ハードウェア開発者の「居場所がない」という構造

現代は、個人開発の時代だと言われる。

しかし、その大半はソフトウェア開発を指している。

アプリ、SaaS、AIツール。
個人が開発し、公開し、収益化する事例は増え続けている。

だが、ハードウェアはどうだろうか。

材料を扱い、試作し、構造を検証し、破断を観察する。
そうしたハードウェア開発を個人で行っている例は、極めて少ない。

これは能力の問題ではない。

構造の問題である。


ハードウェアには「空白の層」が存在している

ハードウェア開発には、いくつかの段階がある。

  1. 原理探索

  2. 構造発見

  3. 試作と検証

  4. 改良

  5. 量産

革新が生まれるのは、1〜3の段階である。

しかし現代の組織は、主に4と5に最適化されている。

大企業は、既存製品の改良と量産に最適化されている。
研究機関は、制度と評価指標の中での探索に制約される。
スタートアップは、初期コストの低いソフトウェアに集中する。

その結果、構造を発見する段階を担う主体が、制度的に存在しない

という空白が生まれている。

ソフトウェアには制度があり、ハードウェアには制度がない

ソフトウェア開発者には、

開発環境
公開プラットフォーム
収益化手段
支援制度

が存在している。

個人が開発し、公開し、評価されるまでの経路が整備されている。

一方で、ハードウェア開発者には、

試作を支援する制度も、
構造探索を支援する仕組みも、
公開と評価のための経路も、
ほとんど存在しない。

これは、ハードウェア開発者が少ない原因であると同時に、ハードウェア開発者が増えない原因でもある。

大企業は創造ではなく、安定化に最適化されている

大企業の役割は、構造を発見することではない。

既に存在する構造を、

安定して
効率的に
大規模に

再現することである。

これは極めて重要な役割だが、
革新の出発点ではない。

革新の原型は、多くの場合、組織の外で生まれる。

しかし、その原型を生み出す主体を支援する制度は、ほとんど存在しない。

結果として、ハードウェア開発者は「居場所がない」

大企業には探索の余地がなく、
研究機関には制度的制約があり、
スタートアップはソフトウェアに集中し、
個人には資本がない。

その結果、

ハードウェアの構造を探索する個人は、制度的に孤立する。

これは個人の問題ではなく、構造の問題である。

しかし、革新は常にこの空白から生まれてきた

蒸気機関も、半導体も、初期は小規模な探索から始まった。

量産は後から行われる。

革新は、最初から量産の形では存在しない。

原型として存在する。

結論

現代はソフトウェア開発者のための制度は充実している。

しかし、ハードウェアの原型を探索する個人のための制度は、ほとんど存在しない。

ハードウェア開発者に居場所がないのは、能力の問題ではない。

構造の問題である。

そして、革新は常に、その構造の空白から生まれる。

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