人間プレスパーツ・シミュラクラ
煤けた壁と床の目立つオフィスに隣接している工場には、使い古された辺り一面に大小の工具が突っ込まれている。この施設も一段と薄汚れてはいるのだが、人間の匂いがしないだけマシだろうか。白すぎる蛍光灯が神経に障る。
取り外したばかりの金属部品を眺め透かした彼が云う。研磨すればまだ十分に持ちます。新しいのに替えるより、その方が安く出来るしお客さんが喜ぶでしょう。
彼の眼の前には寝ぼけた目つきをする巨漢の男が居る。男は彼の言葉を聞き流した。その奥に冷たいものを宿してそうな目の色で、余計なことをするなと一瞥をくれただけだった。
彼はまだ現役と見られる部品を保管箱に詰めた。また新しい箱を調達しなければいけないだろう。
僕はもっとこの1台1台に自分のやり方を残したいというか、こうした作業をただの作業と思いたくない。いくらなんでもこのやり方は……僕の本質と違っている。こんなことをひたすら続けていたら、いつかやり方も考え方すらも歪められてしまうだろう。
男は彼が保管箱に部品を詰めている様子を見咎めた。お前はそういうことをいつも云うが、そのこだわりが何を生み出すというのだ。その箱を買う金も、仕舞う場所も会社が用意するのだ。研磨なんてしてみろ、その時間で2台目の修理も終わるだろうに。
けど……。
けどじゃない。お前はただ指示通りに動くパーツであればいい。お前がさっき仕舞った部品のようにな。何か物を言う必要はない。それに俺はお前が本当に物を考えて喋っているとは思えないよ。俺からすればそれはただの甘えというやつだよ。
僕は押し黙り、自分が金属部品になる想像をした。だが、僕は溶鉱炉に飛び込み、どろどろに溶けてあやふやになった。他の金属とも混ざり、次に外に出たときには、綺麗な日本刀になりたかったけど。
安物のプレス部品になって廃棄されてしまった。
安物のプレス部品になって廃棄されてしまった。
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