意味を知らない人は、字を選び、意味を知っている人は、字に選ばれる

「一字褒貶」という言葉がある。

たった一文字の違いで、人を褒めたり貶したりできるという意味だ。

だから文章を書く人は、一字一句を慎重に選べと言われる。
しかし、本当に大切なのは「選ぶこと」なのだろうか。

私はそうは思わない。
意味を理解していない人ほど、
「どの字にしよう」
と迷う。

格好いい漢字。
難しい熟語。
雰囲気のある表現。
そうやって言葉を探し回る。

しかし、その選択は辞書の中で行われているだけであり、概念の中では行われていない。

例えば「難」という字。
多くの人は、
「困難」
という意味だけで使う。

しかし、
難とは何か。
天災なのか。
人災なのか。
障害なのか。
誰の意思によって生まれたものなのか。

そこまで考え始めると、「難」という一文字が持つ世界は大きく変わる。

そして、その世界を理解した時、
もう「どの字にしよう」とは考えなくなる。
他の字では成立しないからだ。

創作とは、言葉を並べることではない。
概念を理解することである。
概念が十分に理解された時、
言葉は選択肢ではなく必然になる。
だから、
意味を知らない人は、字を選ぶ。
意味を知っている人は、字に選ばれる。

AI時代になれば、言葉を選ぶこと自体は誰でもできる。
候補はいくらでも提示される。
しかし、その中から何を採用するかは、結局その人が概念をどれだけ理解しているかに依存する。
つまり価値があるのは、語彙の多さではない。
思考の深さである。

一字褒貶というけれど、
褒貶を決めるのは一字ではない。
その一字に至るまでの思考なのである。

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