精神科を離れて、今伝えたいこと
精神科の記事を書いてほしいと言われることがある。
そのたびに少し考えてしまう。
私は精神科で15年以上働いた。
たくさんの人と出会った。
たくさんの言葉を受け取った。
そして、
たくさん傷ついた。
罵倒されたこともある。
理不尽なこともあった。
怖かったこともある。
仕事帰りに涙が出た日は数えきれない。
決してきれいな思い出ばかりではない。
それでも今、
精神科で働いた時間を振り返ると、
不思議なくらい感謝の気持ちが浮かぶ。
精神科には独特の世界がある。
安全のためのルール。
事故を防ぐための制限。
守らなければならない決まり。
自分の意思ではどうにもできない
制限がある。
もちろん必要なものだ。
私もその中で働いてきた。
けれど離れてみて思う。
あのとき私は、
もっと考えられたのではないかと。
「決まりだから」
で終わるのではなく、
なぜその人はそうしたかったのか。
なぜその言葉を口にしたのか。
その行動の奥に、
どんな思いがあったのか。
もっと知ろうとできたのではないか。
もっと伝えられたのではないか。
そんなことを考える。
精神科で出会った人たちは、
どこか世間は偏見もあるかもしれない。
でもわたしは
誰よりも傷つきやすくて。
誰よりも人の気持ちに敏感で。
誰よりも優しい心を持っている人がたくさんいた。
と思っている。
だからこそ、
生きづらさを抱えてしまうこともある。
だけど世の中には、
まだ偏見がある。
病名だけで判断されることもある。
精神科に通っていると言えない人もいる。
受診をためらう人もいる。
私はそれが悲しい。
風邪をひいたときに内科へ行くように、
眠れないときに相談するように、
精神科ももっと気軽に頼れる場所であってほしい。
特別な人が行く場所ではない。
誰もが人生のどこかで、
必要になるかもしれない場所だと思う。
何千人という人たちと出会ってきて思う。
病名では、
その人は分からない。
診断名だけでは、
人生は語れない。
そこには一人ひとりの物語がある。
苦しみがある。
願いがある。
大切にしたい人生がある。
だから私は今、
精神科で出会った人たちに伝えたい。
ありがとう、と。
あなたたちが話してくれたこと。
怒りも。
涙も。
沈黙も。
精神科を離れて気づいた。
私は病気を見たかったのではない。
人を見たかったのだと。
そして今でも思う。
やっぱり私は、
精神科が好きだった。
そこには、
人間の弱さも強さも、
生きることの苦しさも尊さも、
全部があったから。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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ひろみ
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