会議をやめたら、みんなの会話が増える組織になった|スタッフを「管理」するのをやめて「推し活」してる社長のnote ep.5
この記事は多くの企業で当たり前のように行われている会議について、「なぜ時間がかかるのに成果につながりにくいのか」をひも解きながら、よりよい組織のあり方を考えるためのヒントを紹介しています。
どうも、本と失敗からしか学べない男、タルイです。
特技はやめることです。
本日のやめた内容はこちらです。

突然ですが、あなたは会議中に、
「これ、集まる必要あった?」
と思ったことはないでしょうか。
弁護士ドットコムが694人を対象に実施した「社内会議白書2023」では、社内会議中に無駄を感じた経験がある人は88.8%にのぼりました。
正確に言えば、「9割の人が会議そのものを無駄だと思っている」のではありません。
約9割の人が、会議の中に無駄を感じたことがあるのです。
この違いは大切です。
会議には意味がない、と数字が証明したわけではない。
意味のない時間が、会議の中に大量に紛れ込んでいることが分かったのです。
パーソル総合研究所は、無駄な社内会議による人件費の損失を、従業員1万人規模の企業で年間約15億円と推計しています。
正確にいうと、実際にすべての1万人企業が15億円を失っているという意味ではありません。
正社員6,000人への調査をもとにした拡大推計です。
しかしそれでも、会議の無駄が「ちょっとした不満」ではなく、経営上のコストであることは間違いないでしょう。

「会議が長い」は病気ではなく、症状
同じ調査で、無駄を感じる理由の第1位は「長時間の会議」で54.3%。
過半数でした。
ただ、私は「会議が長いこと」そのものが病気だとは思っていません。
長さは、症状だからです。
・目的がない。
・情報共有と議論が混ざっている。
・決める人が分からない。
・本音を言えない。
その結果として、会議が長くなるのです。
だから、この記事では「会議を短くする方法」は扱いません。
症状ではなく、病気の話をします。
私はサウナとマッサージの店を運営しています。
うちの店には、
定例会議がありません。
朝礼もありません。
店長もいません。
それでも、店は回っています。
会議の本質が「人が集まって話すこと」であるならば、
会議自体をやめるという乱暴な解決ではなく
定例だから集まること。
資料を読み上げること。
上の人の確認を取るためだけに集まること。
この三つをやめたのです。

ここからは、なぜそうしたのか。
問題、原因、解決策の順に書きます。
【問題】クソ会議の9つの特徴
私は前職で20年ほどコンサルタントをしていました。
アジェンダを事前に配れ。
時間は厳守。
結論を持ち帰るな。
そう叩き込まれた、よく訓練された会議マシーンです。
それでも振り返ってみると、会議の中で何かが本当に「発見」された記憶は、それほど多くありません。
多くの会社の無駄な会議には、だいたい以下の同じ特徴があります。
1.なぜ開くのか、誰も説明できない
定例だから開く。
毎週月曜日だから集まる。
議題は、集まってから考える。
会議を続ける理由はなくても、やめる理由を説明するのが面倒なので、そのまま続いていきます。
2.始まる前から結論が決まっている
根回しはすでに終わっていて、会議は「決まったことを、決まったことにする儀式」になっています。
反対意見が出ると、「その件は別途検討しましょう」。
この別途の日は、ほとんど来ません。
3.資料を最初から読み上げる
全員が文字を読めるのに、書いた本人が一行目から音読します。
情報を伝えるだけなら、文書を送れば済む話です。
小学校の国語の授業と違うのは、参加者全員に人件費が発生していることくらいです。
4.発言しない人が半分以上いる
一度も口を開かずに終わる人がいます。
その人に能力がないのではありません。
「一応、共有しておいたほうがいい」と呼ばれただけです。
この「一応」が、かなり無駄なコストです。
5.決まるのは、次の会議の日程だけ
90分話し合った成果が、
「では、続きは来週」
だけ。
会議が会議を生む細胞分裂です。
しかも分裂するたびに、なぜか参加者が増えます。
6.偉い人の顔を見て発言が変わる
上司が頷くと、賛成意見が増える。
上司が腕を組むと、急に静かになる。
議論をしているように見えて、実際に行われているのは「上司の表情の翻訳作業」です。
7.言葉だけが、どんどん立派になる
「見える化しましょう」
「認識をすり合わせましょう」
「いったん持ち帰りましょう」
中身が薄くなるほど、言葉は抽象的になります。
私の経験上、「持ち帰って検討します」は、かなりの確率で「何もしません」の丁寧語です。
8.決まったことが実行されない
奇跡的に何かが決まっても、
誰がやるのか。
いつまでにやるのか。
どの状態になれば完了なのか。
そこまで決まっていません。
そして次の会議は、
「あれ、どうなりました?」
から始まります。
9.会議が終わったあと、本音の会議が始まる
会議室を出た瞬間、廊下やエレベーターホールで、
「で、実際どう思う?」
が始まります。
これが決定的な証拠です。
本当の議論は、会議の外にあるのです。
私の偏見だと思われると困るので、数字を添えておきます。
「社内会議白書2023」では、無駄を感じる理由として
「議題が不明瞭」が44.5%
「不要な人員が多い」が33.6%
会議の課題として「発言者に偏りがある」が34.7%
「結論が出ない」が34.6%
と報告されています。
特徴1、4、5、6が、そのまま全国統計にも出ているのです。

【原因】技術で直せる三つと、直せない一つの本質
では、無駄な会議を生み出しているものは何でしょうか。
原因は四つあります。
①目的が曖昧であること。
②情報共有と議論を混同していること。
③誰が決めるのか分からないこと。
④本音を言うことにリスクがあること。
実は、最初の三つは会議術で直せます。
①→目的が曖昧なら、開催条件を決めればいい。
②→共有と議論が混ざっているなら、共有は文書に逃がせばいい。
③→決定権が不明なら、決める人を先に指名すればいい。
世の中の会議改善本に書いてあるのは、だいたいこの三つです。
そして、その通りにやれば、確かに会議は短くなります。
しかし、四つ目だけは違います。
「本音を言うと損をする」という学習は、会議術では消せません。
結論が事前に決まっているのも、半分の人が黙っているのも、部長の顔色で意見が変わるのも、廊下でしか本音が出ないのも、根っこはここです。
これを心理学では「心理的安全性の欠如」と呼びます。
心理的安全性とは、エイミー・エドモンドソンの研究では、対人関係上のリスクを取っても安全だとチームのメンバーが共有している状態を指します。
仲良しで、誰も反対しない状態ではありません。
分からないと言える。
間違いを認められる。
上司の意見にも反論できる。
そのための安全性です。
三つは技術で直せて、一つだけ技術で直せない。
だから私は、この四つ目が「本質」だと考えています。

心理的安全性は、「担保しよう」では担保できない
「アジェンダやファシリテーションを改善すればいいのでは?」
という意見は、半分は正しいと思います。それは三つの原因には効くからです。
しかし、四つ目には効きません。
「何でも言ってね」と上司が宣言すれば、心理的安全性は生まれるでしょうか。
生まれません。
生まれるわけがない。
その上司が人事評価を握っている限り、部下の発言には審査が残ります。
部下は上司の表情を翻訳し続けます。
たしかに腕のいいファシリテーターは、発言の量を増やせます。
でも、発言の中身を本音にすることは、できません。
本音かどうかを決めているのは、司会の腕ではなく、その場の力関係だからです。
つまり、心理的安全性は施策ではなく、関係の構造の結果です。
評価する者とされる者という縦の関係を残したまま、安全だけを後付けすることはできません。

病気の正体が構造なら、処方箋も構造になります。
【解決】管理をやめ、構造を整える
私の答えは、こうです。
管理をやめる。
すると、発言に審査がなくなる。
審査がなくなると、安全が構造的に生まれる。
安全が生まれると、雑談がそのまま本音になる。
雑談が本音なら――
会議そのものが「要らなくなる」のです。

お手本にしたのはAmazonの会議
会議をやめるのにお手本にしたのはAmazonの会議というのは矛盾ではなく、第3の解だからです。
これはAmazon創業者ジェフ・ベゾスの有名な言葉です。
"I like a crisp document and a messy meeting."
(私は、整理された資料と、散らかった会議が好きだ)
Amazonでは、会議でPowerPointを使う代わりに、文章で構成された最大6ページのメモを用意し、会議の冒頭で参加者が黙読します。
全員が同じ情報を読んでから、議論を始めるのです。
大事なのは、Amazonが会議をなくしたわけではないこと。
情報を一方的に伝える時間を減らし、その場でしかできない質問、反論、判断に時間を使う。
散らかった議論、つまり誰もが遠慮なく口を挟める議論とは、心理的安全性が担保された議論の別名である。
と私は考えました。

この会議システムのポイントは資料を徹底的に整えるから、議論は安心して散らかれるのだと考えます。
この順番を、うちの店の規模でやるとどうなるか。それが次の五つでした。
前提:業務委託だから会議ができない、わけではない
その前に、一つ整理しておきます。
うちの施術者は、雇用されている従業員ではなく、それぞれが独立した事業者として店と業務委託契約を結んでいます。
もちろん「業務委託なら、会議に参加してもらってはいけない」という法律はありません。
会議への参加を求めたという一つの事情だけで、直ちに雇用や偽装請負と判断されるわけでもありません。
厚生労働省は、契約の名称ではなく、仕事を断る自由があるか、業務の進め方について具体的な指揮監督があるか、時間や場所を拘束されているかなどを、個別に総合判断するとしています。
ただ、毎週決まった時間に集め、参加を事実上断れなくし、業務の進め方を細かく指示する。そのような関係を積み重ねれば、独立した事業者という契約と、実際の働き方がずれていきます。
思想として管理をやめたい私と、法律として指揮命令できない業務委託。
この二つは、同じ場所を指していたということです。
ステップ1.事実の共有は、すべて文書へ
予約、売上、口コミ、キャンペーン、店舗の変更事項。
あとから確認できる情報は、口頭ではなく文書に残します。
うちではグループLINEで共有してます。
口頭だけで伝えると、聞いた人と聞いていない人が生まれます。
文書なら、自分のタイミングで読み返せます。
同じ説明を何度もしなくて済みます。
人間の記憶ではなく、共有された記録を土台にするのです。
ステップ2.判断基準(クレド)を言語化する
すべての判断を店主に確認しなければならない組織では、店主の処理能力が店の上限になります。
そこで、迷ったときの判断基準を文章にしています。
何を大切にするのか。
お客様にどう向き合うのか。
どこまで自分で決めてよいのか。
何だけはしてはいけないのか。
土台を共有したら、あとは各自が考える。
構造は整える。人は管理しない。
これが、うちの基本方針です。

ステップ3.雑談と相談を増やす
会議をなくすと、会話まで減ると思われるかもしれません。
実際は逆です。
定例会議がないぶん、必要なときに、その場で相談します。
「最近、この予約枠が埋まりにくいね」
「このクーポン、分かりづらくない?」
「このやり方のほうが、お客様は楽かも」
こうした雑談から、店の改善は生まれます。
ただし、お願いをするときは、その場で返事を求めません。
「少し考えてみて。難しかったら断って大丈夫」
で終えます。
断る余地があるから、相談は命令になりません。
そして、発言を評価する人がいないから、雑談はそのまま本音です。
会議室の外の廊下でしか話せなかったことを、最初から廊下で話している。それだけのことです。

ステップ4.会議を開く「条件」を決める

会議を全面禁止しているわけではありません。
緊急事態への対応。
複数の専門家による重要な判断。
利害が対立している人同士の調整。
文章では伝わりにくい感情やニュアンスを扱う対話。
こうした場面では、同じ時間に集まって話す価値があります。
問題は、集まったほうがよい問題と、集まらなくてもよい問題を区別せず、全部を会議にしていることです。
だから、同時に話す価値があるときだけ、集まります。
たとえば、
複数の人の利害がぶつかっている。
文章の往復では誤解が増えそう。
緊急性があり、その場で判断する必要がある。
逆に、事実を知らせるだけ、一人が決めれば済む、文書にコメントすれば終わる内容では集まりません。
開く場合も、最低限、次のことを先に決めます。
何を決めるのか。
誰が決めるのか。
誰の情報が必要なのか。
終わったあと、誰がいつまでに何をするのか。
ここが書けないなら、まだ会議を開く段階ではありません。

ステップ5.AIを、情報の整理役にする
売上の集計、予約傾向の整理、口コミの分類、文章の要約。
情報を集め、見やすく並べる仕事は、AIがかなり手伝ってくれます。
Amazonのメモをうちの規模に置き換えるなら、AIがまとめたA4一枚です。
ただし、AIに任せればすべて解決するわけではありません。
文章を書く過程には、
「自分は何を根拠に、何を言おうとしているのか」
を考える機能があります。
最初から最後までAIに丸投げすると、文章は整っていても、本人が何も考えていない資料が出来上がる危険があります。
だから、事実の整理はAIに手伝ってもらう。
最終的な解釈と提案は、人間が書く。
お客様やスタッフに関する情報の取り扱いも、人間が責任を持つ。
いまのところ、この分担がちょうどよいと考えています。

まとめ:会議をやめたら、会話が増えた

会議は、悪ではありません。
集まって考えることにも、人と人が直接話すことにも価値があります。
問題は、会議を開くこと自体が仕事になってしまうことです。
目的がなくても集まり、
発言しなくても座り、
決まらなくても次の日程を押さえる。
そんな儀式に、人の時間を差し出す必要はありません。
うちがやめたのは、
会話ではありません。
相談でもありません。
意見の違いでもありません。
発言が審査される場を、やめました。
すると不思議なことに、必要な会話だけが残りました。
9割の人が無駄を感じる会議。
その正体は、心理的安全性が担保されていない場でした。
そして心理的安全性は、会議術では作れません。
管理をやめた分だけ、生まれます。
つまり、会議をやめたのではない。
管理をやめたら、会議が消えた。
そして、会議が消えたぶんだけ、雑談と相談が増えたのです。

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