俺は、妻を愛していたのか?(5)
第5話
夜遅く、『湯布院温泉』の温泉宿の部屋で、香織が、俺の布団に入って来て
「聡子さんと思って、あたしを抱いて・・・」
俺の身体に絡みつき、迫ってきた
部屋の隅の床の間には、ダウンジャケットに包まれた聡子の骨壺が、静かに置かれている
畳に差し込む月明かりが、床の間の方まで届いていて、その包みの輪郭だけが、青白くぼんやりと浮かび上がっていた
一瞬、何をしてるんだ?と、フリーズしたが
「香織!!悪い冗談はよせ!!自分の布団に戻って寝なさい」
と、拒絶の意思を伝えても、それでも、香織は益々身体を密着させては
「聡子さんと“してる”事と変らないわ・・・貴方の“寂しさ”を、あたしで埋めてよ」
と、俺に言う事を聞いてくれない
寂しさを、埋めてよ・・・
その言葉が、俺の胸の一番柔らかいところに、ちくり、と刺さった
寂しいのは、認める・・・
聡子がいなくなってから、何かが欠けたまま、その欠けた場所が、夜ごと少しずつ広がっていくのを感じていた
それを、この娘は気付いていた・・・そして、自分の体温で、埋めようとしてくれている
それに
「何を言ってるんだ!!君は“香織”で、“聡子”ではない」
と、言っても、それでも
「そうよ!!あたしはあたし・・・奥さんはもう亡くなったのよ・・・あたしだと駄目なの」
と、自分の行為を止めようとしなかった
・・・奥さんはもう亡くなったのよ
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