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双極性感情障害の母/エッセイ/私が思うこと/61 いい無理とダメな無理


―― 山の話が教えてくれた、生き続けるための考え方

疲れを感じたとき、あなたは無理をしていなかっただろうか。

立ち止まることや、引き返すことを、罪だと思っていなかっただろうか。

山登りも、人生も同じで、進むか止まるかの判断は、

風の匂いや足元の感覚、小さな心の声から始まる。

山には、いい無理とダメな無理がある。

いい無理は、空の色を確かめ、

体の声に耳を澄ませ、

引き返す道を残したまま、そっと一歩を踏み出すこと。

ダメな無理は、頂上だけを見つめ、

自分の限界を見えないふりで押しやること。

山では、登らない決断が命を守る。

下りる勇気が、次の山を残す。

生き残ることが最優先で、登頂はその次になる。

山は、そうやって人を生かそうと静かに教えてくれる。

この話は、人生にもそのまま重なる。

心も山の気候のように、時間とともにうつろう。

さっきまで平気だったことが急につらくなる日もある。

何もできなかった日のあとに、ふっと楽になる瞬間が訪れることもある。

いい無理は、少し怖さを抱えながらも、

まだ余白を残して進むこと。

今日はここまで、と自分に言えること。

休むことも、助けを求めることも、下りることも、

すべて選択肢のひとつとして抱えていい。

ダメな無理は、苦しい声を無視して歩き続けること。

限界を越えて進むことは、知らないうちに心を消耗させる。

心も山と同じで、壊れる前に気づくほうがいい。

でも疲れや眠れなさ、何もしたくないという感覚は、

必ず届く、止まれのサインになる。

だから今日はただ、息を整え、

足元の確かな場所に立つだけでいい。

それだけで、少し世界が静かになり、

心はやわらかく満たされる。

少し休んだ自分を、そっと抱きしめられる気がする。

そして、生きていること自体が、

もう何度も正しい撤退を選んできた証のように思える。



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