囲魏救趙は「注意を逸らす計略」ではない 「リソース配分を操作する計略」である

三十六計の第二計「囲魏救趙」は、多くの場合、
「本命ではない場所を攻撃し、相手の注意を逸らす計略」
として説明される。
確かに結果だけを見れば、その通りである。
しかし、史実を振り返ると、斉が攻撃したのは単なる「別の場所」ではない。
魏にとって絶対に守らなければならない本国だった。

つまり重要なのは、
「注意を逸らすこと」
ではなく、
相手の限られたリソースをどこへ配分させるか
なのである。

戦力も、人材も、資金も、時間も有限である。
だから相手は常に、
「どこへリソースを割くか」
という意思決定を行っている。
囲魏救趙とは、その配分を変えさせる戦略である。

例えば魏は、
趙攻略に戦力を集中していた。
そこへ本国へ圧力をかけられれば、
本国防衛へ兵を戻さざるを得ない。
ここで起きているのは、
注意の分散ではなく、リソースの再配分
なのである。

現代でも同じ構造は数多く見られる。
競合企業が主力市場へ経営資源を集中しているなら、
あえて別の市場へ参入する。
それは弱い市場だからではない。競合が今は十分なリソースを割けない市場だからである。

また、特許訴訟や法規制、人材獲得なども同じである。
勝敗そのものよりも、
相手に開発や営業、人材、資金を別の場所へ振り向けさせることが目的になる場合がある。

つまり囲魏救趙とは、
「別の場所を攻撃する計略」
ではない。
相手のリソース配分を読み、その構造を利用して戦略変更を強制する計略
なのである。

現代では、
戦争だけでなく、
経営、マーケティング、政治、スポーツ、交渉など、
あらゆる意思決定に応用できる考え方と言えるだろう。

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