あまりにも早すぎた別れ。悲しみの果てに、娘たちと結んだ「命の約束」
2017年1月。突然の電話と、病院のベッドで横たわる冷たい姿
2017年1月、我が家ではとても悲しい出来事が起こりました。 我が家の愛犬、翔君が亡くなったのです。
翔君はカットがとにかく大嫌いなワンコでした。よく吠えるし、嫌なことをされると全力で牙を剥くため、普通のペットショップでは受け入れてもらえず、自宅でカットするのも無理な状態でした。
そのため、仕方がなくいつも動物病院で麻酔を打ってもらい、カットをお願いしていたのです。
その日もいつものように、翔君をカットしてもらうために動物病院へと連れていきました。
別れ際、翔君は「え? 行っちゃうの? 嫌だよ」と言わんばかりの顔で、私をじっと悲しそうに見つめていました。
「夕方に迎えに行くからね」と約束し、私は病院を後にしました。
届かない言い訳、そして娘たちとの絶望の対面
夕方の18時過ぎ。翔君を迎えに行くために車に乗り込み、あと5分もすれば病院に着くというときでした。
母から突然の電話がかかってきました。車を停めて電話に出てみると、信じられない言葉が耳に飛び込んできました。
「ちょっと! 翔君が亡くなったって、病院から電話がかかってきたんだけど!」
「は?」
全く意味がわかりませんでした。だって朝はあんなに元気だったし、いつも通りに預けたはず。それなのに、死んだ? 何を言っているんだろう。
悪い冗談だと思いたかった。とにかくあと5分で病院に着く。
嘘だと思いたくて、動揺する心を必死に落ち着けながら病院へと向かいました。
そこで対面したのは、朝と変わらない姿で横たわる翔君でした。
目は瞑ったままで、触れるともう既に冷たくなっています。
一体何が起きたのか、頭が追いつきませんでした。
医師の説明によると、麻酔を打ってしばらくして様子を見に行ったら、嘔吐物を喉に詰まらせていて手遅れだった、とのことでした。
なぜ、麻酔を打ったあとに目を離したのか。亡くなってすぐに私へ電話をくれなかったのはなぜなのか。契約者である私ではなく、なぜ母に電話がいったのか。
意味がわからなすぎる対応に事実を受け入れられないまま、棺に入れられた翔君を引き取りました。
「お代は要りません」と言われ、「当然でしょう! 人の大事な家族の命を奪っておいて!」と、悔しさとどうしようもない憤り、そして絶望で叫びましたが、失った命が戻るはずもありません。
子どもたちにはなんと説明しよう。
そればかりが頭の中をぐるぐると巡り、遺体の前でずっと、押し寄せる激しい後悔に苛まれていました。
こんなことになるなら、どれだけ噛まれたって自分でカットしてあげたらよかった。病院になんて連れて行かなければよかった。
脳裏には、朝見たあの悲しそうな翔君の顔がちらついて離れませんでした。
まだ2歳。来月には3歳になるはずでした。これから子どもたちと一緒に大きくなって、共に成長を見守っていくはずだったのに、あまりにも早すぎる死でした。
そうしている間にも時間は過ぎ、娘たちが帰宅します。鼻歌を歌いながら嬉しそうに帰ってきた次女が、現実を知った瞬間のあの絶望に満ちた表情は、今でも忘れることができません。
翔君は我が家に来て幸せだったのだろうか。初めての犬でわからないことだらけで、十分に愛情を注いであげられなかったのではないか。
いくら後悔しても足りず、ずっと涙が溢れて止まりませんでした。
もうあれから10年が経とうとしていますが、長女のLINEのアイコンは、未だに翔君の面影のままです。
「二代目」との出会い、そして明かされた重大なリスク
翔君を供養してから数ヶ月間、我が家には重苦しい空気が漂っていました。翔君が使っていたものをすべて処分しようかとも思いましたが、どうしてもできずに置いたまま。
「いつか、ふっと戻ってきてくれるんじゃないか」と、ありもしない奇跡を考えては悲しみに暮れていました。
そんなある日、ふらりと立ち寄ったペットショップで、一匹の子犬と出会いました。
他の犬よりも明らかに体が小さく、毛がほわほわと少なめな、ペキニーズとシュナウザーを掛け合わせた真っ白なミックス犬でした。
長女が「どうしてもこの子を連れて帰りたい!」と言って聞かず、その日は一旦帰宅し、家族みんなで何度も話し合いを重ねました。
「きちんとしつけをすること」
「食事や掃除の世話は子どもたち全員で責任を持つこと」
「私はお金は出すけれど、世話はしないこと」
「もし約束を破ったら山に捨てに行くから、それくらいの覚悟を持って飼うこと」
これらの厳しい条件を盛り込み、子どもたちもそれをしっかりと承諾したため、我が家に2代目のペットとして「凛ちゃん」を迎えることになりました。
しかし、のちに大変なことが判明します。
凛ちゃんには、命に関わる重い食物アレルギーがあったのです。
ペットショップ側はその事実を全く把握しておらず、当然私たちへの情報共有もありませんでした。
何も知らないままチーズ味のフードを食べさせれば激しく体を痒がり、羊の肉を食べさせたときには敗血症を起こして死にかけ、病院で点滴や薬の治療に追われることになりました。
生き物の命を預かり販売する以上、ショップ側も事前にきちんと検査をし、健康に関わる重要な情報は責任を持って飼い主に共有すべきだと強く感じます。
私たちは、そのペットショップには二度と行かないと心に決めました。
一時はどうなることかと生きた心地がしませんでしたが、凛ちゃんは療養食への切り替えと定期的な内服薬のおかげで、現在はアレルギーの痒みもだいぶ落ち着き、毎日元気いっぱいに暮らしています。
突然の震災、そして最愛のペットとのあまりにも理不尽な別れ。
立て続けに襲いかかってきた困難の中で、私たちは命の重みをこれ以上ないほど痛感させられました。
子どもたちと交わした「責任を持つ」という約束。
小さな凛ちゃんを囲む我が家には、少しずつ、でも確実に、失われかけていた笑顔と新しい日常が戻りつつありました。
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