クラウドに任せられない処理だけ、家のMacに残した【スマホで周回!#18】
こんにちは、スマホ投資パパです。
以前、口座のスクショをAIに読ませて、保有銘柄のファイルを直す方法を書きました。
▶ 参考(第11回):自動化できない手作業をスクショとAIで簡単にした方法
あれはあれで、スマホ完結の現実解でした。今でも悪くない方法だと思っています。
ただ、あのとき私は、はっきり一つ諦めていました。
証券口座と直接つながって保有データを取ってくる自動化は、いったん見送った んです。口座の窓口プログラムを動かすための別マシンが要る。それがスマホだけで回す運用と噛み合わなかったからでした。
今回は、その諦めを、ちょっと前にソフマップで買った中古のMac1台で越えた話です。
この記事は、銘柄を当てる話ではありません。
手元の保有データを「スクショと推測」から「口座の事実」に変えるために、処理を家のMacとクラウドでどう分けたか、という設計の話です。
前回(第17回)の通知設計の、さらに一段手前にあたる回です。
ちょっと前まで、私はスクショで保有を直していた
第11回でやっていたのは、こういう流れでした。
moomooの口座画面をスクショする。AIに読み取らせる。更新用の指示文を作らせる。それをコーディングエージェントに投げて、手元の3つのファイルを直す。
手入力よりずっと安全で、1〜2分で終わる。実際、しばらくはこれで回していました。
ただ、私は毎朝、子どもの送りをしています。バタバタの朝に、証券アプリを開いてスクショを撮り、AIに読ませ、出てきた指示を確認して流す。時間そのものは大したことなくても、朝の限られた気力を、地味に削られる作業でした。
正直に言えば、これは私が大事にしている「スマホだけで完結させる」という線にも、少しだけ反していました。毎朝、手作業の儀式が1つ残っている。今回の改善は、この朝の一手間を消すためのものでもあります。
そして、問題は面倒くささだけではありませんでした。
売買した翌朝は、結局この作業が要ります。持ち値は、最後はスクショの数字頼み。そして一番やっかいだったのが、「いくらで買ったか」を正確には記録していなかったこと です。
「増えた日の始値」で、持ち値を推測していた
私は、持ち値を「保有数が増えた日の、その銘柄の始値」で推測していました。
その日の朝の値段で買ったことにする。ざっくりですが、当時はこれで十分だと思っていました。
でも、実際に使ってみると、これがけっこうズレます。
始値で買えるとは限りません。少し高いところで約定していれば、実際の持ち値はもっと上です。持ち値がズレれば、そこから計算する含み損益も全部ズレます。
さらにまずいのが、同じ銘柄を同じ日に2回に分けて買ったときです。推測ロジックには「その日は1回」としか見えず、2回の買いが1つに潰れて平均がおかしくなる。
これでは、保有の弱さを見るどころではありません。弱さを測る物差しそのものが、推測でできていた わけです。

全部クラウドに置ければ楽なのに、置けない一点があった
私の観測システムは、基本はクラウド(GitHub Actions)の上で回っています。
決まった時間に自動で起動して、データを集めて、観測して、Slackに投げる。ここまでは私が寝ていても勝手に進みます。スマホしか持っていなくても回るのは、判断以外の処理をクラウドに寄せているからです。
だったら、保有データの取得もクラウドに置けばいい。最初はそう考えていました。
でも、越えられない壁がありました。
証券口座とつながる窓口だけは、クラウドに置けなかった んです。
私が使っている口座は、やり取りのために、手元の端末で専用の窓口プログラム(常駐アプリ)を立ち上げ、そこにログインしておく必要があります。これは、都合のいいクラウドのサーバーからは触れません。自分の手元の端末でしか成立しない。
処理のほとんどはクラウドに置けるのに、「口座に問い合わせる」その一点だけは、家に残すしかなかった。
この窓口(OpenD)そのものの入れ方や、moomoo証券の情報を取得するまでの具体的な手順は、私が書くより分かりやすい記事があります。手を動かして試したい方は、こちらが具体的です。
▶ 参考(外部・アールグレイさん):moomoo証券の口座開設からAPI発注ダッシュボードまで1日で作った話
私の記事は、この窓口を「どう常駐させ、クラウドの処理とどう役割分担したか」という設計側に絞ります。
家のMacを、クラウドの“出張所”にした
ここが今回の肝です。
GitHub Actionsのジョブは、ふだんはGitHubが用意したクラウド上のマシン(毎回使い捨ての仮想マシン)の上で動きます。でも、「このジョブだけは、自分の家のMacで動かして」と指定できる仕組み があります。self-hosted runner、日本語で言えば自前の実行係です。
家のMacをGitHubに実行係として一度登録しておくと、クラウドの処理の流れの中で、特定のジョブだけを家のMacに降ろせるようになります。
ちなみに、この実行係はMac専用ではありません。self-hosted runnerは、WindowsでもLinuxでも動きます。家に常時起きているPCが一台あって、そこで口座の窓口プログラムが動くなら、それを実行係にできます。私はたまたま、ちょうどいい中古のMacを見つけたので、Macにしただけです。
私の使い方はこうです。
口座の窓口(OpenD)は、家のMacに常駐させておく。再起動しても勝手に立ち上がるようにしておく。そのうえで、「口座に問い合わせる」ジョブだけを、この家のMacに降ろす。 同じMacの上で走るから、そこにいる窓口に触れる。取れた保有・現金・約定を、手元の3ファイルに書き戻す。
それ以外は、いっさいMacに持たせません。Macの仕事は、口座に聞いて、結果をファイルに置くところまで。あとの観測も判断も、全部クラウドに戻します。
つまり、クラウドが本社、家のMacはその出張所。 といっても、出張所に置くのは「現場の窓口」ひとつだけです。
ここで一つ、誤解されやすい点を先に潰しておきます。
家のMacに移したのは、この一ジョブ「だけ」です。処理の中身も、Slackや口座につなぐための秘密の鍵(シークレット)も、これまで通り全部GitHubのリポジトリで一括管理しています。変わったのは、ジョブが実行される場所が、クラウドから一部だけ家のMacに移ったこと。それだけです。
私がMacの前に座って操作するわけでもありません。Macは、電源が入っていて窓口が常駐しているだけ。普段は放っておく置物です。
だから、私の運用はこれまで通りスマホ一本 です。むしろ、朝のスクショの儀式が丸ごと消えた分、こだわっていた「スマホだけで完結」に、一歩近づきました。
この“窓口ジョブ”には、地味だけど効く安全装置をいくつか付けました。
短い時間で必ず打ち切る。窓口が応答しないなら、だらだら待たずに終える。
この3ファイルを書き換えるのは、この窓口ジョブ「だけ」に固定する。ほかの処理には絶対に書かせない。
送り出す直前に、クラウド側の最新を一度取り込んでから送る。別の変更とぶつかって押し合いにならないようにする。
この書き戻しが、また別の処理を芋づるで呼び出さないよう、印を付けておく。ぐるぐる回り続ける事故を防ぐ。

本社と窓口は、直接つながない
役割を分けるうえで、一番こだわったのがここです。
本社と窓口を、直接つながないこと。 両者をつなぐのは、口頭の指示ではなく、1枚の報告書(保存データ)だけにしました。
窓口は、口座に聞いた結果を報告書として置く。本社は、その報告書を読んで先を進める。窓口の中で何が起きているかを、本社は知らなくていい。報告書さえ正しければいい。
エンジニアの言葉で言えば疎結合です。片方が中で作り替わっても、報告書の形さえ守れば、もう片方は動き続ける。
さらに、その報告書を書く担当を1つ(=窓口ジョブ)に固定しました。書く人を絞ると、数字の出どころが常に1つに定まります。複数の処理が同じファイルを取り合って上書き合戦になる、という事故が消えました。
窓口が閉まっていても、ちゃんと気づけるように
役割を分けたことで、新しい心配も出ました。
窓口は家のMacです。電源が落ちていたり、ログインが切れていたら、窓口は開きません。開かなければ、本社は最新の報告書を受け取れない。しかも朝はスマホしか見ていないので、それに気づけない。
だから、窓口が時間内に開かなかったら、それ自体をSlackで知らせる見張り役 を別に置きました。中身の良し悪しではなく、「窓口が開いたかどうか」だけを見張る係です。これが鳴ったら、私はログインし直すだけでいい。
もう一つ、取れなかったときに止まらない仕組み も入れました。
実際の約定が取れた銘柄は、その事実を正とする。もし取れなければ、その分だけは従来の推測に自動で戻して、処理そのものは止めない。
全部が事実に置き換わるのが理想です。でも、たまに一部だけ取れないことはある。そこで全体が止まると、結局また手作業に逆戻りです。だから 「良くなるが、壊れない」 を優先しました。

役割を1つに絞ったら、壊れた場所が分かるようになった
一番の変化は、収益でも精度でもありませんでした。
壊れたときに、どこが壊れたかがすぐ分かるようになったこと です。
スクショ運用の頃は、通知がおかしいと「写し間違いか、推測ロジックか、観測処理か」を毎回いちから疑っていました。全部が一続きだったからです。
今は、窓口(Mac・口座への問い合わせ)と本社(クラウド・処理とジョブ管理)が、報告書1枚を挟んで分かれている。だから「報告書が古いのか」「本社の処理がおかしいのか」を先に切り分けられる。見張り役が黙っていれば、窓口は開いている、と当たりを付けられる。
役割を欲張らせないと、故障もシンプルになる。忙しい生活の中で何かを仕組み化するときの、いい教訓でした。
今の私の考え方
第11回で私は、口座APIの自動化を一度諦めました。別マシンが要る、スマホ完結と噛み合わない、と。
今回それを越えられたのは、高性能なマシンを新調したからではありません。ちょっと前にソフマップで買った中古のMac1台を、クラウドの出張所として登録し、任せる仕事を「口座の窓口」ただ一つに絞っただけです。
中古とはいえ、出費はゼロではありません。でも、保有の数字が正確になり、何より毎朝のスクショのストレスが消えました。私にとっては、いい買い物でした。
派手な機能ではありません。スクショをやめて、推測を事実に置き換えて、口座の窓口だけを家に残した。ほんとうに、それだけです。
でも、この地味な一段を踏んでから、私は自分の運用ログを、ようやく素直に信じられるようになりました。
これが、今の私の基本方針です。処理はできる限りクラウドに寄せる。どうしても手元にしか置けない一点だけを、家に残す。そして両者は、報告書1枚で疎につなぐ。
私の地味な周回プレイはまだまだ続けることができそうです。
あなたの手元のデータは、事実ですか。それとも、いつの間にか推測になっていませんか。
次回・第19回は、いよいよ「損切りより先に、保有を疑う仕組み」の話に入ります。今回そろえた“正しい保有の事実”が、その土台になります。
記事が少しでも役に立ったら、スキで教えてもらえると、次を書く励みになります。
本記事は、米国株分析システムの設計や実装上の考え方を紹介する技術記事です。
特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
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