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彩女学院 ── プロローグ


こんにちは、ナツです。
オリジナル小説スタートします。





夜になると、この学園はいちど色を手放す。

廊下の灯りがひとつ、またひとつと落ちて、窓の外には藍を溶かしたような闇が広がる。昼間あれだけ騒がしかった中庭も、いまは静かに眠っている。

それでも、目を凝らせばわかる。
暗がりのなかに、ぽつり、ぽつりと、色が灯っているのが。

寮の窓のひとつは、あたたかなオレンジ。
別の窓は、眠そうな黄色。
屋上の隅では、墨のように濃い黒が、膝に黒猫をのせて月を見上げている。

ここに暮らすのは、生まれながらに〈色〉を宿した少女たち。
世界でも数えるほどしかいない、「色持ち(いろもち)」と呼ばれる稀少なヒューマン。赤い子は本当に夕焼けみたいに熱くて、青い子は月明かりみたいに静か。瞳の色も、髪も、まとう空気も、その子の色でできている。

彩女学院(いろどりじょがくいん)は、そんな子たちが集まる全寮制の学校だ。
ここでみんな、自分の色とどう付き合っていくかを、すこしずつ学んでいく。

おもしろいのは、寮の部屋割り。
わたしたちは、色相環で向かい合う色 ── 「補色」どうしで同室になる決まりがある。赤と緑。黄と紫。橙と青。
正反対の色を、わざわざ同じ部屋に。
理由を先生に聞いても、「そのうちわかるわ」と笑うだけ。すぐ仲良くなる子もいれば、最初はまるで噛み合わない子たちもいる。それでも不思議と、どの部屋もちゃんとおさまっていく。

……と、ここまで書いて、ペンを置く。

わたしの名前はブルメリア。青を持つ、ちょっと無口な子、らしい。自分ではよくわからないけれど。
観察して、書きとめるのが好きで、こうして一人ずつ、みんなのことを記録している。この図鑑は、そうやってできた。

同室の橙の子 ── オランジェリアが、向かいのベッドで本を読みながら、ふいに顔を上げた。
「ブルメリア、また書いてるの?」
「うん。みんなのこと」
「わたしのことも、ちゃんと可愛く書いてね」
そう言って、ふふっと笑う。窓から差し込む月明かりに、彼女の橙がやわらかく揺れた。正反対の色のはずなのに、この部屋の夜は、いつもこんなふうに静かで、あたたかい。

明日もきっと、誰かが笑って、誰かが泣いて、誰かと誰かがぶつかって、仲直りする。
そのぜんぶを、わたしはここに書いていこうと思う。

—— さて。
最初に紹介するのは、どの子にしようかな。
ページをめくれば、そこに、ひとつの色が待っている。


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