曹操孟徳の詩—秋胡行
曹操は戦乱の中にいながら、
しばしば山へ向かう心を歌った。
泰山、華山、崑崙、蓬莱。
そこにあるのは、
地図の上の山だけではない。
人の世の争いから離れ、
真人や仙人とともに、
もっと大きな時間の中へ
入りたいという願いである。
だが曹操は、
完全に世を捨てることはできなかった。
天下を負い、兵を率い、
政を整える者として、
彼はつねに現実へ引き戻される。
この詩には、仙道への憧れと、
人間としての短い命への自覚が重なっている。
天地は長く、人の生は短い。
だからこそ、ただ嘆くのではなく、
いまある時をどう使うのかが問われている。
秋胡行
その一。
朝、散関の山に上る。
この道は、
なんと険しいことか。
朝、散関の山に上る。
この道は、
なんと険しいことか。
車は、谷に落ちる。
石の上に座り、
五弦の琴を弾く。
清らかな調べを作る。
心の中は、乱れている。
歌い、志を言う。
朝、散関の山に上る。
三人の老人がいる。
急に、わたしのそばに現れる。
三人の老人がいる。
急に、わたしのそばに現れる。
粗末な衣をまとい、
ふつうの人には見えない。
おまえは、なぜ、
そんなに苦しみ、
自らを責め、
さまよい、
ここへ来たのか、と言う。
歌い、志を言う。
三人の老人がいる。
わたしは、崑崙の山に住む。
世にいう、真人である。
わたしは、崑崙の山に住む。
世にいう、真人である。
道は深い。
得ることができる。
名山をめぐり、
八方の果てを遊び、
石を枕とし、
流れに口をすすぎ、
泉を飲む。
思い定まらず、
ついに、天へと昇る。
歌い、志を言う。
わたしは、崑崙の山に住む。
去ってゆく。
追うことはできない。
ただ、長く、心は引かれる。
去ってゆく。
追うことはできない。
ただ、長く、心は引かれる。
夜ごと、どうして眠れるか。
ただ、嘆き、
自らをあわれむ。
正しく、欺かず、
辞と賦は、それに従う。
経や伝は、そこを通り、
西から伝わる。
歌い、志を言う。
去ってゆく。
追うことはできない。
その二
泰山や華山に登りたいと願う。
神なる人とともに、
遠くへ遊びたい。
泰山や華山に登りたいと願う。
神なる人とともに、
遠くへ遊びたい。
崑崙をめぐり、
蓬莱に至る。
八方の果てをただよい、
神なる人とともにある。
神の薬を得たいと願う。
万年を期とする。
歌い、志を言う。
泰山や華山に登りたい。
天地は、なんと長く続くことか。
人の道は、そこにあって、短い。
天地は、なんと長く続くことか。
人の道は、そこにあって、短い。
世の人は、伯陽を語る。
だが、老いることを知らぬわけではない。
赤松子や王喬も、
道を得たと言われる。
だが、それを得たとは、
まだ聞かない。
ただ、長く生きることを願うのみ。
歌い、志を言う。
天地は、なんと長く続くことか。
明るい日と月の光。
照らさぬところはない。
明るい日と月の光。
照らさぬところはない。
天地のはたらきは、
すべてを整える。
尊いのは、人だけではない。
万国の土地、
すべて王の臣である。
仁義を名とし、
礼楽を栄えとする。
歌い、志を言う。
明るい日と月の光。
四季はめぐり、去ってゆく。
昼と夜とで、年は成る。
四季はめぐり、去ってゆく。
昼と夜とで、年は成る。
大いなる人は、
天に先んじても、天は背かない。
年の過ぎることを悲しまず、
世の乱れを憂える。
生も死も、命にある。
それを思い悩むのは、愚かである。
歌い、志を言う。
四季はめぐり、去ってゆく。
心を痛めて、何を思う。
楽しみは、心の向かうところにある。
心を痛めて、何を思う。
楽しみは、心の向かうところにある。
若さも、盛りも、
賢も愚も、
二度とは来ない。
時を愛し、進め。
それを、誰のために使うのか。
ただ流れ、ただ遊ぶだけでは、
何のためでもない。
歌い、志を言う。
心を痛めて、何を思う。
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
古い言葉を、今の人にも届く形で残していきたいと思っています。
応援していただけたら、とても励みになります。