海岸林概論➀(井上執筆#2)
こんにちは。井上です。
今回から数回にかけて
①海岸林の造成方法
②海岸に砂が飛来する仕組み
③津波に強い海岸林のあり方
からなる「海岸林概論」をお送りいたします。
どうぞご覧くださいませ。
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①海岸林の造成方法
今回から取り上げる海岸林は日本ではかつてから海岸風景の一要素として認識されているとともに、周辺住民にとって松葉掻きによって燃料利用としての里山の役割の一翼も担ってきた。
また江戸時代以降は『森林荒廃時代』と呼ばれるほど上流の山間開発が活発となり、花崗岩はげ山の増加により土砂が風化・下流に流出する事例に起因して海岸からの飛砂が増加し、防風林として幕府規模での海岸林整備が進んだ。
現在景勝地として歌集で詠まれている海沿いの松も、多くはこのころに防風林として植えられたものが多く、海岸林は日本人に多様な機能を認められ、なくてはならない存在なのだ。
まず、海岸林の機能の発揮の仕方について説明する。
海岸林という字面からもわかるとおり、樹木の集合体を一つの塊として、機能性を最大限発揮することができる。それは海岸沿いにただ植えればよいということではない。
以下は神奈川県茅ケ崎市しおさいの森の海岸林を模式的に示したものである。

茅ヶ崎海岸の事例では、海岸に一番近いところに最もレベルの高い海岸砂丘を造成し、その直後に砂防柵を設置している。その後沿岸道路を挟み、また砂防柵が設けられた後に灌木(3メートル以下の木本植物、この場合はマサキ)が植えられ、その後にクロマツ林が造成されていた。
それは地形改造や多種多列な樹種植栽によって真南からの防風に注力した海岸林設計がなされているのだ。近代の海岸林造成は地形改造とともに行われることが多い。
茅ヶ崎海岸はいわゆる湘南と呼ばれる神奈川県南部に位置している。羽田空港でよく北風ルート、南風ルートとよく聞くように、東京湾は主に南風と北風が交互に発生する気象特徴がある。
よって当対象地においては海風は南風として、海岸線に対して垂直に受けることとなるのだ。
仕組みを説明すると、南から吹いた海風(模式図では右から)は盛り上がった砂浜海岸に飛砂を堆積しながら減風する。海岸砂丘を超えそうになった砂は防砂柵にとって捕捉されるのだ。

そして砂がある程度抑制された海風は海岸林に衝突するが、この場合もしクロマツ林(高木)だけだと防風効果は十分に発揮されない。なぜなら防風効果を発揮する樹木の部分は樹冠(樹木の緑の部分)だからだ。
クロマツは塩害に強く貧栄養な土地でもよく育つが、高木種であるからこそ、枝下高(地表から最も下の枝までの高さ)の隙間から風の侵入を許してしまいかねない。よってクロマツの最前線に塩害に強いマサキ(低木)を植えることで、多種を駆使して一つの塊としての防風機能を最大化しているのだ。

ちなみに、マサキの前に設置されている防砂柵(上の写真では左側の柵)は海風を物理的に防止する役割(飛砂防止)だけではないと考える。
それは海岸林が育成できる基盤を整える役割である。
その結果、
➀海風からの種多様性保持
②樹木による防御力の最大化
③土壌の健全化(森林土壌の醸成)
が期待することができる。
この柵のように、自然の力に任せて災害防止を図る事業いわゆる【治山事業】については、機会を改めてまた説明することとする。
つまり、土木構造物による自然への対抗ではなく、時に地域の人にとっての里山として、時に美しい海岸風景の一部として、時に自然物による環境負荷の少ない塩害被害からの守護神として、沿岸住民にとっての拠り所なのだ。
最後に今回クロマツだった高木海岸林についての地域ごとの特色を簡潔に箇条する。
⚫️本州・四国・九州
◯砂浜海岸
・クロマツ - 日本の海岸林の圧倒的多数
・アカマツ - クロマツとの混交林として
→大半は江戸時代以降に作られた人工林
◯磯浜海岸
→平地での自然植生と同じ
・東北地方以北 - 落葉広葉樹(カシワ、ケヤキ、ミズナラなど)
・本州中央部以南 - 常緑広葉樹(タブノキ、スダジイ、ヤブツバキなど)
※沖縄島ではリュウキュウマツ(天然林)やモクマオウ(人工林)
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ご覧くださりありがとうございました。
次は【海岸林概論②】として「海岸に砂が飛来する仕組み」についてご説明します。
どんなことでもお気軽にコメントお待ちしております!!それでは次回もお楽しみに!!
【参考文献】
太田 猛彦,森林飽和 国土の変貌を考える,NHKブックス,2012.
