転職で評価されたのは、自分では価値がないと思っていた仕事だった
「今、どんなお仕事をされているんですか」
そう聞かれたときに、うまく答えられないことがあります。
事務です、と答える。もう少し話そうとしても、続きが出てこない。決まった作業を毎日やっているだけで、人に説明するようなことは何もしていない気がする。
だから最後に、こう付け足してしまいます。
「たいしたことはしていません」
謙遜のつもりではありませんでした。僕の場合は、本当にそう思っていました。
職務経歴書の前で、手が止まる
転職しようと思って、職務経歴書を開いたときも同じでした。
担当した業務の欄は、なんとか埋まります。書けないのはその先です。実績。工夫したこと。自分ならではの経験。
やってきたこと自体は、あるにはありました。ただ、どれも実績と呼べる気がしませんでした。
大きな案件を動かしたわけでもなく、表彰されたわけでもない。日々のことを、淡々とこなしてきただけです。ここに書いていいものだとは思えませんでした。
そのときの僕は、書けるものは「これから作るもの」だと思っていました。資格を取るとか、新しい仕事を任されるとか、何か特別なことが起きないと始まらないと。
でも実際に書けたのは、そういうものではありませんでした。
転職とは関係なく、面倒だから始めたこと
当時、毎月決まった時期にやる作業がありました。
同じ手順で資料を作って、決まった形式に打ち込んで、間違いがないか確認する。誰がやっても同じ結果になる作業です。難しくはありません。ただ、時間だけはかかりました。
放っておけば、来月も再来月も、同じだけ時間がかかります。それが嫌でした。
それで、自動で処理できる形に作り替えました。
動機は、それだけです。楽をしたかった。空いた時間で他のことができるし、ミスも減る。自分の評価も下がらない。
上司に指示されたわけでも、報告したわけでもありません。評価される予定もありませんでした。
だから当然、これが職務経歴書に書けるものだとは思っていませんでした。
「それ、普通は書けることだよ」
気づいたのは、ずっとあとのことです。
転職の準備をしていたころ、知人に自分の仕事の話をする機会がありました。何を話せばいいか分からなかったので、日々やっていることをそのまま話していただけです。
その流れで、定型作業の話をしました。面倒だったから自動化したんですよ、という軽い話のつもりでした。
そうしたら、こう言われました。
「それ、普通は書けることだよ」
そう言われても、あまりぴんときませんでした。
自分にとっては、ただ面倒を減らしただけの話です。特別なことをしたつもりはないし、誰かに褒められたわけでもない。書けるものだと言われても、実感がありませんでした。
価値がないと思っていたのは、僕だけでした。
自分の仕事は、自分がいちばん見えない
あとから考えると、気づけなかったのは当たり前でした。
毎日やっていることは、自分にとって当たり前になります。当たり前になったものは、もう特別に見えません。
僕は毎月その作業をしていたので、面倒な場所もどうすれば減らせるかも分かっていました。分かっているから、自分では簡単なことに見えていたんです。
でも、外から見ると違います。
その職場にいない人には、何が面倒なのかも、なぜ直そうと思ったのかも分かりません。だから、その人には新しい情報になります。
つまり、こういうことでした。
価値があるかどうかを決めるのは、やった本人ではありません。
自分では当たり前でも、外から見れば当たり前ではありません。逆に、自分がすごく大変だったことでも、外から見れば誰もが同じことをしている場合もあります。
だから、一人で職務経歴書に向かっても書けるものは見つかりにくいです。判断する側が自分になってしまうからです。
それは、頼まれていない仕事でした
もう一つ、あとから気づいたことがあります。
書けたのは、誰にも頼まれていない仕事のほうでした。
言われた仕事は、たくさんやってきました。量も多かったし、期限もありました。でも、それを書こうとすると手が止まります。
理由は単純です。なぜそれをやったのかと聞かれたとき、「言われたからです」としか答えられないからです。
自分で面倒だと思って始めたことなら違います。何が問題で、なぜ放っておけなかったのか。どうやって直したのか。全部、自分の中に理由があります。
僕が書けたものは、頼まれていない仕事でした。しかも、転職のために始めたものではありません。
今日、思い出せることが一つあります
もし今、書けることが何もないと感じているなら、探す場所を変えてみてください。
実績や成果ではなく、今の仕事で「これ、毎回面倒だな」と思っていることです。
毎回同じ手順を踏んでいる。同じ質問が何度も来る。前の工程から回ってくるものが、いつも同じところで止まっている。そういう、小さな引っかかりで十分です。
そして、それに対して自分が何かしたことがあるかを思い出します。
順番を変えた。確認する場所を決めた。次の人が困らないようにメモを残した。よく聞かれることを一覧にした。
大きなことでなくてかまいません。誰にも頼まれていないのに、自分でやったこと。それが探す対象です。
一つも思い当たらなければ、今はまだ材料がないというだけです。それが分かるだけでも、次にやることが変わります。
ただし、全部が材料になるわけではありません
正直に書くと、僕も一つ見つけたところで終わりませんでした。
面倒だから始めたことは、他にもありました。でも、そのうち職務経歴書に書けたのは一部です。頑張ったのに何も残らなかったこともあります。
違いは、あとから分かりました。書けたものには共通点があって、書けなかったものには、そのどれかが欠けていました。
その条件と、材料が見つかったあとに何をどの順番で進めるか、転職において自分の経験から分かった全てのことをこの記事にまとめました。
最後に
「たいしたことはしていません」
僕は長いあいだ、そう言い続けていました。
今になって思うのは、あれは謙遜ではなく、 判断を間違えていただけ だということです。自分の仕事を、いちばん近くで見すぎていました。
近くで見ていると、当たり前にしか見えません。でも、その当たり前は、外から見ると当たり前ではありませんでした。
今、書けるものが何もないと感じていても、それは本当に何もないという意味だとは限りません。僕の場合、あったのに見えていなかっただけでした。
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