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人工衛星の「姿勢制御」に見るライフサイクル設計

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〜8月23日 07:30

第5回の本編では、打ち上げ直後の「初期運用」における、管制室の張り詰めた空気感や、設計と運用の「リスク管理」についてお話ししました。

今回のディープダイブでは、この打ち上げ直後の運用にかかわらず、さまざまなところで何度も出てきた「衛星の姿勢制御」についてお話したいと思います。

​人工衛星の姿勢制御は、「姿勢制御系(AOCS:Attitude and Orbit Control System)」という分野となります。
以前、衛星の構造を人体に例えてお話したときに、「三半規管」と「筋肉」という風に表現した部分です。
衛星が生きている間常に使い続ける「三半規管」と「筋肉」は、衛星のライフサイクル設計に直結する重要なシステムです。


衛星の「姿勢制御」とは?姿勢制御を支えるセンサーと軌道情報

衛星が宇宙にいる理由(ミッション)は様々ですが、多くの場合衛星を「決まった方向」だったり、「向けたい方向」に向けることで成立します。
例えば、地上の画像を撮りたい衛星は、地上の「画像を撮りたい場所」にセンサーを向けることでミッションを達成します。
(でも、それなら衛星の姿勢を変えずにセンサーやアンテナだけを向ければいいんじゃ?と思った鋭い方、その疑問には後ほどご回答します!)

地上の感覚では、「単に下を向き続けて首を振るような感じじゃないの?分野なんて言うくらい難しいの?」と言う疑問もあると思います。

ただ、宇宙空間には上も下もなく、「常に地球の方に向け続ける」制御をしなければ地球はあっという間に「下」ではなく「上」にいることになります。

この点について、詳しく見てみましょう。
宇宙空間では重力がなく「姿勢を変えなければ変わらない」ことになります。
つまり、ある時に地球の方を向いていても、そのままだと衛星が地球の周りを回っているうちに地球は視界から外れ、どこかに行ってしまうことになります。

そのため、衛星は「常に地球のほうを向き続ける」という制御が必要なのです。

これは、円形の陸上トラックをぐるりと一周走る様子を思い起こしてもらえれば、なるほどと思うと思います。
トラックの中心を向きながら円形のトラックを一周しようと思うと、「常にトラックの中心に体を向ける」ように調整が必要になるはずです。
スタートと全く同じ体の向きで一周すると、最初はトラックの中心を見ていたはずなのに、だんだんとトラックの中心が横に来たり、最終的には背中側に来たりすることになるでしょう。

衛星も同じように、地球の周りの「トラック」を回る間に「中心にある地球の方に衛星の向きを変える」というアクティブな制御を、24時間365日、ノンストップで行っているのです。

このような衛星の姿勢制御を行うために、衛星は様々なセンサーで自分が向いている「向き」を測定・推定します。

そして、センサーから得た「向き」と、地上から送られてくる「軌道情報」(地球をどのような軌道で回っているのか)で精密な姿勢制御を可能にしています。
地上からの情報は、「自分が今地球の周りの「どの位置」を飛んでいるのか」を計算する情報です。

「宇宙空間でどっちを向いているのか」そして「宇宙空間のどの方向に地球があるのか」が正確にわかっているからこそ、精密な姿勢制御ができるのです。


衛星の「向き」はどう変える?トルクを作る方法

このように、単に「あっちを向きたいから」という理由だけでなく、常に姿勢の調整が必要な人工衛星ですが、人工衛星はどのように姿勢を変えているのでしょう?

答えは、「トルク」です。
トルクとは、ものを回すパワーのことです。
ここで重要なのは、「力」と、「トルク」は、似ているようで全く別物だということです。

身近な例でいうと、「ドアを開けるとき」を思い浮かべてみてください。
ドアを開けるには、ドアを手で「押す」という「力」が必要です。
しかし、ドアが実際に開くのは、ドアの根元(丁番・ヒンジ)を中心とした「回転」が生まれるからです。この、回転させる実質的なパワーのことこそが「トルク」です。

そして、トルクの大きさは「力 × 回転中心からの距離」で決まります。
ドアノブが、わざわざ根元から一番遠い「ドアの端っこ」についているのはなぜでしょう?
根元から離れれば離れるほど、小さな「力」でも、ドアを回すための大きな「トルク」が生み出せるから(=テコの原理)です。

もしドアノブが根元のすぐ近くについていたら、大人の力で力任せに押しても、ドアはびくともしないでしょう。
逆に、重いドアでも根元から遠い、「ドアの端っこ」を押すことで、より少ない「力」で開けることができるのです。

衛星の姿勢は「力」を発生させることで「トルク」を生み、制御しています。
そのために、「推進力を生むスラスター」や「回転の反力を利用するホイール」、「磁力でトルクを発生させるマグネトルカ」など多種多様な機器を搭載しています。


衛星は一生の中でいつ、どんな姿勢制御をする?: 衛星のライフサイクルを考える

ここまで、自分の向きを知る「センサー」と、向きを変える「トルク」についてお話ししましたが、これらはバラバラに動いているわけではありません。
衛星の生まれた瞬間から寿命を迎えるその時まで、その時々に合わせて「最も信頼性が高く、一番効果が高い組み合わせ」が綿密に計算されています。

特に、私が設計から運用まで担当したことのある「静止衛星」のライフサイクルを例にご紹介しましょう。

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