合理性と局所的合理性の違い
はじめに
「合理的に考えろ」という言葉は、日常的に使われている。
しかし、この「合理的」という言葉は、ほとんどの場合、その前提やスコープを明示しないまま使われている。
その結果、まったく異なるものが同じ言葉で語られる。
本稿では、「合理性」と「局所的合理性」を分けて捉えることで、このズレの正体を整理する。
合理性とは何か
合理性とは、本来、ある目的や前提に対して、筋が通っている状態を指す。
ここで重要なのは、「何に対して」筋が通っているのかという点である。
合理性は絶対的なものではない。
必ず、前提とスコープに依存する。
局所的合理性
局所的合理性とは、特定の環境・評価基準・関係性の中で最適とされる判断である。
例えば、
摩擦を起こさない言い方をする
批判されにくい表現を選ぶ
場の空気に合わせる
といった行動は、その場の関係維持という観点では合理的である。
これは、摩擦コストを最小化するという目的に対して、理にかなっているからだ。
合理性と局所性のズレ
問題は、局所的合理性が「合理性」として扱われるときに発生する。
局所的合理性は、あくまで一つの前提のもとで成立しているに過ぎない。
しかし、それが普遍的な合理であるかのように扱われると、本来の目的が見えなくなる。
合理性のスコープ
合理性はスコープによって意味が変わる。
短期的合理
長期的合理
個人にとっての合理
社会全体にとっての合理
伝達精度に対する合理
摩擦回避に対する合理
これらはすべて異なる。
同じ「合理的」という言葉で語られていても、対象が違えば結論も変わる。
なぜ局所合理が支配するのか
現実の社会では、局所的合理性が強く働く。
理由は単純である。
評価が局所で行われるからだ。
人は、
目の前の関係
その場の評価
短期的な結果
によって判断される。
そのため、
その場で問題が起きないこと
摩擦が発生しないこと
が優先される。
結果として、局所的合理性が「正しい行動」として強化される。
局所合理の帰結
局所的合理性は、その場では機能する。
しかし、それが積み重なると、別の問題が発生する。
問題が可視化されない
論点が曖昧になる
ズレが蓄積する
摩擦は減るが、問題は解決されない。
これは合理ではなく、単なる最適化である。
合理という言葉の問題
ここで、「合理」という言葉が持つ問題が現れる。
合理という言葉は、正しさのように扱われる。
しかし実際には、
どの前提に対しての合理なのか
が省略されている。
この省略によって、
局所的合理性が、あたかも普遍的な合理であるかのように機能する。
本質的な違い
整理すると、違いは明確である。
合理性
→ 前提とスコープを含んだ整合性
局所的合理性
→ 特定条件下での最適化
両者は同じではない。
結論
合理性とは、単にその場で問題が起きないことではない。
それがどのスコープで成立しているのかを含めて考える必要がある。
局所的合理性は有効な技術である。
しかし、それを合理性そのものとして扱ったとき、問題の本質は見えなくなる。
合理とは何かではなく、
どの合理なのか
を問うことが重要である。
