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中央銀行としての江戸幕府:吉宗が断行した異次元の「市場買い支え」 #103


豊作なのに破産寸前?武士を襲った「米のデフレ・スパイラル」

現代の私たちは「物価高(インフレ)」に頭を悩ませていますが、
江戸幕府・第8代将軍の徳川吉宗が直面したのは、その真逆である「異次元のデフレ(米安)」でした。

当時の武士の給料は「米」で支払われ、それを換金して生活していました。そのため、豊作になって米の価値が暴落すると、武士階級の実質的な給料は半分以下に激減。町は大不況に陥り、武士たちの自己破産が相次ぐという、おかしな事態が発生したのです。

この「米のデフレ・スパイラル」を止めるため、中央銀行としての江戸幕府は、なりふり構わぬ強力な市場介入に踏み切ります。

幕府による「量的緩和」と「スピード買い上げ」

幕府が取った第1の矢は、市場に溢れた米を力技で買い占め、人工的な米不足を作って価格を吊り上げる「御買米(おかいまい)」、現代でいう中央銀行の「買いオペ(量的緩和)」でした。

享保15年(1730年)正月のお触書には、こうあります。

「御買米有之候間入札致候者来ル七日御蔵役所江入札持参可仕候」
(意訳:幕府が米を大量に買い上げる。売りたい者は7日までに役所へ入札しに来なさい)

『御触書集成』[30],写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2549919/1/17 (参照 2026-07-11)

さらに同年7月には、

入札の手間すら惜しんで、スピード重視の直接買い取りにまで踏み切ります。

「米賣上度者ハ上中下之手本米之國所を書記 直段書付相添…二三日中御買上之儀可申渡候」 (意訳:米を売りたい者はサンプル(手本米)と希望価格を書いて持ってくれば、2〜3日中に超スピードで全額現金買い上げする)

『御触書集成』[30],写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2549919/1/21 (参照 2026-07-11)

「いくらでもいいから、とにかく市場の米を幕府が引き取る!」という、強烈な市場買い支えでした。

全社一丸の供給制限!大名たちへの「強制在庫ストック(置米)」

しかし、幕府の資金力だけでは市場の米を吸い上げきれません。そこで吉宗は、全国の大名(諸藩)に対しても「お前たちも、米を市場で売るな。倉庫に眠らせておけ!」という強制的な在庫コントロールを命じます。これが置米おきまい」です。

同年の8月のお触書を見てみましょう。

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