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ご清算はいつされますか?|(掌握)#せりふ三題噺

ピロンッ!
スマホの画面には入金完了通知。

[●●ネットバンク銀行] 入金のお知らせ
04/07 19:03 振込 振込入金がありました。
金額:¥**,***
詳細はアプリでご確認ください。

「ご依頼の件、承知しました。
また、残金のお支払いはご依頼内容をご確認いただいた後にお振り込み下さい。この度は、ご利用ありがとうございました。
次回、ご利用の場合はサービス内容をアップグレードさせていただきます。またのご利用をお待ちしております。」



「誰がそんなこと決めたんや!
法律に書いとんか!」

夜桜の下で、酔い客が大声で誰かに絡んでいた。
連日、大人数で来ては騒ぎを起こしている。

昨夜なんて、朝から場所取りをしていた気弱そうな大学生らしき二人組に絡んでいた。

大学生の敷物の上にいきなり彼らの敷物を広げだし、大きな声で声をかける。

「まだ誰も来てへんやんけ!
狭いからそっちに避けてや」

大学生達は抗議の声をあげたが、
迫力に負けたのか場所を奪われてしまう。
場所を2人分だけ残して。

「そもそも、公園で場所取りは
やめてくださいって書いとるやろ。
俺たちは決まりに従ってるだけ!
場所残してやってるだけ、うちら優しいよな」

リーダー格の男は笑いながら、少しやんちゃそうな
仲間達に声をかける。

まぁ、声が大きくルールに従っている方が、
正しく見える。

その場を離れた彼らには、
他の担当者が接触するだろう。


今日なんて、赤ら顔の強面の男が、近くを通り過ぎる若い女性2人に声をかけ執拗に絡みだしていた。

見るからにガラの悪い男達に絡まれた2人は、
他の花見客に助けを求めるような視線を
近くの花見客に送っていた。

自分達には関係ない、関わるのが面倒なのか
誰も助けてあげようとする気配もない。

もしかしたら、花見のどんちゃん騒ぎに
紛れて気がつかないのかもしれないが、
誰も関わろうとしない。

酔い客の一人が女性の腕を掴み、
強引に酒席に座らせようとしている。

リーダー格の男が強面の仲間に声をかけている。

「ちょっとお前酔い過ぎだぞ。
やめとけ」

女性達と目が合う。

酔い客たちは、私の存在に気づいていない。
あるいは、気づいても興味がないのだろう。

私はスーツの胸に付けた名札を整え、
彼女達に声をかけた。

「お待たせしました。お二人とも探しましたよ。
あちらで弁護士事務所の花見がはじまってます。
はやく向かってください!」

彼女達は救われたように私を見た。

私の目配せに気づいたのか、
話に合わせるように男達に言い放つ。

「弁護士事務所の花見があるので失礼します。」
…なんて言いながらその場をそそくさと
離れていった。

こちらを心配そうに振り返りもしない。


酒に酔った男は私の目を睨みつけ、言い放つ。

「何や、お前」

私はそんな男に深々と頭を下げ、
胸から名刺を取り出す。

「申し遅れました。花見注文コンシェルジュと申します。
皆さんのお花見を盛り上げるお手伝いをしております。話題作りも兼ねて、本日は無料でご利用いただける形になっております。
よろしければ、ご注文まわりのサポートをいたしましょうか」

私は淡々と、マニュアル通りに案内する。

「こちらのサイトからお選びいただけます」
「数量はこちらでよろしいですか」
「決済はお客様の端末からお願いいたします」

夜桜の下でリーダーらしき酔い客に絡まれた。

「お前、なんやその名札。
サービスの人間か?本当に無料なんか?」

肩を掴まれ、酒の匂いがまとわりつく。

「当方のサービスは無料でございます」
そう答えると、酔い客は鼻で笑った。

「ほら、皆んな無料らしいぞ。
無料なら、このお兄さんの厚意に甘えて
色々頼みまくろうぜ。
おい、先に頼んどいてくれよ」

グループの中の若い男に声をかける。

「ご注文のご案内をいたしましょうか」

若い男は、リーダー格の男の顔色を見て、
目を逸らすように俯いた。

そして、グループから距離を取るように
私の方へ歩いてきた。

私は淡々と、マニュアル通りに案内する。

「こちらのサイトからお選びいただけます。
ご自身でご注文を」
「はい、この人数なら数量で問題ございません」
「決済はお客様の端末からお願いいたします」

私は何も誘導しない。
ただ、質問に答え、手順を示すだけ。

若い男は、私の胸元の名札に目をやり
流されるように注文を行う。

「ちょっと待っててね」

酒の場の空気を壊さないように、
仲間達に代わりに決済を済ました。

その間、酔客たちはまだ騒いでいた。

「昨日も彼女に“また行くん?”って怒られてさ。
でも、みんな来るって言うし、楽しいし、
しゃーないやろ!
俺一人帰るんも悪いしさ」

特に一人、声の大きい男が仕切りたがり、
周囲に絡んでいた。
誰も逆らわない。
誰も止めない。

やがて注文が完了し、若い男は私の顔を一瞬見て、礼を言って去っていった。

私は名札を外し、活動を終える。

──これで今日の活動は終わりだ。

散り始めた夜桜を見上げながら、
タバコに火をつける。

帰り道、スマホが震えた。
入金通知。

「例の件ではお世話になりました。
これで決心がつきました。
報酬を振り込んだんで、確認してください。
ありがとうございました」


依頼者名を見て、足が止まった。

──さっきの酔い客グループの男の顔がぼんやり浮かぶ。

メッセージの備考欄には、短くこう書かれていた。

「何日も酒盛りに参加してて。
もう限界でした。
その場の空気に流されて、
責任感がない人はもう嫌なんです」


私はスマホをしまった。

ただ、あの場に”そういう人間”がいただけだ。

夜桜の下、まだ笑い声が響いていた。

リーダー格の男が何かに向かって怒鳴っている。

大量の料理や高価な酒が届き、
誰が支払いをするか揉めているようだ。

「誰や、これ頼んだんは!」

笑い声が聞こえなくなる。
その場の空気が波を引くように変わった。

紫煙が夜空と花びらに溶けていくのを眺め、
私は、帰った。


はらとけい様。
初参加させていただきました。

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