セレッソ大阪 〜持続発展可能なクラブとは何か考える〜
例の動画を見たので、今のセレッソが目指している方向性なんかを考察してみたい。いや考察って言うと大袈裟。自分はこう思う、こうなんじゃないかと予想する、みたいなのをツラツラと書いてみる。
例の動画とはこちらのこと。
これを見ての感想。
なぜ「持続発展型」を目指すのか
個人的に思う、「ヤンマーが初めてセレッソに対して色気を出した瞬間」は2014年だと思っている。
当時から応援していた方はご存知だと思うが、2013年にセレ女ブームが到来し、観客動員数は大幅に増加。同時に、その数年前から力を入れて取り組んでいた「育成力の強化」が花開いた時期でもあった。チームの中心には柿谷曜一朗、山口蛍、扇原貴宏、丸橋祐介、杉本健勇らユース出身のタレントがズラリ。観客動員数・育成の両面で、この時点におけるクラブの絶頂期を迎えていた。
当時のセレッソ大阪社長であった岡野雅夫氏はこれを絶好の機会だとでも思ったのか、2013年オフに「自身を実質的な全権GM」とする形の大改革を断行。それまでセレッソの躍進を支えた梶野智強化部長・クルピ監督を退任させ、自らがディエゴ・フォルランの獲得に奔走。さらには監督選定においても自身の判断でランコ・ポポヴィッチを招聘。また独自にドイツルートでも築いたのか、ハンブルガーSVからゴイコ・カチャルをレンタルで獲得。とにかくド派手に動いた。
この岡野雅夫氏、ヤンマーからの出向の身であった。しかも役職は社長だ。ここ数年のセレッソで「ヤンマーから出向でやってきた社長が自ら選手や監督の獲得に動く」なんて聞いたことがない。それが普通だ。2014年が異常だった。
編成部門のトップであったはずの勝矢氏(現アンバサダー)を差し置いて、様々な会見には岡野氏が出席。さらに告知ポスターには「目指すのは優勝やない、観客を魅了しての優勝や」と史上最なんとかという文字が並んだ。そろそろ頭痛がしてくるのでこの辺にしておこう。
いくら何でも、やりすぎだと思ったものだ。
でもここまで好き勝手するのが岡野氏一人の判断だとは思えない。当然、ヤンマーからの何かしらの承認はあったのだろう。陰謀論ではなく、「君が中心になって動いて、勝負を仕掛けていこう」くらいの話はあったんじゃないかと。
当時から夏の数試合限定で特別ユニフォームを着用する機会はあって、昔も今と同じで大体はネイビー主体のユニフォームを着用することが多かったが、このシーズンに関してはかつてのヤンマーディーゼルを彷彿とさせる赤色ユニを着用。そのくらいヤンマーが表に出てきた。
結果、この2014年の岡野路線は大失敗に終わり、J2降格と岡野氏の辞任という最悪の形を迎えることとなる。そうなるまでの経緯は詳細を書くとそれだけで何万字にもなりそうなので割愛する。
が、一つ書くとするなら、このシーズンのセレッソの営業収入は37億円と当時の過去最高記録を樹立。したものの、なんとこのシーズンの決算は赤字であった。スポーツ・経営の両面で失敗したことになる。(ちなみに営業収入は2012年度が26億円、2013年度が32億円だから、この数年のセレッソの勢いが窺い知れる。ちなみに2024年度は54億円だった。間違いなく、セレッソは成長している。)
年俸6億円とも言われるフォルランに、3~4か月の契約で数千万を要したとも言われるカチャル、更に低迷打破の起爆剤として途中加入した元ドイツ代表カカウも年俸は2億とも2億5000万とも言われ、更に更に指揮官もポポヴィッチとペッツァイオリの2人を途中解任。おそらく違約金が発生していると思われる。この辺の金が重くのしかかった結果であろう。
続く2015年・2016年をJ2で戦った後、なんとか昇格を果たして2017年から再びJ1の舞台へ。この2017年が始まる前のオフ、僕が思う「ヤンマーが2度目に本気を出した出来事」が起こった。
それが清武弘嗣の復帰である。
当時セビージャで出場機会を失っていた清武は日本への移籍を模索。しかし、2016-17シーズン開幕前にハノーファーからセビージャへ移籍したばかり…つまり半年前に移籍したばかりの清武を獲得するためには、一説には約6億円ともいわれる多額の移籍金が必要であった。
セレッソとしては支払い困難な金額であったため獲得を断念する寸前だったらしいが、そこで待ったをかけたのがヤンマーであった。ヤンマーは「清武が日本に帰ってくるのにセレッソ以外のユニフォームを着せるわけにはいかない」として、セレッソに対して(詳細は明らかになってはいないが)多くの支援を提供。無事にセレッソは清武の獲得に成功する。
その2017年に2冠を達成し、クラブの歴史上最大級の成功を収めたセレッソ。監督交代や主力の入れ替わりはあったものの、続く2018年~2020年を含む4年間を一桁順位(クラブ史上、4年連続一桁順位はこの4年間が唯一)、さらに4年中3年はトップ5フィニッシュなど、スポーツ面における絶頂期を迎えた。が、ここでまた別の難局を迎える。
5期連続赤字と、債務超過である。
セレッソは2017〜2021年度の5期を赤字で、2021〜2023年度までの3期を債務超過で過ごした。債務超過に関してはコロナ禍特例がなければ何かしらの罰則を受けるところまで行ってしまっていた。
赤字に関しては嵩張る人件費に収入が追いつかなかったことが原因だろう。当時のセレッソは大熊清統括部長の下で、中堅〜ベテランを重点的に獲得していたために人件費は増加する一方(しかもその多くはフリーで放出したので1円にもならなかった)。2冠という結果を以てしても、人件費をカバーすることは叶わなかった。
債務超過に関しては、自分もいろいろな資料を読んだが、如何せん財務や経理についてはド素人であり間違った情報を書いてしまう危険性があるため、ここについて深く掘り下げることはしない。ただ「債務超過は良くない」ということだけ。一刻も早く解消しなければならないし、基本的に陥ってはいけないものだということ。本当に倒産寸前だったかは諸説あるので一概には言えないが、Jリーグから処罰を受けるラインだったことだけは事実だ。
以上のことから、ヤンマーとしては「一時的なドバっと金を使うことは必ずしも良い効果を発揮するとは限らない」という結論に至ったのではないだろうか。純粋な資金注入ではないにせよ、何度かセレッソと共に「本気」になったことはあった。
2014年は金の使い方があまりにも下手だったから別としても、2017年の支援はタイトル2つに結び付いたが一方で「健全な経営」からは遠ざかってしまった。タイトルを勝ち取るためにはそれ相応の金が必要だし、実際にタイトルを獲得したにもかかわらず、出費をカバーできるだけの体力が残念ながらセレッソにはなかった。
この経験はヤンマーにとってもセレッソにとっても、とても大きかったんじゃないかと思う。
これらの経験を元に、一時的に金を使うのではなくて、コツコツでいいから持続発展可能で、自力走行が可能なクラブを作らなければ…と思ったとしたら。ヤンマーとして、タイトルを取ることよりも「まずはクラブが自分の足で立って、長く地域とともに発展していくことの方が大事だ」と考えたのだとしたら。
より地域に根差し、生活や文化に溶け込み、自らの力で観客を増やすとか選手を育てて売るとか、ブンデスリーガに近いようなモデルを目指そうではないか…と。
ということでボルシア・ドルトムントとの提携にも話は繋がってくる。あの提携は、単に親善試合をやるだけのものではない。
(金の使い方の問題だろ!というツッコミはなしでお願いします)
ボルシア・ドルトムントの提携
ドルトムントは今でこそ強豪の一角であり、ブンデスリーガにおける打倒バイエルン・ミュンヘン一強体制の筆頭格というイメージが強い。多くのセレサポも自分と同じかもしれないが、香川真司加入以降の「上位争いをするドルトムント」しか知らないという人は多いのではないだろうか。
しかし香川真司が加入するほんの数年前まで、ドルトムントは破産の危機に陥るほどの財政難だった。債務超過にも陥っていた。オールドファンの方ならそっちのイメージのが強いだろう。
その危機を脱するため「俺らは若手を育てながら戦おう」という路線に活路を見出し、新進気鋭の指揮官ユルゲン・クロップを招聘。彼の下で若手を躍動させるサッカーを展開し、結果、香川真司ら優秀な若手を多数抱えながらブンデスリーガ連覇を果たすなど大成功を収めた。
借金まみれから、若手を中心にチームを作って「売り手に徹する」ことで建て直す。今のセレッソと似ているところがある。
過去、香川真司がマンチェスター・ユナイテッドへ、ヌリ・シャヒンがレアル・マドリーへ、イルカイ・ギュンドアンがマンチェスター・シティへ、ロベルト・レヴァンドフスキとマリオ・ゲッツェとマッツ・フンメルスがバイエルン・ミュンヘンへ、ウスマン・デンベレがバルセロナへ、ピエール・オーバメヤンがアーセナルへ移籍していった。経緯は様々であったが。
彼らの飛躍があったからこそ、その後にジェイドン・サンチョやジュード・ベリンガム、アーリング・ハーランドら次世代の有望株がドルトムントを移籍先として選択してくれた。
今セレッソが目指している形。まさにそのものだ。
そして先に挙げた香川真司やゲッツェ(5/1訂正)、レヴァンドフスキはフリー移籍で手放してしまった。その反省からか、最近はしっかり移籍金残す形での放出を徹底している。
若手を育てて移籍金を得る形で送り出しながら、それを見て次の有望株がセレッソを選択してくれる。その有望株を育てて送り出して、それを見てまたその次の有望株がセレッソを選択してくれる…その繰り返しを作りたい。それはまさに、ドルトムントがやっていることなのだ。
その上、ドルトムントは女子チーム運営にも力を入れている。トップ・ユース・レディースの3つの車輪を同時に回していくというのはセレッソも求めている姿。3つの車輪を回しながら選手を育てていく、売るときはしっかり移籍金を残す、そしてクラブの価値を高めていく。そのノウハウをドルトムントから吸収したい…あの提携からはセレッソが今目指している姿が鮮明に見て取れた。
夢がある、壮大な目標だ。
しかし当然、これは決して簡単な話ではない。
そのドルトムントだが、最後にタイトルを獲得したのは2020-21シーズンのDFBポカール(国内カップ戦)。リーグ戦だと香川真司が在籍した2011-12シーズン以降、優勝していない。CLで準優勝が2回(2012-13,2023-24)あったが、結局は優勝に手は届いていない。ドイツ国内2番手を名乗るには近年の実績が乏しすぎる。
あと育成という面でも近年ものすごく危うい。
そもそも先ほど挙げた選手たちの中で、ユース育ちなのはマリオ・ゲッツェだけだ。今も案外、ユースからトップに定着できているわけではない。
あと、「ドルトムント=育成、バイエルン=ドイツ国内からの引き抜き」というイメージがあると思うが現実は全然違っていて、ドルトムントこそ国内から引き抜きまくっている。
今のチームにおける主力級だけを見てもニコ・シュロッターベックはフライブルクから、ラミ・ベンセバイニはボルシアMGから、マックス・バイアーはホッフェンハイムから、フェリックス・ヌメチャはヴォルフスブルクから、ユリアン・リエルソンはウニオン・ベルリンからの移籍組だ。既に退団が決まっているが、10番を背負うユリアン・ブラントはレヴァークーゼンからの移籍。
最たる被害者はシュツットガルトだろう。
ここ3年に限っても正GKグレゴール・コーベル、主将でありCBのヴァルデマール・アントン、エースFWセール・ギラシという柱の中の柱とも言える3人がドルトムントへ移籍。
そう、今のドルトムントを支えているのはこうした国内から引き抜いた選手達なのだ。しかもゴリゴリの主力を引き抜いていて、そこにほんの少しの育成色を混ぜてチーム作りを行う。
これは、到底セレッソが真似できるものではない。
そしてこれは今も続く難しい課題なのだが、どうしても借金まみれの過去があったので移籍市場において積極性を見せられず、満足のいくチーム編成が出来ないシーズンが本当に多い。
優勝を目指せる位置に立っているはずなのに、それに見合うだけの戦力整備はここ数シーズンずっと出来ていない。選手に金を掛けないか、あるいは監督に金を掛けないか。あれほど国内から引き抜いたのになかなかタイトルに縁がないのはこのためだ。層を厚くするほどの補強には躊躇するか、監督選びで節約志向が先行するかのどちらか。
強気な投資をしてバイエルンから覇権を奪回しよう…というよりはあくまで健全経営で、2位を狙って、CL出場権を獲得し少しでも賞金を得よう、という方面に力を入れているのだ。
事実、今季のドルトムントは優勝争いに加わりながらもヴァッケCEOやニコ・コヴァチ監督は執拗に「バイエルンには敵わない。規模が違いすぎる」「我々が気にすべきはバイエルンとの差ではなく下との差だ」「CL出場権が確保できれば満足」という、クラブ全体の士気を下げかねない発言を繰り返していた。編成トップであるセバスティアン・ケールSDは何故かほとんど補強せず、チームは常にギリギリのやりくりを強いられた(ケールは既に解任されたが)。
今のドルトムントにとっては「かつて築いた育成クラブとしてのブランド力」と「適正価格以上で買ってくれるプレミアリーグの存在」が大きい。
この2つで何とか2番手争いに留まっている。
ドルトムントが好きでほぼ毎試合見ている自分からしても、育成が上手いのはライプツィヒやレヴァークーゼン、シュツットガルトだと感じてしまう。ドルトムントは育成に苦労しているが一方で勝ちに行く投資もそこそこに抑える、非常に中途半端で苦しい立ち位置にいる。
ということから、「健全経営」で「育成メイン」と言えば聞こえは良いが、見方を変えれば「勝つ気はないのか」という風にも見えてしまう。そのくらい、ドルトムントは停滞気味だ。
そう、これはセレサポがセレッソやヤンマーに対して抱いている感覚とすごく似ている。健全経営が大事なのはわかるが勝ちに行ってナンボやろ、と。停滞してるやないか、と。
じゃあなんでドルトムントは、あれほどのポテンシャルがあるのにリスクを冒して勝負に出ないのか?
先述の通り、やっぱり過去の財政難に陥った経験があるからだろう。勝利を目指していないわけではないが、それよりもまず「クラブが存続」することこそが一番だと。そこを忘れちゃいけない、と。
ではこれをセレッソに置き換えてみる。
なぜセレッソはリスクを冒して勝負に出ない?
その気になれば上位争いが出来ることは過去に証明済だろう?
…ここで先ほどの2014年の失敗と2017年以降の赤字が出てくる。リスクを冒して失敗した過去、スポーツ面では成功したもののその後長期に渡る赤字と債務超過に苦しんだ過去がある。やっぱり、まず優先すべきはJ1の舞台で安定的に戦うこと、そもそもクラブが存続すること。
一時的に誰かが一気に資金を注入するとかリスク承知で大金を投じるとかではなく、自分たちでまず財布を大きくして、その財布の中で勝負する。そうすれば企業や特定のオーナーに左右されることも、やりすぎて破産や赤字になることもない。
規模は全く違うが目指すところは似ているのかな?と思う。だからこそ提携を結んだのではないか。育成したいし、育成と言えばドルトムントだよね、だけではなく、なぜ育成なのかとか、目指す姿はどこにあるかとか、そのためになにをすればいいかとか…結果だけではない、その辺まで含めたパートナーシップであろう。
クラブが自分で稼ぐ。
企業や富豪に頼らないクラブ作り。
となると大事になってくるのは「地域」だ。
その地域と、自治体と、パートナー企業と、そして市民と、ファンサポーターと、密接に関わって共存共栄の関係を作る。日置社長が言っていた「サッカークラブは地域名を名乗る。このことを、もっと重く受け止めるべきだ」という趣旨の発言は、ここに繋がってくると思う。
地元に愛される。市民やファンの力で支える。くれぐれも勘違いしないでほしいのは「税金で面倒を見ろ」という意味ではない。地域とそこに住み人々から愛されるクラブになって、ファンになってもらって、ファンとしてお金を落としてもらえるようなクラブになろうってこと。
そして、ここにセレッソとドルトムントとの決定的な違いがあるし、セレッソがまだまだ足りない部分が見えてくる。
セレッソに足りないもの
では、ドルトムントとセレッソの決定的な違いは何か。
僕は観客動員数だと思う。
というかドルトムント自体、欧州一ともいわれる観客動員数を誇るクラブなので違って当然だ。でもそういうことが言いたいのではなくて。
もちろん他にも山ほど違うことはあるが、決定的な違いは観客数。
大阪という大都市の、しかも大阪市内のアクセス良好な場所に本拠地があることを考えたらセレッソの観客動員数は決して多くはない。
これは決して誰かに対する批判ではない。身内への文句でも、クラブの運営への文句でもない。でも大阪という街のポテンシャルを考えたら平均観客数約18,000人は決して多いとは言えないだろう。
つまりは伸び代でもあるわけで、だからヤンマースタジアム開催を増やそう、と。少しでも新規を取り込む、潜在的なファンをもう一度掘り起こす。そして定着してもらう。幸い、この街に人間はたくさんいる。だから4万人の箱を用意し、母数を増やす。
日置社長も言っていた。「桜スタジアムで観る方が価値体験としては良いに決まっている。拡張したい思いは常に持っている」と。てっきり桜スタジアムを、箱の小ささを理由に軽視している人なのかと思っていたが、どうやら違う。集客こそすべてってわけでもなさそう。
ヤンマーハナサカスタジアムの収容人数が数字上は25,000人だが実際は23,000人程度。セレッソの平均観客数が約18,000人。ざっくりだが2,000~3,000人程度は新規客が入り込む余地がありそうだ。
でもこれをもっと広げる。
ヤンマーなら約40,000人収容、平均観客数18,000人と考えたらあと20,000人は入る。2万も空きがあるのなら、新規層が1万くらい入ったとしてもおかしくはない。
「新規層が1万人も入る」というのは、桜スタジアムでは決して起こり得ないことだ。日置社長の言う「チャレンジ」はここのことを言っているんだろう。一人でも多く来てもらう、一人でも多くリピーターになってもらう、そのためには大きい箱を用意しよう、その箱を埋めるチャレンジをしよう。
なので一つモノ申すなら「言い方はあったのでは?」とは思う。自分含めてサポーターの手首は360度回転する柔軟性があるので、言い方ひとつで掌を返すし態度がコロッと変わる。
「広いヤンマーがあるじゃないか。そこを埋めるのにチャレンジしようよ」ではなくて、例えば
「クラブとしては桜スタジアムを拡張したいが、そのためにはまず今の桜スタジアムを埋めることと、更に拡張した後も埋める必要があり、要は今よりもっと平均観客数を増やす必要がある。そのためには新規層により多く来場してもらう、その中で一人でも多くリピーターとして定着してもらわなといけない。その母数を広げるためにはヤンマー開催を織り交ぜていくべきだと考える。クラブとしてはヤンマーを埋めることと桜スタジアム拡張に注力するから、サポーターの皆は一人でも多く家族や友人を誘って、スタンドを埋めて、ホームの良い雰囲気を作ってくれ。クラブとして次の段階に進むために、お互いにチャレンジしよう」
みたいな言い方であれば印象は大きく変わったはず。
なんでサポーターのようなただの客に気を遣わなければならないんだ、と思われるかもしれないが、案外そんなことでクラブ内外がまとまったり、スタジアムの雰囲気が良くなったりしないだろうか。
「クラブが何考えているか分からんわ」という気持ちで試合を観るのと、「クラブとして目指している方向はこれだ」という確信を持ちながらスタジアムへ足を運ぶのと、同じではないだろう。
それにサポーターなんて「クラブの為に!」と言われたらすぐその気になる。単純な生き物だ。自分がそうだからよく分かる。それをもっと利用するのもアリではないか。自分だって喜んで利用される。
もしそういう雰囲気の良さや団結感があれば、スタジアムへやってくる新規層の心にもほんの少し響くものが出来るかもしれない…と、思っている。
あと今のセレッソにとって桜スタジアム開催を減らすというのはとてつもなく大きい決断だ。単にスタジアムを変えます、では済まされない。そのくらい、桜スタジアムプロジェクトにはたくさんの方のご尽力があった。自分なんかでは想像もつかないレベルの、語ることすら許されないほど多くの方のご尽力が。
だからそこを気をつけながら「でもクラブをこうやって大きくしたい」みたいなビジョンはもっと共有があってよかったかもしれない。
経営方針の中身をサポーターに全てを見せろ!なんて偉そうなことを言っているのではない。クラブを大きくするためにサポーターに出来ることがあればどんどん言ってほしいってこと。サポーターには、クラブのためにもし役立てることがあるなら、ほんの僅かな助けにしかならなくても協力したいという思いは皆あると思う。
自分だってセレッソに対していつも文句を言っているが、そんなセレッソがもし「ねぇ、ちょっと協力してよ?」と言ってきたら微力ながら喜んで協力する。
僕はサッカーの「サポーター」ってのはそういう意味だと思っている。ゴール裏からピッチ上の選手を支えるからサポーターなんじゃない。クラブそのものを支えるからサポーターなんだ、と。
最後に
単なるスポーツクラブという枠を超えて、地域と共に生きて、自分たちで稼いで自分たちでゆっくりかもしれないが持続可能な形で大きくなっていく。
これはこれで崇高なプロジェクトだし、ひとつの理想ではあると思う。
ファンや地域の皆んなによってクラブを支える、いわばブンデスリーガのようなやり方。元々Jリーグはブンデスリーガをモデルに作られたのだから余計にそれが理想形だろう。
でも間違いなく、時間は掛かる。スピード感には欠ける。
特に今、DAZNマネーに続いてACLマネーまで流入している。今一気に強くなって資金を手にすれば、その資金を元手にまた強化を図れる。そのサイクルに乗ることができれば、資金を武器に周囲を一気に引き離すことができる。
繰り返すが、リスクを冒してそのサイクルに乗っかるチャレンジからは、手を引いたのだ。セレッソはそのサイクルには乗らないし、引き離されるのを何とか追いかけていく立場になる。
町田や神戸なんて並ぶ間もなく一瞬で追い抜かれ、一瞬で差が広がったし、長崎もジャパネットの強烈なバックアップを受けて一気に進化してきている。他にも鹿島にはリクシルが、FC東京にはmixiがついている。彼らのスピード感にはついていけないと思われる。あのスピード感は心底羨ましい限りなのは僕も同じだ。
それに日本のああいうチームは「大型補強だけに金を掛けてあとは放置」なんて感じじゃない。練習場やスタジアム、ユース組織の整備などあらゆる方面に投資をしており、芯から強くなろうという意思を感じる。本当に手強い相手だ。
そんな諸クラブを相手にして、セレッソだって勢いでタイトルを1つか2つ獲る可能性はゼロではないものの、現実的かつ常時タイトル争いを視野に入れたチーム作りを行うことは、しばらくは難しい。少なくとも4~5年はないんじゃないだろうか。もっと長いかもしれない。タイトル獲得があるとすれば、一瞬の勢いを作ってそのまま優勝まで雪崩れ込むような、奇跡を起こすしか方法はなさそうだ。
…ということを、我々サポーターも覚悟すべきかなとは思う。
覚悟っていうのは「どうせヤンマーは金を出さないから無理無理」という諦めではなくて、「サポーターを増やして、サポーターの力によってクラブを支える。そのためには時間が掛かる」という意味の覚悟。
ドルトムントのようにスタジアムを満員にして、チケットや年パスを購入してクラブの収益を支える。トップだけでなくユースもレディースも一体となって、地域に根付いたクラブになる、市民に愛され支えられるクラブになる。そのためには長期的スパンで考えなくちゃいけない。そういう覚悟。
でもドルトムントのようになるって言えば、少しは前向きな気持ちになれるんじゃないかと思う。今は苦しい時期を過ごしているが、それでもやっぱり名前を聞けば「おっ!」となるクラブだ。
それにヤンマーが資金を注入したって、そのヤンマーの業績が悪化したら?という心配は常に付きまとう。親会社の経営が傾いた影響でクラブそのものが存続危機となるケースを、Jリーグのサポーターは何度か見たはずだ。
難しいことだけど、そうはならない道を選んだと、思っている。
繰り返すが、地域に密着し愛されるクラブになる。ファンやサポーターでクラブを支える。そしてホームスタジアムを埋める。観客を増やす。体力と経済力を身につける。
とにもかくにもホームスタジアムを埋めること。まずはここからだ。
