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映画note『幕末太陽伝』(1957)

初春に相応しく賑やかな映画をご紹介。昭和32年(1957)川島雄三監督による『幕末太陽伝』。

この映画は「居残り佐平次」「品川心中」「三枚起請」などの古典落語を題材にした喜劇です。
ただの喜劇と、あなどってはなりません。
キネマ旬報が2009年に発表したオールタイムベスト日本映画では第4位にランクインしている日本映画の傑作です。
出演はフランキー堺、南田洋子、左幸子、石原裕次郎ほか。モノクロ映画。

時は文久二年(1863)十二月、処は品川宿の妓楼相模屋。
ここへ遊びにきた佐平次は、実は一文も持っていない。「居残り」として布団部屋に押し込められタダ働きをさせられるはずが、八面六臂の大活躍。
あっちでトラブルが起きれば呼び出され、こっちでトラブルが起これば買って出る。いつの間にやら相模屋の人気者。
この相模屋には長州藩士がたむろしている。代金未納で高杉晋作が「居残り」状態。しかし彼らは御殿山の英国異人館焼き討ちを計画していた。

映画のタイトルでは現代の品川が映る。昭和32年くらいまで特飲街としてそれなりに活気はあったようだが、昭和33年の売春防止法の施行により赤線が廃止され、品川から遊郭の灯は消えた。

品川は「キタの吉原、ミナミの品川」と呼ばれたくらいに繁昌していたようだ。海岸沿いの宿場町でもあるので、吉原とはひと味違う雰囲気があり、風光明媚で魚も鮮度がよさそうだ。

この映画の見どころは、なんと言っても主演のフランキー堺。陽気なキャラで女郎に起きたトラブルは解決、小銭稼ぎにも才覚がある超人的な居残りさんを演じている。
普通、遊廓あたりで無銭飲食でタダ働きなら、みっともないにもこの上ないのだろうが、かえって粋やら通やらに見える。
しかし佐平次は、どうも労咳らしく、時々悪い咳をしている。品川へきたのも空気がよく酒も肴もよさそうだから。ある種の療養だ。
江戸の遊び人のようでもある佐平次には、自分は生きてやるんで生き抜いてやるんだというバイタリティの強さを感じさせる。

監督の川島雄三は監督昇進のころから、筋萎縮性側索硬化症に冒されていた。歩行が困難なこともあったというから、銀幕の中でフル回転する佐平次は、川島監督の理想像なのかもしれない。

相模屋の女郎はおそめ(左幸子)と、こはる(南田洋子)が、板頭(ナンバーワン)を競っている。
こはるは、ひと晩に三人四人と「まわし」をするほどの売れっ子。
おそめは、このところちょいと、お茶っぴき(売れず暇を持て余している)。貸本屋の金ちゃんと品川心中をもくろむ。
この二人の派手な喧嘩もお楽しみ。

石原裕次郎が高杉晋作を演じている。相模屋に出入りする長州藩士の中には二谷英明、小林旭といった顔ぶれもある。

裕次郎も旭も、こののちの日活のアクション映画のスターたち。日活は彼らを中心にした映画へ傾注してゆく。川島雄三監督は名作『幕末太陽伝』を最後に日活から東宝へ移籍する。

『幕末太陽伝』(1957)
製作:山本武 監督:川島雄三 脚本:田中啓一、川島雄三、今村昌平 撮影:高村倉太郎 音楽:黛敏郎 美術:中村公彦、千葉一夫 助監督:今村昌平 風俗考証:木村荘八 資料提供:宮尾しげを、安藤鶴夫
出演:フランキー堺(居残り佐平次)、左幸子(女郎おそめ)、南田洋子(女郎こはる)、石原裕次郎(高杉晋作)、芦川いづみ(女中おひさ)、市村俊幸(杢兵衛大尽)、金子信雄(相模屋楼主伝兵衛)、山岡久乃(女房お辰)、梅野泰清(息子徳三郎)、織田政雄(番頭喜八)、岡田真澄(若衆喜助)、高原駿雄(若衆かね次)、菅井きん(やり手おくま)、小沢昭一(貸本屋金造)、植村謙二郎(大工長兵衛)、河野秋武(鬼島又兵衛)、西村晃(気病みの新公)、熊倉一雄(のみこみの金坊)、殿山泰司(仏壇屋倉造)、加藤博司(息子清七)、二谷英明(長州藩士志道聞多)、小林旭(久坂玄瑞)

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