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映画note『女殺し油地獄』(1957)

近松門左衛門の「女殺油地獄」の映画化。これまで何度か映画化されておりますが、今回ご紹介するのは1957年堀川弘通監督の作品。

主演の河内屋与兵衛役は二代目中村扇雀。歌舞伎役者は襲名して名が変わるので、どちらの扇雀さんかすぐにピンとこない時があるのですが、二代目中村扇雀はのちに三代目中村鴈治郎を襲名し、さらに四代目坂田藤十郎(2020没)となられる。奥さんは参議院議長にもなられた扇千景(2023没)。妹が女優の中村玉緒。

扇雀の父は二代目中村鴈治郎。二代目鴈治郎は映画でも小津安二郎の『浮草』、黒澤明の『どん底』、市川崑の『炎上』など数々の名演を残しています。この映画『女殺し油地獄』では河内屋徳兵衛、つまり与兵衛の父役で出演。実の親子共演です。

当寺の扇雀のち四代目藤十郎の長男が、四代目中村鴈治郎。現在公開中の映画『国宝』で、歌舞伎の指導をされていて、出演もしている。
そして藤十郎の次男が、現在の三代目中村扇雀です。
この三代目扇雀の歌舞伎座公演『恐怖時代』(谷崎潤一郎の戯曲)を見に行った。それが2014年8月と知り、十年一昔の感慨あり。

監督 堀川弘通
脚本 橋本忍
原作 近松門左衛門
撮影 中井朝一
音楽 宅孝二
美術 河東安英
出演 二代目中村扇雀 新珠三千代 二代目中村鴈治郎

油屋の河内屋の与兵衛(中村扇雀)は遊女に入れあげて店の金に手を付けるドラ息子。父親の徳兵衛(中村鴈治郎)は実の父ではなく番頭上がりなこともあり、先代の子である与兵衛の躾には甘い。それをいいことにますますツケあがる与兵衛は生さぬ仲とは言いながら父親徳兵衛を殴る蹴る。与兵衛の放蕩ぶりに耐え切れず母(三好栄子)は与兵衛に勘当を言いわたす。
借金で首の回らなくなった与兵衛は、同業豊島屋の女将お吉(新珠三千代)に泣きつく。お吉はドラ息子の与兵衛に苦言も呈すが親身にもなってくれていた存在だった。。。

石原慎太郎の小説『太陽の季節』が出版され(1955年)、映画化され(1956年)、この映画の脇役で石原裕次郎が銀幕デビューした。
当時、無秩序で享楽的な若者を太陽族と呼んだが、『女殺し油地獄』の放蕩息子与兵衛にそうゆう現代の若者を反映させている、という評論を見かけた記憶がある。ただそうゆう風に見なくても結構。
本作の与兵衛は殺人を犯しても自らの意思で、バカやってると終いにはこうゆうことになる事を見せつけてやるとイキって自首する。

あぶらまみれの女殺しよりも、ドラ息子であっても父母の愛情を感じさせる豊島屋の場面が印象的。こちらも年を重ねてきたせいか、放蕩息子より良し悪しは別として子供を想う父親や母親に共感してしまう傾向にある。
カラーのスタンダードサイズが、ちょっとテレビドラマっぽさを感じさせるのが惜しいかな。

製作に戸板康二の名がある。戸板康二は演劇・歌舞伎の評論家であり、この時期は東宝で何本か映画製作にもたずさわっていた。東宝は都会的な現代ものは得意だが、古典が弱いので招かれていたのだろう。
また戸板は推理小説も書いていて、直木賞作家でもある。彼が創り出した名探偵中村雅楽は、かつてテレビドラマで十七代目中村勘三郎が演じていたのをかすかに覚えている。

若くてまだ痩せている芦屋雁之助や芦屋小雁、幇間の役で三代目桂米朝の姿が見えるのも特筆。

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