受賞作品は入門書である
最近、賞というものに対してずっと違和感があった。
もちろん受賞作品そのものを否定したいわけではない。
ただ、そこに「価値の絶対証明」のような意味を乗せるのは、やっぱり違う気がしている。
賞は評価ではある。
けれど、それをもって「これが最も価値がある作品だ」とするのは、少し乱暴だ。
むしろ最近は、こう考えた方がしっくりくる。
受賞作品は入門書である。
そのジャンルに初めて触れる人でも読みやすい。
文法が理解しやすい。
何が面白いのかを共有しやすい。
つまり、ジャンル理解のための一冊。
そう考えると、賞の存在も少し冷静に見えてくる。
これは優劣の絶対評価ではない。
「この世界に入るなら、まずこれを読んでみるとわかりやすいですよ」
という提示に近い。
問題は、その提示がいつの間にか誘導へ変わることだ。
受賞したから価値がある。
おすすめに出たから優れている。
この認識は危うい。
可視化されていることと、価値があることは別物だ。
見つけやすいことと、心に残ることも別物だ。
むしろ本当に後から効いてくる作品や、最初は理解しづらいがじわじわ浸透する作品は、こうした賞の枠からこぼれ落ちやすい。
だから賞は、価値の証明ではなく、あくまで入門のサンプル。
そこから先は、自分で掘るしかない。
棚は提示であって、賞は誘導になりやすい。
それを知った上で読むならいい。
でも、賞を価値そのものと誤認した瞬間に、選ぶ自由は失われる。
受賞作品は入門書。
それ以上でも、それ以下でもない。
