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【異変】なぜ自民党は保守王国で敗北したのか?

前回の記事では、2025年の通常選挙でフレッシュな1年生議員たちを紹介した。
その裏では組織票があっても玉砕する自民党員も大勢いたことは想像に難くない。
とりわけ異質なのが、和歌山と鹿児島の候補者である。
どちらも超がつくほどのビッグネームが関与しているのに、あっさりと玉砕したからである。
自民党の候補者は日付が変わる前に「落選確実」の知らせを受けており、精神的なダメージは筆舌に尽くしがたい状況にあるだろう。
そこで今回は自民党が盤石と言われていた選挙区を落とした理由について考えてみた。

【世襲そのものが失敗】
今回の選挙で激震が走った選挙区はどこかと聞かれたら、私はこう答える。
「和歌山だ」
その根拠は極めて明確である。
名の知れた剛腕であり、タフな参謀だった二階俊博氏が“事業継承”で失敗したからだ。
二階氏は一代で成り上がった大魔王のような人で、口数は少ないものの岩盤支持層は強固であった。
ちなみに白浜にパンダがたくさんいたのは二階氏のスタンドプレーによるものだろう。
超党派の日中友好議連の人間なので、親中というスタンスだけは一貫している。
自民党の幹事長など党の重量級ポストを歴任したにも関わらす、閣僚になりたがらない点もかなり特異である。
一説によるとマスコミとの衝突を避けるために、あえて黒子に徹したのではとささやかれている。
もしそうならジャニー喜多川と似たような性格ということになるが、その話は本筋から外れるので割愛する。

和歌山選挙区で激震が走ったのは、世耕氏の反乱が原因だろう。
元有田市長の望月さんを担ぎあげて、“親中ニカイ帝国”に正面から挑んだのだ。
ちなみみ望月さんは36歳の若さで市長に就任した方で、高齢化が進む有田市ではひときわ目立つ存在であった。
一方、世耕氏は安倍派の弱体化と自身の裏金問題で居場所がないため、造反を咎められたところで失うものなどない状態であった。
この流れだと保守分裂は必至だろう。
なお、対戦相手の二階家は残念ながら子育てに失敗した家系と言わざるを得ない。
今回落選した三男坊は不倫で離婚した人というイメージがつきまとっているし、親の七光りだけで戦ったようなものだ。
さらに追い討ちをかけたのは鶴保氏(二階氏の傀儡)の存在である。
和歌山で集会を開いた際に「運のいいことに地震が……」と発言し、もちろん炎上した。
身内のオウンゴールで支持者を失った“親中ニカイ帝国”は、あっけなく崩壊したのである。

【世襲を拒否して没落】
これとよく似た理由で自民党が玉砕したのが鹿児島選挙区である。
ここは現幹事長の森山氏が支配していた保守王国で、中進国にありがちな男尊女卑の風潮も残っている地域でもある。
そんな鹿児島では不可解な候補者選定が見られた。
今年勇退を決意した尾辻秀久先生の三女が、公認を得られずに干されてしまう。
しかも三女・朋実さんは父の秘書として国政に関与しており、誰がどう見ても素人とは言えない方である。
となると、考えられる理由は一つしかない。
森山氏の個人的な敵対心だ。
もともと森山氏は先述の二階氏とマブダチなのだで、当然二階派ということになる。
二階派が党内で長年にわたって冷遇されていたことを恨んでいても不思議ではない。

一方、尾辻秀久先生は竹下登元首相を出した名門派閥の人間なので比較的優遇されることが多かった。
森山氏から見ると尾辻家は嫉妬の対象ということになりそうだ。
そんな中、彼に舞い込んで来た二つの偶然が彼を誘惑したのである。
ひとつは、幹事長という候補者候補者の選定に口を出せる立場を手に入れたことである。
そしてもうひとつは、尾辻秀久先生が勇退するというニュースである。
この知らせを聞いた森山氏は、目障りな尾辻家を排除する作戦を立てたらしい。
名前は伏せるが、自分の傀儡を公認の候補者として推薦し、尾辻家の跡取りを“追放”するという作戦である。
この作戦は党内の反対がそれほど出なかったので、しれっと実行された。
しかし、朋実さんは野党と組んで森山氏の排除に動いたため事態は急変する。
鹿児島の有権者は尾辻家のブランド力により強い魅力を感じたので、森山氏の描いた青写真は砕け散った。

【保守王国の特徴】
せっかくの機会なので、保守王国の定義について考えてみよう。
保守王国の特徴は野党が弱いことと、選挙戦が盛り上がらないことだ。
これは有権者がイデオロギーの左右に無関心であり、場の空気を優先して投票することを意味する。
先述の鹿児島は典型的な保守王国である。
これは誤解を恐れずに言うと、大卒の人間が少なくて高齢者とマイルドヤンキーが主役ということだろう。
逆に、インテリ臭のする人間はイデオロギーの左右に興味を示すタイプが多く、田舎に住むことを敬遠することが知られている。
鹿児島で自民党が極端に強いのは、親米や親中といったイデオロギーに興味のある有権者が少ないからだ。
その証拠に、参政党が掲げる「日本人ファースト」も鹿児島のマイルドヤンキーたちには刺さらなかった。

一方、和歌山は厳密には保守王国ではない。
和歌山南部だけなら二階氏のワンマンチームなので保守王国と呼べるのだが、少なくとも北部に関しては浮動票の多い地域だ。
故・岸本周平先生は代議士時代に旧民主党の候補者として猛威を振るっていた。
2023年には維新の党籍を持つ女性が補欠選挙を制するなど、見た目以上にリベラルな土地柄だったりする。
地政学的に見ても、和歌山北部は大阪都市圏に併呑された地域であり、経済的には不可分となっているのは明らかだ。
大阪限定のイメージが強い“551蓬莱”が和歌山市に出店していることが、それを証明している。
こうした事情もあり、和歌山市民は二階家のブランド力にそれほど魅力を感じなかったらしい。
和歌山2区を征服するのに必要なブランド力と、和歌山市を攻略するのに必要な能力は異なることがハッキリしたのである。

【総括】
二階氏と森山氏は方向性も近く、やりたいこともよく似ているようだ。
しかし、民意はこの二人に「ノー」を突きつけた。
それは恐らく、イデオロギーの影響ではなく場の空気が昔とは違うということだと思う。
国民はアンケートで重視する課題を聞かれると「景気対策」と口にするが、景気とは本質的には“場の空気”である。
国民は「場の空気で投票してます」と自ら打ち明けているようなものだ。
なお、私は鹿児島について“男尊女卑”と書いたが、これはそういうネットミームがあるという話にすぎない。
実態は「人による」ので、有名なスラングの「さす九」のようなものは誇張が含まれると考えてよいだろう。

今回は尾辻朋実さんが快勝したことで、鹿児島の人も女性のリーダーを歓迎する土壌があることが示された。
これはとても良いニュースであり、少なくとも場の空気としての「男尊女卑」は消滅したことが明確になったといえる。
歴史を遡ると、2015年に現職知事が「女の子にコサインを教えても無駄」と言い放つなどして炎上している。
これを根拠に鹿児島には男女平等の土壌がないと主張する方がいるが、実態は異なると思う。
2016年の知事選では女性蔑視発言への嫌悪感が逆風となり、現職は落選した。
このとき当選したのは見るからにリベラルそうなテレビマンである。
少なくとも選挙の結果から男尊女卑の傾向を感じとることはできないし、事実にも反すると思う。
マスコミの偏向報道にも注意が必要だがSNSの偏ったアルゴリズムにも注意が必要である。



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