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セレッソ大阪 2026/27シーズン チーム始動に際して

今回はチーム始動に際して、このオフについて思うことを書いてみたい。

本当は昨季の総括を書きたかった。でも、シーズン終了直後にワールドカップが始まり、完全にタイミングを逃してしまった。

それなら新シーズンの展望を書こうとも考えた。ただ、今のセレッソは再構築の真っただ中で、まだチームの輪郭が見えてこない。これでは展望を書こうにも書けない。
ただ、一つ引っかかってる。
クラブは百年構想リーグ開幕前、「百年構想リーグと26/27シーズンを一つの流れと捉え、最初の半年で土台を作る」と説明していた。その前提に立つなら、昨季から今季へここまで大きくチームが変わるのは少し不自然にも感じる。

なぜ、こうなったのか。今回はその理由を、自分なりに整理してみたい。そこを考えずに、新シーズンを語ることはできないと思うからだ。

それに、単に「中東の札束攻勢に屈しました」で片付けてしまっては面白くないというか。それだけでは片付けられない部分もあるというか。


監督と主力選手の退団

終わったことをグチグチ言っても仕方ないし、こうなった以上は今持てるもので戦うしかないんだけど、それにしても今オフのセレッソは苦しかった。

様々な要因で、昨季のチームは作り直しを強いられた。セレッソにとって昨季のチームを解体するメリットなんて、本来は全くなかった。だが、アーサー・パパス監督の電撃退任によって、チームの再構築を余儀なくされた。

公式発表は最近だったが、話自体はもっと前から進んでいたはずだ。セレッソも当然引き留めただろう。百年構想リーグは序盤中盤と苦しんだものの、終盤に調子を上げて3位フィニッシュ。パパスの志向に合う選手も取り揃えつつあった。違約金が入るから「ハイどうぞ」と送り出すような状況ではなかったのだ。

では何が決め手だったのか。
僕は「野心」だったと思う。

もちろん、一番大きいのは金銭面だ。中東の条件に対して、セレッソが金額で勝負するのは現実的ではない。だから、もし少しでも逆転の可能性があるとしたら、監督に「ここでもう少しやってみたい」と思わせるような、野心的なプロジェクトを示すことしかなかったのではないか。

パパスは以前から補強を求め、タイトル争いへの意欲も隠していなかった。監督としては、セレッソで結果を残し、自身の価値をさらに高めてからステップアップするという選択肢も十分あったはずだ。

では、なぜセレッソはそこを示せなかったのか。

もちろん、何もしなかったとは思わない。むしろ、クラブとして提示できる最大限は提示したはずだ。それでも届かなかった。
理由は、セレッソが掲げる「育成クラブ」という方針にあるのではないだろうか。

クラブとしては、自分たちの力で経営を成り立たせることを目指している。新規のファンを増やし、入場料収入を伸ばし、選手は適切なタイミングで移籍させ、移籍金を得ながらチームを回していく。そのサイクルを作ることが今の方針だ。

ただ、その方針は裏を返せば、潤沢な戦力を長く維持したり、毎年タイトルを本気で狙い続けたりすることとは相性が良いとは言えない。

パパスが求めていた野心と、クラブが目指す現実的な経営。その間には、どうしても埋めきれない溝があったのではないか。僕は今回の退任をそう捉えている。

この話は、中島元彦の移籍にも通じるものがあると思う。

おそらくベガルタ仙台からのオファーは、クラブにとって「適切な金額」だった。だからセレッソとしては応じるしかなかった。
移籍の際、中島は「セレッソを一番愛していた」「セレッソサポーターだからこその選択」と話していた。最初に読んだ時は正直「どういう意味?」と思った。納得も出来なかった。でも今振り返ると、あの言葉は「クラブの事情を理解した上での決断だった」とも受け取れる。セレッソは、自立したクラブになるために、適切なオファーがあれば選手を送り出さなければならない。
そして何より重要なのは、他でもないベガルタ仙台からのオファーだったということだ。中島にとっても特別なクラブだからこそ、クラブの事情を受け入れ、仙台の地での挑戦を選んだ。セレッソとして譲れない方針と、選手にとって大事なクラブからのオファー。その2つがあったからこその移籍劇。そんな見方もできるのではないか。

もちろんこれは僕の推測でしかない。真相は分からない。でも、そう考えないと、生え抜きでレギュラーだった中島を手放した理由が見えてこない。長期的なプロジェクトの一員だったはずの選手を、簡単に放出するとはどうしても思えないのだ。

石渡ネルソンだって、事情は異なるが起きていることは同じだ。
シントトロイデンからのオファーは、先月既に届いていたという報道があった。しかしその現地の報道によるとセレッソが拒否したそうだ。しかし今、移籍を前提としてチームを離脱している(7/6時点の情報)。
この変化は何か。
「オファーの金額が増えた」ってことなんだと思う。一発目のオファーは適切なものではなかったが、交渉の末に適切な金額のオファーになった。ならばセレッソは応じる。それだけのことだ。

そして、この先もセレッソは同じような決断を繰り返すのだと思う。

安売りはしない。でも、適切なオファーだと判断すれば放出する。それは冷たさではなく、このクラブが生きていくための現実的な手段。少し寂しい話ではある。でも、それが今のセレッソの財政規模であり、「育成クラブ」として歩んでいく以上、受け入れなければならない現実なのだろう。

話は少し逸れるが、こういう若手選手の移籍サイクルが回ること、そして回るスピードが速くなるということは覚悟しておくべきかもしれない。
北野颯太や石渡ネルソンはまさに典型例だが、Jリーグ全体と同じように若手有望株は「数年に渡って活躍してから海外移籍」ではなく「活躍し始めたらすぐ海外移籍」になる。セレッソに定着したのは半年程度っていうケースは今後も出ると思う。
移籍金ビジネスをするというのはそういうことだ。
欧州サッカーを見ていれば20歳前後で移籍を経験する選手なんて山ほどいて、セレッソとしてはそこに売り手として参入する。必然的に、送り出す年齢はこれまでよりも低くなる。

だから今後、「ようやくレギュラーになったのに」という選手ほど、早く送り出す日が来るのかもしれない。
少し寂しい。
でも、それが育成クラブというものなのだと思う。
そこは受け入れる覚悟が必要かもしれない。

では、監督も主力選手も若手も抜ける理由は分かった。

それでも疑問は残る。
なぜ補強は進まないのか。

僕は、これはJリーグ全体がシーズン移行期にあることも大きいと思っている。

多くのクラブは百年構想リーグから26/27シーズンまでを一つの流れとして考え、継続路線を選んでいた。例年以上に選手の入れ替えは少なく、静かなオフだった印象がある。おそらく多くの選手が、1.5〜2.5年ほどのスパンで契約を巻き直しているのではないだろうか。

そんな中で、セレッソには想定外の事態が起きた。当然続投すると思っていた監督が、引き抜かれてしまった。そうなると、まず決めるべきは監督だ。監督が決まっていないのに、他クラブで契約中の選手を、移籍金を支払って次々と獲得するのは現実的ではない。

「監督は後でいいから、とりあえず選手を集めろ」という意見もあるかもしれない。でも、それは暴論だと思う。監督の志向と選手の特徴が噛み合わなければどうなるかは、セレサポなら前体制で嫌というほど見てきた。

潤沢な資金があるクラブならやり直しも利く。でもセレッソは違う。だからこそ、チーム作りには順番がある。まず監督を決めること。それが補強のスタートラインなのではないか。

その中で取り組んだこと

とはいえ、監督が決まらないからといって何もできないわけではない。実際、セレッソはできることから動いていたと思う。

その象徴が、レンタル組の整理とレンタルでの補強だ。

一番分かりやすかったのはGKだろう。
中村航輔が絶対的な立場である以上、ジンヒョンと福井の出場機会は限られる。二人ほどの実力者をベンチに置き続けるわけにもいかず、ジンヒョンはレンタル、福井は完全移籍という形になった。ジンヒョンをレンタルでの移籍に留められたのは、むしろクラブにとってありがたい結果だったと思う。

その上で、上林をレンタルから復帰させ、阿部航斗をレンタルで獲得した。阿部の「レンタル」という形も、監督が決まっていないタイミングだからこその判断ではないだろうか。来季以降の構想が見えない以上、完全移籍には踏み切りづらい。

それでも阿部を選んだ理由は想像できる。
ハッチンソン体制や松橋力蔵体制でプレー経験があり、足元の技術にも優れている。つまりパパスのアタッキングフットボール路線を別の監督で引き継ぐとしても、フィットしやすいタイプだ(ちなみに本人のコメントを読むとパパス続投と思っていた節がある)。
狙い目であることと、リスク管理。その両方を意識した補強だったように思う。

一方で、田中隼人、本間至恩、クシニ・イェンギといったレンタル組を引き留めるのは難しかったのだろう。監督が決まるまで待ってほしい、という話はレンタル元のクラブには通用しない。

それに、田中は出場機会が限られ、イェンギも負傷離脱が続いた。積極的に買い取るだけの材料を作れなかったことも大きかったはずだ。そう考えると、手放さざるを得なかったのも理解できる。本間は主力を務めてはいたが、セレッソだけの事情では待ってもらえない。本人のキャリア、所属元である浦和、FC東京のように本間を欲しがるクラブ。セレッソ目線だけで考えるわけにはいかない。

岡澤についても、復帰した時点ではどこで起用するつもりなのか、どういう構想で呼び戻したのかはまだ見えてこない。それでも、まずは戻ってきてもらう必要があった。どう生かすかは、新監督が決まってから考えるという順番なのだろう。

逆に少しポジティブに考えるなら、古山兼悟のレンタル期間を延長し、さらに金本毅騎までレンタルに出したCFだけは少し事情が違うようにも見える。報道こそ出ていないが、このポジションについては、すでに一定の目途が立っているのではないだろうか。

回避する方法はあったか

では、こんな状況を避けるためにはどうすればよかったのか。回避する方法はなかったのか。結局は「金で解決するしかなかった」とは思う。

もちろん、サウジ勢を上回るような給与水準は現実的ではない。ただ、それに代わる形としてパパスの野心を満たすようなプロジェクトを提示し、残留を訴えることはできたかもしれない。あるいは、それが難しいのであれば、継続路線を前提に同系統の監督を多少のコストを上乗せしてでも引っ張ってくるという選択肢もあった。

監督さえ早期に決まれば欲しい選手のイメージが大枠で決まるし、そのコネクションを通じて補強の目処が立つ可能性もある。補強にも当然金はかかる。結局のところ、どこにどれだけ、どういう順番で金を使うかという話でしかない。

僕はてっきり、まずは多少の金額を支払ってでもアタッキングフットボール路線の継承を目指すものだとばかり思っていた。でも考えてみると、安易に路線の継承を求めてミリガンやダイルズ、ハッチンソンを選ぶのは、現時点ではリスクが低くとも、将来的にどんな未来が待ち受けているかは別の話だ。
それにJリーグでは、特定の監督のスタイルを追い続けた結果、迷宮入りしているクラブだってある。そうなるくらいなら、これを絶好の機会と捉えて違う路線に舵を切るのは、決して間違った判断ではないと思う。特に雨野体制になって初めての監督選びなわけだから。

というわけで今回のオフは、

・継続前提だった監督が急に引き抜かれたこと
・後任選定に時間を要したこと
・シーズン移行期で市場全体が動きづらかったこと
・クラブの方針として「適切なオファーは受け入れる」立場であること
・そして、それを跳ね返すだけの資金的な余力がなかったこと

一つ一つなら乗り越えられたかもしれないが、同時に重なったことで、補強は例年以上に難しいものになったのだと思う。

今後の展望

とはいえ監督という最も重要なピースが埋まった。

新監督はパブロ・マチン
出来る中で最大限の監督を招聘できたと思う。ようやくチーム作りが始められる。
マチンの志向に合う戦力を数名は獲りたい。日本人市場が動きにくく、そしてセレッソは外国人枠が余っているので、外国人選手を中心に2~3人は欲しいところだ。日本人選手を何人も国内から獲得するのは現実的ではないと思う。今、トップチーム登録が27人と少ない。もし外国人を2~3人獲れば29~30人のスカッドとなり、数だけ見ればそれなりに揃う(ポジションごとの偏りはあるけど)。

これは完全に僕の予想だけど、2種登録勢も戦力にカウントしていくんじゃないかなと。これも先述したが移籍サイクルを回すことの一環で、若手選手への出番を増やすことは有り得る話だと思う。U-21リーグに参戦しなかったのも、セレッソは21歳以下でもトップチームで戦ってもらうという理由があるからではないか。マチン招聘の理由の一つには育成への理解もあったという話だ。そこへ舵を切っていく可能性は大いにあると思う。

監督がどういう戦術を志向するかは、勉強不足なものであまり詳しくはないのでこれから調べることにする。マチンの名が世間に広まったのはジローナ時代だと思うが、もう8年も前の話でよく覚えていないし、ここ数年は中東で過ごしていたので全く情報がない。堅守速攻とか352のシステムを好むとかも、今どうなっているかは分からない。キャンプ、トレーニングマッチ、ドルトムントとの親善試合で徐々にチームの骨格が見えてくるはずだ。

既に在籍している選手達がどれだけ監督の志向するフットボールに順応できるか。チームにとって全く新しい取り組みになると思うので、そこは期待したい。
補強はもちろん必要だ。
でも、このチームの未来を決めるのは、新戦力だけではない。今いる選手たちが新しいフットボールをどう自分たちのものにしていくのか。まずはそこを楽しみに見ていきたい。

最後に

ということで、監督が決まらない、補強が進まない。ヤキモキする気持ちはよく分かるし、自分だって満足はしていない。ただ、こうして振り返ると、不可抗力もあればクラブとしての方針もある。そして、その中でやれることはやっている。今はそんな印象に落ち着いた。

ただ今オフ、サポの間で噴出した不満は決してここ1ヶ月の動きだけが原因でないことは理解する。せっかく上手く行きそうだったのにまたリセットかよ、何回目なんや、それをさっさと挽回するだけの投資もないのかよ、と。

クラブが裕福でないことは理解している。ただ、それにしても厳しい状況に見えてしまう瞬間があるのも事実だ。

Jリーグ全体を見ても、資金を投じて成長を加速させるクラブは増えている。その中でセレッソも、自分たちのやり方で成長しようとしていることは分かるし、その姿勢自体は間違っているとは思わない。事実、成長はしている。

それでも、周囲の成長スピードと比べたときに、サポーターとして不安を感じてしまうのは自然なことだと思っている。これは卑屈でも悲観でもなく、現実として起きている差だ。スポンサーの支援を背景に積極的な投資を行うクラブもあれば、セレッソのように自立を軸に戦おうとするクラブもある。どちらが正しいという話ではない。ただ、その立ち位置によって競争の難しさが変わるのも事実なわけだから。

クラブは怠けているわけではなく、むしろ必死に積み上げているように見えるからこそ、余計に考えてしまう。

サポーターは黙って応援するべきだ、という意見も分かる。
ただ一方で、サポーターだからこそ、このクラブがどこへ向かおうとしているのかを知りたくなる。5年、10年、20年という単位でどう成長していくのか、どんな形で強くなろうとしているのかを見届けたくなる。

そして結局のところ、こういうことを考えてしまうのは、たぶんそれだけこのクラブが好きだからだと思う。
たかがサポーターが経営のことまで考えても意味がない。そう言われれば、その通りなのかもしれない。
それでも、考えてしまう。それもまた、サポーターの一つの在り方なんじゃないかと思っている。

とにかく開幕までもう1ヶ月だが、言い換えるとまだ1ヶ月ある。
今から10人補強するのは無理でも、2~3人は新監督の意向に沿う人材を獲得して、開幕して数試合を観てからでも遅くはないと思う。

不満を言うのもサポーターなら、クラブの事情を理解しようとするのもサポーターだと思う。考えながら応援する。それが今の自分なりのセレッソとの向き合い方だ。

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