に違うこともないでしょうから、ご容赦ください。
森の石松は清水の次郎長の代参で四国讃岐のこんぴら様へ。刀の奉納を済ませ代参を終えると、讃岐の女郎屋へ向かう。ここで石松は夕顔という女郎に、ひとめぼれ。博打や喧嘩には威勢のいい石松も、女に惚れると純情な青年に戻ってしまうようだ。
今回はお馴染みの森の石松金比羅道中、といいたいところですが船中での「江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ」の場面はなく、寿司もなし。
讃岐への道中で森の石松は政五郎と出会う。政五郎は惚れた女が待っていてくれるから死なないという。惚れた女はお藤という。この時の石松は女にまだ縁がない。
政五郎と石松が藤の花房の垂れてる小川で語り合う夜の場面はシリーズでも屈指の美しいシーン。モノクロ映画なので藤の花は白藤か。
さて、讃岐で遊女の夕顔に惚れた石松だが、次郎長の代参だから清水へ帰らねばならない。夕顔は想いを綴った手紙を石松に渡す。清水に着いたら読んでほしいと。
清水へ戻る途中近江で、以前に世話になった身受山の鎌太郎親分の元を訪ねる。鎌太郎は侠客というより地元の豪農といった雰囲気で、平素は野良仕事をしている。
ここで夕顔の手紙を懐から落としてしまい、鎌太郎に読まれてしまう。そこには夕顔の母親もまた女郎で、父親がバクチ打ちであったことが記されていた。偶然にも石松と夕顔と似た境遇。そして森の石松を想う夕顔の心の内までもしたためられていた。
石松は自分のことを想ってくれる女がいるとハッキリ知る。石松も夕顔に惚れている。ここから暴れん坊の石松は、自分の命を粗末に扱うことができなくなる。
旅で出会った政五郎と同様に死ぬわけにはいかなくなる。鎌太郎の家に夕顔の花が咲いている。
ところが運命というのは皮肉なもの。前作でお蝶の仇とばかりに斬った保下田の久六の身内が、追分の三五郎と森の石松の命を狙っていた。
近江から尾張へむかい、幼馴染の小松村の七五郎の元を訪ねた森の石松ーうおだが、ここには石松を狙う連中が待ち構えていた。
頃は夏でお盆。小松村では盆踊りが行われている。七五郎とおその夫婦の家の軒先には切子灯籠が下がっている。庭先には夕顔の花が咲いている。
むかしむかしの日本の夏を見せてくれる。
小松村の盆踊りは、おかめ、ひょっとこ等のお面をかぶって踊っているものが多い。
そして、石松の命を狙う者たちも、素性がバレないようにお面をかぶって襲ってくる。
最期には片目の石松の両眼が開くというニクい演出もある。
『次郎長三国志 第八部 海道一の暴れん坊』
1954 東宝
製作:本木荘二郎 監督:マキノ雅弘 原作:村上元三 脚色:小川信昭、沖原俊哉 撮影:飯村正 美術:北辰雄 音楽:鈴木静一 監督助手:岡本喜八
出演:森繁久彌(森の石松)、小堀明男(清水の次郎長)、越路吹雪(小松村のおその)、河津清三郎、田崎潤、小泉博、田中春男、水島道太郎(政五郎)、志村喬(身受山の鎌太郎)、青山京子、広瀬嘉子、川合玉江(夕顔)、北川町子、木匠マユ、広沢虎造、山本廉、佐伯秀男、森健二、沢村国太郎、小川虎之助、上田吉二郎、長門裕之、久世龍、相原巨典、今泉廉、堺佐千夫、豊島美智子、隅田恵子、紫千鶴、和田道子、二條雅子、馬野都留子、本間文子
