14年前、「負動産」と呼ばれた湯沢を買った理由
「そんなもの、買ってどうするの?」
14年前、湯沢のリゾートマンションを購入すると話したとき、多く返ってきた言葉。
当時の湯沢は、今のように少しずつ注目され始めていた時代ではなかった。
きっかけは、スノーボード仲間が湯沢にマンションを持っていて、遊びに行ったこと。
聞けば、湯沢のマンションは驚くほど安いという。
早速調べてみると、インターネットには「湯沢マンション=負動産」という言葉があふれていた。
「タダでも売れない」
「管理費だけ払い続ける負債」
「買ったら最後」
「バブルの負の遺産」
そんな記事ばかりが目についた。
実際、数万円、数十万円で売りに出されるマンションも珍しくなかった。
ウインタースポーツをやらない周囲の友人からすれば、「なぜそんなものを買うのか?」と思われても、無理はない。
それでも、私は湯沢を選んだ。
投資目的ではない。 値上がりを期待したわけでもない。
もっと単純な理由だった。
「スノーボードが好き」
それだけだった。
マンションを購入して、初めて湯沢を訪れた冬。
窓の外には、一面の雪景色が広がっていた。
高層階だからか、車の音も遠い。
雪がすべてを包み込み、時間までゆっくり流れているようだった。
温泉に入り、窓から白い山を眺める。
何もしない。ただ、ぼんやりする。
都会で働いていた当時の私には、その時間が何より贅沢だった。
不動産は、資産価値だけでは測れない。
住む人にとって、価値があるかどうか。
もちろん、不安がなかったわけではないのです。
管理費や修繕積立金がかかる。将来売れる保証もない。
いやいや、ここは考えた。
マンションを手放す方法は、売るか、自己破産しかないとのこと。
だから、10万円の物件ではなく、売ろうと思えば売れる物件を条件に探した。結果、友達と同じマンションだった。
それに、日帰りが多いとはいえ、何泊もホテルや旅館に泊まることを考えれば、自分だけの居場所を持つ価値の方が大きいと感じた。
実は、私は心配性でもある。
だからこそ、あのとき「負動産」という言葉だけを信じ、心配ばかりしていたら――この景色には、出会えなかった。
春は、新緑の中のゴルフ。 夏は、涼しい風が抜ける大源太山。 秋は、紅葉の絨毯を進むドラゴンドラ。 そして冬は、静かな雪の朝。
旅行では味わえない時間が、そこにはあった。
最近では、湯沢のリゾートマンションを見直す人も、少しずつ増えてきた。
リモートワークの普及。 二拠点生活への関心。 インバウンド需要の回復。
時代は変わった。
14年前、このマンションの購入時の価格は80万円だった。
マンション紹介雑誌で、下層の階だと36万円というのも見たことがある。
今の相場は、200万円以上。
純粋にうれしい。
最近、マンションから、折り畳み自転車で通勤していく若い人も見た。
移住してきたのかな。
でもまあ、私が湯沢を買った理由は、14年前も今も変わらない。
「値段」で買ったのではない。 「暮らし」を買ったので。
マンション仲間が欲しくて、スノーボードの友達には「湯沢を買った方がいい」と勧めている。
だけど、熱海が合う人もいる、軽井沢が合う人もいるかもしれない、九十九里あたりもいいかも。
やっぱり大切なのは、資産価値だけで選ばないこと。
リゾートマンションなんて、値上がりはたかが知れてる。
朝、どんな景色を見たいのか。 休日を、どんな時間で満たしたいのか。 人生の後半を、どんな場所で過ごしたいのか。
その答えが見つかった場所が、あなたにとって一番価値のある不動産になる。
世間は「負動産」と呼んだ。
でも私にとっては、14年間、心を整えてくれる場所だった。
