高度に進化したAI駆動開発は、農業と区別がつかなくなる

オープン社内報です。

このままAI駆動開発が進むと、ソフトウェア開発は工芸から農業へ近づいていくんじゃないかなと思っています。

で、これからどうなるのか…というと、「大規模農業化」が起きるのではないかと思います。いわゆる開発がアメリカナイズドされた農業みたいになってくる。

高度に進化したAI駆動開発は、大規模農業と区別がつかなくなるわけですね。


IT開発 as a 農業 


農業としてのIT開発(Development as an Agriculture)…略して、DasA。

ようは、これからの開発は

土壌を整え、種をまき、育つ条件をつくり、出来を見極め、良いものを収穫する。

感じになるかなと想定しています。

似てるんですよね、大規模農場とAI駆動開発。

土壌とは、コードベース、コンテキスト、ツール、パイプライン。
種とは、顧客課題、仕様、アイデア。
栽培環境とは、テスト、eval、ガードレール、観測基盤。

つくるのはAI。

人間の仕事は、何を育てるかを決め、育つ環境を設計し、結果を選別することになるわけですね。

なんかここでナウシカをいい感じに引用しようと思ったのですが、セリフを思い出せなかったので次に進みます。

大量に植え、良いものを残す

…で、生成コストが下がるほど、一つの案を丁寧に編集するより、複数の候補を並行して育て、良いものを選ぶ方が合理的になる。

開発ツールは、

「一つの出力を編集するUI」から、「複数の候補を比較し、選抜するUI」へ変わる。

バージョン管理には、コードの差分だけでなく、どのモデル、文脈、指示、評価を経て生まれたかという生成の系譜が加わる。

開発の生産能力も、人の数だけでは決まらなくなる。この辺が、大規模農業味ですね。丁寧に一本一本植えるのではなく、課金のパワーで解決する。

唸れトークン、轟けコンバインみたいなノリで。

一方で、どんなに設計しても、出荷量を決めるのは、評価、統合、レビュー、ユーザーからの反応を処理できるパート。で、逆にそこだけあまりレバレッジがきかないんですね。消費者はスケールしないので。

結果、生成は増やせても、正しさや価値を確認する速度は無限には増やせないパラドックスが残ります。ここにビジネスチャンスがある気がするわけです。

希少になるのは、選ぶ力

生成能力が誰でも買えるようになるほど、競争は買いにくいものへ移る。コモディティ化した生成物の値段はゼロに近づき、需要のある非生成物の価値が無限に値上がりします。(ただし、需要のない非生成物の価値はゼロです)。

何をつくるべきかを定義する力。
「良い」を判定可能な形にするeval設計。
大量の候補から価値を見抜く目利き。
固有のデータ、文脈、顧客理解。
市場へ届け、反応を得るための信頼と流通。

このあたりの価値が、AI時代はぐっとあがります。

あと収穫物を、売って流通させると。


開発組織は、農場に近づく

会社などの組織の中心には、三つの役割が残る。

土壌をつくる人。
コンテキスト、基盤、ツール、ガードレールを整える。

選別基準をつくる人。
品質、価値、安全性を評価できる仕組みにする。

最終判断をする人。
数字だけでは決められない例外と、市場に出す品質を判断する。

純粋に実装量をこなす仕事は減り、環境設計、評価、統合、運用へ仕事が移る。

これからは、コード量やプログラム本体ではなく「環境設計」できる人材に評価が移動するわけです。

エコシステム作る力を流行らせたい。


開発者は、作り手から生産者になる

で、そうなるとAIツールを使えること自体は、ただの前提。ゲームの参加費にすぎなくなる。チャッピーつかえるアタリマエ。

お給料に差がつくのは、

  • 何を育てるかを決める力

  • 良い状態を定義する力

  • AIが働ける環境を設計する力

  • 結果から価値を見抜く力

  • 特定の領域を深く理解する力

なので、10xエンジニアの意味も変わる。
同じ計算資源と人間の時間から、10倍の価値を収穫できる人がモテるエンジニアになる。

イケてるエンジニア(あるいはPM)の条件が、

人間の限られた注意力でレビューするに値する、最大の価値を収穫できる生産系をつくること。

になっていくかなと思います。

これからの開発者は、コードを書く職人であると同時に、AIが価値を育てられる畑の環境をつくる人になるのが大事。

テック業界は大規模農業の成功事例や設計について真面目に学ぶべきではないかなと思うわけです。

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深津 貴之 (fladdict) いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。