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長年の謎「かみーさん」の正体が、桂歌丸師匠の落語で判明した日。

我が家では、美容室のことを「かみーさん」と呼ぶ。

「そろそろ、かみーさん行かなきゃ」
「今日、かみーさん行ってくるわ」
というふうに。

何十年も、である。

もちろん、世間一般では「美容院」とか「美容室」とか、まあ「ヘアサロン」なんていうハイカラな呼び方があることは知っている。
でも、私の脳のハードディスクの、かなり奥深い階層に「髪を切るところ=かみーさん」というデータが保存されているのだ。

これは方言なのだろうか。
それとも、うちの地域だけの特殊な呼び方なのだろうか。
夫に聞いたら「なにそれ」と言われたので、どうやら我が家だけのローカルルールらしい。

まあ、暮らしに支障はない。
だから、この謎を本気で解き明かそうなんて、思ったこともなかった。

そんな私が、最近ひょんなことから落語にハマっている。
きっかけは、漫画『昭和元禄落語心中』だ。まんまと影響されたのである。

中でもお気に入りは、桂歌丸師匠。
今までは、笑点の「生きてますか?」「お迎えが来た」みたいな、死人いじりをされているイメージしかなかったのだが、実際に落語を聞いてみて驚いた。
はきはきとして、とにかく聞きやすい。すごい。

そして今日、いつものように歌丸師匠の『髪結新三(かみゆいしんざ)』というネタを聞いていた時のこと。
物語の中で、親分さんが髪結いをしている新三という男のことを、こう呼んだのだ。

「あの“かみいい”が……」

……かみいい?

その瞬間、脳の中でバラバラだったパズルのピースが、カチン!と音を立ててハマった。

江戸弁だ。
「ひ」を「し」と発音したり、「い」と発音したりする、あれだ。
「東(ひがし)」が「しがし」になる、あれ。

つまり、「髪結い(かみゆい)」が、江戸の粋な訛りにかかると「かみいい」になる。

その「かみいい」が、長い年月をかけて我が家で独自進化を遂げた結果、「かみーさん」という、なんとも気の抜けた呼び名になったに違いない。

これだ。これしかない。

私の長年の疑問は、歌丸師匠の名演によって、あっけなく氷解した。
まさか、我が家だけで使われている謎の言葉のルーツが、江戸の町にあったなんて。

なんだか、拍子抜けするほど、すっきりした。
ありがとう、歌丸師匠。

あなたの家には、ありませんか。
他の家では通じない、謎の言葉。
その由来は、意外なところに答えが隠れているかもしれない。

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