今日、何の日だと思う?
「今日、何の日だと思う?」
付き合って二年の彼女に聞かれた。
付き合った日が六月二十日だから、毎月二十日はお付き合い記念日。
今日は四日。
違う。
彼女の誕生日でもない。
こうやってわざわざ聞いてくるということは、何か特別な日なのだろう。
僕は記憶を総動員した。
初デートの日?
違う。
初めて手を繋いだ日?
違う気がする。
初めてキスした日?
それは覚えてる。別の日。
「ヒントは?」
彼女は楽しそうに答える。
「私に関係ある日」
それは分かっている。
分かってるけど、分からない。
「出会った日?」
「ぶー」
「初めて喋った日?」
「ぶー」
「あ、ライブに行った日?」
「それも違う」
どんどん焦る。
こういうのは当てられないと地味に困る。
「スマホみてもいい?」
「いいけど、それでいいの?」
だめだ、そんなものを見たら負けだ。
「んー、降参」
十分ほど考えた末、僕は白旗を上げた。
すると彼女は満足そうに言った。
「正解はね」
少し間を置く。
「私が初めてお弁当作った日」
「……それはわかんないな」
思わず呟いた。
彼女はちょっと真面目に続ける。
「覚えてるんだよ、私」
「え…」
「前の日から緊張してさ。卵焼き何回も練習した」
そう言われて、少し思い出した。
確かにあった。
公園のベンチで食べたお弁当。
卵焼きが少し焦げていて。
でもハートの形にしてくれていて。
僕はおいしいしか言わなかった気がする。
「そんな日まで覚えてるの?」
「覚えてるよ」
彼女はあたりまえのように言う。
「だってね」
少しだけ照れながら続ける。
「好きな人のために、初めて作ったお弁当だもん」
その言葉に、息が詰まる。
僕は記念日を覚えるのが苦手だ。
付き合った日や誕生日くらいしか自信がない。
でも彼女は違う。
初めて一緒に映画を見た日。
初めて喧嘩した日。
そんな小さな出来事まで宝物みたいに覚えている。
たぶん彼女は、記念日そのものより、
僕との時間を大事にしているんだ。
「なんか、ごめん。忘れちゃってて」
僕が言う。
「いいよ、忘れても」
彼女は笑った。
「だって、ずっと私が覚えてるから」
その言葉を聞きながら思った。
今日が何の日かは分からなかった。
でも。
こんな彼女がいることは、
ちょっと自慢してもいい気がした。
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