路地裏キッチンカー
巽くんと今日子さんのその後の話
(朗読音声 25.9.13追加しました)
「今日子さん 」
「今日はどこに連れて行ってくれるんですか。」
「…どこに行けばいいんでしょうね。気になるお店はあるんですけど。初めてで上手くたどり着けるかどうか。」
表通りから脇道に入るとそこは路地裏と呼ばれるエリアが広がっている。時代からすっぽり抜け落ちたようなノスタルジーが残ったレトロ喫茶が目に入る。
「ナポリタンが有名なんだ。」
巽くんはロウで出来ているフォークに絡まったスパゲティを見ながら、フォークでクルクルと絡める仕草をしてこちらを向いた。
「ナポリタンじゃなくてオムライスが目当てなんですけど。夜食にも食べられると美味しそうな記事が載っていたんですよ。」
そういいながらもスマホをスクロールする。
「ほんとno+eが好きなんですね。今日子は。」
あのページはなくなってしまったのかな。アオラセグントさんの『星読み照らす』のお店の近くだったからこの辺りのはずなのに。
「ごめんなさい。オムライスのお店行きたかったんですけど。」
「ん。気にしないで。でもそろそろおなかもすいたので、今日はここでナポリタンにしますか。」
お店の中も路地裏のようで、少し狭い階段を頭をかがめるようにして半地下に降りて注文をする。
ナポリタンが来るまでの間も巽くんはメニュー表をじっくりと見ている。
「うわぁ。クリームソーダが7色だって。」
それを聞いて頭の中でソーダが透き通ったグラスのなか虹のように色が重なりあっているところを想像する。いや、それともそのうちの何色かはアイスがマーブル模様かな。チョコはちょっとクリームソーダと合わない気がするからストロベリーがいい。
そんなことを想像して「すごいですね。」というと
「ん、すごい?」といってこちらに向けてくれたメニューにはかき氷のように7色選べますとでもいうような写真が載っていた。
「この7色、かき氷のシロップかな。これ。オレンジはマンゴーとか。ブルーハワイっていったい何の味なんだろうね。ガリガリ君のソーダ味もブルーだし。ソーダの爽やかさを演出してなおかつ夏感だしたハワイなのかな。」
「でも7色あれば人目を引くし外で映えるよね。」
このところ巽くん、キッチンカーの夢がさらに色彩を帯びてきたよう。こうして一緒にランチをするのもメニュー作りのためでもある。
「今日子も横で会計するんだよ。」とお仕事モード半分、愛嬌半分のクッとした目にこちらも真剣な目線を向けてコクリと頷いたあと想像が広がる。
一緒にキッチンカーに立つ。うん。幸せだなぁ。いらっしゃいませ~なんて声を合わせて、一緒のTシャツなんか着ちゃって。あ、そうだTシャツ。そうだった。
「そういえば、コニシ商店さんもこの近くです。」
コニシ商店は巽くんと一緒にバイトをしているお店の取引業者で、ユニフォームを扱っている。
「コニシ商店、ああ、制服ほんとセンスある。ラインが綺麗でついつい目がいっちゃうもんね。」とニンマリ笑う。
「コニシ商店さんのオリジナルのデザインだそうですよ。それで真由が通っているデザイン学校の先生が手掛けたTシャツが商品になったんだって。あの真由が褒めてたからきっとすごいイイと思うの。」
「じゃあ僕たちのユニフォームもそこのにしようか。行ってみましょう。」
味が想像できるようなクリームソーダは注文せずにふたり路地裏を歩く。
ノスタルジックな何も手を入れてないようなお店から、あえてさりげなく路地になじむような佇まいにしてある新しいお店だってある。ぱっと見ただけでは分からなくて、ちょっと入りにくい気もするけど、きっと入ったら落ち着くようなそんな予感に溢れている。
「あっ、ここですね。」
周りをよく観察して、特徴をつかむのが上手な巽くんはちらっと地図と写真を見ただけですぐにお店を見つけてくれる。オムライスのお店も先に巽くんに伝えておけば良かったかな、と思いつつ、ナポリタンも美味しかったしと気を取り直す。
ユニフォームのお店だけあっていつもお客さんが賑わっているという訳ではないのか、カタログやユニフォームも置いてあるけれど何故だか大きな本棚も置いてある。デスクにはまるでデザインするかのように紙と鉛筆がおいてあり、そこにあるのは原稿用紙で、「斜陽のソフトクリーム」や「銀河鉄道のアイスコーヒー」という文字が小さくメモされていた。
「こんなネーミングのメニューを考えられるなんで、ユニフォームここにするの正解だね。」と巽くんが小声でいった。
それが聞こえたのかどうか、初めて店を訪れたふたりを意識して見ないようにしていたらしい店主がこちらを向いて「いらっしゃい。」という。意識して見ないようにしていたのではなくて、見られないようにしていたのか。
「あの、その首元の、冷たいですか。ヒンヤリしてそうですね。ちょっと触ってみたいです。」
巽くん、いきなり踏み込んだ。いいの。この展開いいの?
「ん、これかい。なんなら巻いてみるかい。」
ちょっとうれしそうにはにかみながら笑顔を向けてくれた。
「いやー、いきなり触りたいなんて。僕踏み込んじゃいましたね。路地裏初めてなんです。このお店も。新しいネッククーラーかと思いましたよ。でも、僕体温高いんで、そのヘビ君に嫌がられそうです。」
その人は店主で、コニシさんその人だった。
「意外と人の温かさが好きでこうして巻き付いているんじゃないかな。僕は一年中、女性のぬくもりを感じたいけどね。」
そんなことをいいながら、新しいデザインのTシャツを3タイプ見せてくれた。『入口』と『秘密』と『路地裏』、メンズとレディース。
それにね、とムフフと笑う。
なんのはなしですか
レインボーの7色展開、キッズサイズとマグカップ、だって発売された。鮮やかなTシャツに気分も上がる。キッチンカーのユニフォームの下見のはずが、気づけば今からペアルック。
帰り道、今日子は小さいからキッズサイズも大丈夫だなぁ。「何色着てもらおう。」なんて半分真剣で半分愛敬の眼差しだ。
7色全部揃えたら7回デートしてくれますか。ごはん食べるとこどうしよう。
「あ、コニシさんに厚焼き玉子の美味しいお店教えてもらいましたよ。今後はそこに行きましょう。」
お揃いのTシャツを着て。ふたりで。
選んだのは『路地裏』ふたりの大好きな場所が増えた。
いつか、路地裏でキッチンカーを。
なんのはなしですか
↑コニシ商店はこちらが入口
ほんとはコニシ商店にあるユニフォーム、ナース服に『変態看護師』の紫の襷と『ミスなんのはなしです科』の黄色の襷もつけてモスキートエリさん登場させたかった。患者の特性を見抜き、ピッタリの診療科とその医師·検査師までマッチングさせるシゴデキナース、でも人気者だから、ミスを独占しちゃダメよ、って襷。
カウンセラーとしてはるさんも登場させたかった。どんな長い不安愁訴だってじっくり寄り添い共感できるところを伝える、それだけで治る人続出です。
お二人はコニシ木の子さんの【創作大賞2025】の記事の中で紹介されておりますので代表してコニシ木の子さんの作品を創作大賞応援とさせていただきます。
『二十年に一度の奇跡』
─巽くんと今日子さん番外編 路地裏キッチンカー
をコニシ木の子さんに捧ぐ
フルレット
あとアオラセグンド、風の歌のナウシカさん
あめもり「『ああああ』。」さん
他たくさんの読んで下さった方
ありがとうございます。
また朗読どこかに上げますね。
恥ずかしいのでウフフです。
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このお話の追加分と朗読、記事にしました。
もう少し続きが気になる方はこちらもどうぞ
