下書き2 野口さんと北里さん 続きのお話
【なんのはなしですか 短編小説】
今日子さんと巽くんの前回のお話はこちら
交換で渡す封筒は、と棚の中をゴソゴソ探す
よし、
これにしよう
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7月に新札の発行が始まり
1週間が過ぎたころ
巽さん(心の中では巽くん)から
新千円札をもらった
もらった、といっても"新札"をくれたのであって
こちらは"旧札"でお返しする
くれたときの封筒が絶妙な薄さで
その気の利くところ、さり気なさに
正直心を掴まれる
上司だったら、おっ出来るやつだな、
と思うだろうし、事実、職場では一目置かれて
バイトをまとめるリーダーの役目を任されている
ここはお返しの封筒も同じぐらい薄いものをと
棚の中をゴソゴソと探す
確かここに空き封筒があったはず
業者からの伝票が入ってきてた封筒をみつけ
よしよしとお財布にあった千円札を入れる
「 ありがとうございました 」
そういって渡した封筒を見て、巽くんは
「丸マル商店(笑)」、と軽く笑った
ああ、そういえば、と
お財布にあった千円札もどれだけの人を
巡ったか分からないぐらい古いものだった
あとから気づいて恥ずかしくなる
薄い茶封筒に入った北里さんを眺める
なんだかいろんな恥ずかしさが入り交じる
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ん、やっぱり、直視出来ない
薄い茶封筒にいれたまま、
でも、御札でも飾るかのように
棚の上に置いてふんわり眺めることにした
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休みを挟んでバイトに行く
休憩終わり 巽くんがすれ違いざまにいった
「あっ、今日子さん、お札見ましたかっ。」
「・・実は、
もったいなくてまだちゃんと見てないんです」
巽くんの顔を見れず、俯きがちに答える
せっかくの新札、"あげた"のに感想なくて
残念さが 滲み出ている気がした
ああ、なんて気が付かないのかな、私は
・・・軽く落ちこむ
それから1ヶ月、
ちらほら北里さんも普段の
生活で巡ってくるようになった
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そんなある日、
「今日子さん!」と
始業前に巽くんがやってきた
「五千円の新札はもうみましたか。」
そういえば、と
「まだ見てないですね。」答える
「いやー、今日巡ってきたんですよ。
あとで、あげますね。」
なんだか嬉しそうにいうので
「わぁ!すごいですね。
ありがとうございますー!」と返事した
休憩後、
「はい、これ。もうそのまま渡しますね。
今日もらったとこなので新札じゃないですけど
うん、折れてない、キレイです。」
なんでもコンビニでお釣りで貰って
うおー、と嬉しくなったんだとか。
どれどれ、梅子さんのホログラム、手毬もあって
キラキラと光っててとってもキレイ。
つられて、にっこりしてしまう。
「あとで交換でお返ししますね。」というと
「いや、いつでもいいっす。」と巽くん
しばらくたってから、今日は1万円をお財布に
入れてきたんだっけと思い出す
それを伝えて後日にさせてもらった
かえり道、買い物に寄って一万円を崩す
精算はセルフレジだ
どうかキレイな五千円が 出てきますようにと
願いをかける
機械からシュッと出てきた五千円は
シワひとつないキレイな梅子さんだった
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ゴソゴソと封筒を探す
なるだけ厚くて中が見えない封筒を
そのまま返すのではなく交換する
巽くんの梅子さんと
わたしの梅子さんを
同じ日の梅子さん、だけど違う梅子さん
封筒の中身をみてどんな顔をするだろう
気になるけど、
あとで確認してくださいと言おうかな
『人から巡ってきたお札は縁起がいい』
そんなおまじないはもうかけてあるから大丈夫
なんのはなしですか
<8月の 今日子さんと巽くん>でした
