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#236[星夜読書]崔先生のげんこつ,支援学級の子,6年のボクら[日記]

6年に進級すると1年生のお世話に行く習慣で、支援学級を担当しました。人生で最も成熟していた人間関係、同級生たちとの思い出です。

(約 4,600字、書き下ろし、2時間)


はじめに

私たちのクラスは、その後の人生でも類を見ないほど、心と行動が成熟していました。子どもらしい無邪気な面を持ち合わせながら、5年から担任の「山川先生」の在り方がよい影響をもたらし、旧友とは会う度に、先生とクラスの良さを再確認するほどです。


そんな私たちにも、子どもらしい「ある事件」がおきました。クラスのとある男子と、障害のある子との間の、クラス全体を揺るがす「大事件」です。

※ 登場人物は全て仮名です。


1. 6年に進級、障害のある子とのふれあい


強度行動障害、知的障害の子たちと朝のあいさつを交わし、一緒に遊んだり、笑ったり。彼らの緊張がほぐれて、笑顔になっていく。
この交流は、かけがえのない経験となりました。


それ以前にも、障害のある子と接したことがありました。2人とも上級生で、家の方向が同じ。

一緒に下校するように、周囲からきつく言われたものの、新しい環境になじむのが苦手、相手は上級生という不安。意思疎通も上手にできませんでした。


筆者は当時、まだ1年生。引越したばかりの土地と、新しい仲間。相手と自分だけという緊張感と焦燥感でいっぱい。

どうしていいか分からない気持ち、うまくコミュニケーションの取れない相手、上級生なのにどうして? という混乱。障害のある子と初対面でした。


春とはいえ日が暮れるのが早く、送り届けたあとは、親御さんが不在で、鍵を自分で開けて家に入る上級生のことが心配で、不安で、重圧でいっぱいでした。

更に、暗い中を1人で帰る必要があります。何が起きたのか、どうしてこうなったのか。
訳も分からないまま、自然とこのお役目から降りることに。ホッとした反面、失望感もありました。


今度はちゃんとしよう。
その機会が6年で巡ってきました。やはりどう接していいのかと戸惑うだけで、ほとんど何もできなかったような気がします。
リーダーシップのあるグループを中心に交流が展開されましたが、赤ちゃんのように接してしまいます。


1年生を過度に甘やかしてしまい、発達に大きく影響してしまうと知らされ、山川先生を中心に「してはいけないこと、どうしていくか」をクラス全体で話し合いました。


2. 支援学級とは?(旧称: 養護学級)

支援学級は低学年と高学年の2クラスで、高学年には強度行動障害と、ダウン症の子がいました。

2人の様子は、1人は何かの拍子に突然立ち上がり、大きくジャンプしたり、大声を出したりする子。
もう1人は駆け引きなどの難しいコミュニケーションや複雑な計算は苦手そう。愛嬌があって明るく、サービス精神が旺盛で、思いやりに溢れた子でした。


支援学級の「さい先生」は私たちの入学からしばらくして赴任して来られた先生で、よく知らないけれど穏やかで優しい先生、という印象でした。

いつも温和で、健常の子も障害の子も、どちらにも分け隔てなく接する先生。
怒鳴りつけたり、大声を張り上げることもなく、誰もが一目置く、穏やかで信頼のある先生でした。


3. 朝、クラスが凍りついた「事件」とは?

ある朝、とんでもない第一声が飛び込みました。

崔先生が、宮永くんにゲンコツをした

一斉にドアの方を向き、その子に注目します。
宮永くんはいま、山川先生と話していると。


あの崔先生が? ゲンコツって? どういうことなの?皆、ざわめき、一瞬で凍りつきました。

宮永くんは低学年の頃は、からだも小さく、気弱で内気になりがちでしたが、高学年ではのびのびと闊達に遊んでいたように思います。決して、いたずらや悪さをする子ではなく、大人しい印象の子です。


教室全体に激震を走らせた事件の概要はこうでした。


いつも通り、支援学級で朝の活動。
その日は宮永くんたちの班で、高学年を担当していました。強度行動障害の子に、いたずら心で教えてしまった言葉が、問題になりました。



「おちんちん!!!」


男の子なら、誰もが言う言葉ですね。
大人の女性なら、自分の子と一緒に言えるまで時間のかかる方もいると思います。

強度行動障害の子は、進藤しんどうくんといいます。
彼がこの言葉を連呼して、教室中を飛び跳ねて回っているというのです。


始めは、いつどうやってその言葉を覚えたのか。
先生方も戸惑ったようです。家庭では教えていなかったんだと思います。どうやら数日かけて、誰かが教えたらしいとなり「どうして覚えてしまったのか」を、ようやく探し当てたようでした。


「おちんちん!」

「おちんちん!!!」


このあと何日かして筆者の班になり、確かに言っていました。記憶に刻まれてしまったんですね。


その後、崔先生が根気よく、何ヶ月もかけて進藤くんがこの言葉を口にしないように導いたようです。


4. もし、あなたならどうする?


もし、通学や通勤で、この言葉を口にする障害のある方と、その介助者が電車に乗り合わせたら。


私たちは、どんな気持ちになるでしょうか?

近所で暮らすなら、同じ学校で交流があったら。

何ができるでしょうか。
ご本人に、保護者の方に。


朝の教室でクラスメイト達は、一瞬でその後の想像をして顔が青ざめ、背中が凍りつくほど、考えの及ぶ子ども達でした。現場を見ていない子も、筆者が目撃したことと同じ想像を。みんな、したんだと思います。


「なんてことを教えたんだ…… 」


「大変なことをした」


「どう償えばいいんだろう……」


しばらくして山川先生と、宮永くんがきました。
宮永くんは途中まで崔先生に付き添われていました。
彼の肩からそっと手を離し、やさしく送り出します。

崔先生が、私たち6年の階にいるのは異例中の異例。隣のクラスも少しざわざわしていたかもしれません。


5. 先生のお話、子どもだからこそ学べたこと

宮永くんが席に着き、山川先生が静かに話し出します。支援学級でのこと、強度行動障害の特徴と説明、進藤くんの様子の3点です。


小学校の先生って、本当にすごいですね。

必要なことだけを手短に。答えを安易にひけらかさずに、子ども達に考えさせること。


何がどういけなかったのか、宮永くんを過剰に責めたり、吊り上げたりすることなく、障害の特性を踏まえた相応しい行動と、今後どうしていくか。

この2つに絞沿って、話が進められました。


まず、交流そのものは温かくよいものであること。

宮永くんたちがいたからこそ、進藤くんは心を開き、笑顔が増えたこと。私たちとのコミュニケーションが、よい影響、刺激になっていること。

宮永くんたちだからこそ、進藤くんが心を許して、少しずつ周りを信頼したのではないか。環境になじみ、落ち着いた環境で学ぶ大切さについて
(進藤くんは他県から、中学年以降の転校生)


2つ目に、進藤くんと私たちとの違い。同じ学年の彼の判断力と理解力。よくない言葉を知った時に、自分でどれだけその言葉を口にしないでいられるか。相手のチカラを想像すること、言葉を選ぶ大切さ。


最後に、進藤くんから信用を得て、積み重ねること。それが台無しになると、私たちが困ることにもなる。
大切な関係を崩すのは一瞬だということを、この件を通じて、折に触れて考えることになりました。


ここで、みなさんと一緒に考えます。

崔先生のげんこつは、暴力や間違いでしょうか。
それとも、必要な「叱る」であり、愛情でしょうか。

筆者は、暴力とは思いませんでした。
一概に賛成はできませんが、状況や先生同士や、宮永くん、私たち同級生との信頼関係によると思います。

そのことを、他のクラスとその保護者を含めた、うちのクラス以外の方々に分かってもらうのは、かなり難しいと思います。

宮永くんの頭も心も、痛かったと思いますが、同じくらい私たち同級生の胸にも刻まれました。

ものごとの分別という、
社会人になってからは学べない、特別な宝物です。


6. その後、大人になってから……

筆者はその後、視覚障害の方とご縁がありました。

見えやすさ、見えにくさ。視認性の高め方、視覚に頼りすぎない工夫を、ご本人や周りと考えながら、障害の有無が影響する、しないを判断し、協力して仕事を進めることにつながりました。

子どもの頃の体験を派生して、より深く、よりよく考える習慣が、特段の偏見や差別なく、当たり前として自然とできるようになることに繋がると思います。


相手に「配慮」という圧を与えずに、矜持を尊重しつつ、障害がある部分を見たり、見なかったり。


同じ人間であるという事を、強固に念頭に置き

柔らかく、楽しく、時には厳しく接すること。
(厳しく = その人の不利益を、根気よく伝えること)


筆者は正直、進藤くんにうまく話しかけられないでいました。男の子同士、同級生同士はいいものだと未だに思います。

確かに、宮永くんと進藤くんとの間には、絆があったと思います。男同士の、子ども同士の温かい友情が。

宮永くんが根気よく育み、育ち、成長した絆です。
筆者にも、他の子にもできないことを、宮永くんはできたと思うんです。その事を大切に見ていた先生たちが、素晴らしかったと思います。

クラスメイトの中に、宮永くんを責めたり、蔑んだりする子はひとりもいませんでした。


この経験が、神経発達症(発達障害)やアサーションへの興味に繋がり、仕事にも役立てる契機になりました。


7. 読者のみなさまと考えたいこと


🍀 宮永くんは、げんこつをされてどんな気持ち?
🍀 あなたが宮永くんなら、進藤くんとどう遊ぶ?
🍀 進藤くんの親なら、周りの人に何をしてほしい?
🍀 進藤くんに、あなたの立場なら何ができそう?
🍀 同僚が進藤くんの親なら、仕事をどう協力する?
🍀 もし、宮永くんに注意するなら何と言う?

📖 崔先生は、なぜ「その言葉」を止めさせましたか?
📖 崔先生はどうしてげんこつをしたと思いますか?
📖 げんこつをした時の、崔先生の気持ちは?
📖 げんこつするまでに、何を考えどう考慮した?
📖 あなたのクラスで起きたらどう思いますか?
📖 崔先生のげんこつに賛成、反対、ご意見は?


あなたが進藤くんの同級生、他学年、近所の子、街で見かけた人、自分の子、友達の子、自分の生徒……。

時々、思い出していただき、それぞれの立場で、さまざまな視点を持つヒントになり、暮らしにお役立ていただけましたら幸いです😊


この場を借りまして担任の山川先生と、
支援学級の崔先生に、厚く御礼を申し上げます。

先生方、どうもありがとうございました。

<了>

※ プライバシーに配慮し、エピソードには架空の設定を混ぜて構成しました。何卒、ご了承ください。

※ 児童の呼び方は、筆者の記憶のまま、当時の情勢に沿い、使用しております。予め、ご了承ください。



みんなのフォトギャラリー

今回は、Geminiで生成しました。

白黒の水彩画風に、右手の握りこぶしと白い背景
1枚目
普通に描いたら、想定より力強かった
コーラルピンクとクリーム色のグラデーションの背景に、右手の握りこぶしの絵
2枚目
コーラルピンクの背景指定
手をこの形に丸めてみて
逡巡、後悔、決意
何だろう……?



あとがき

久々に、4,000字を超えてしまいました。
削れるエピソードは多数ありますが、熟考の上、思い出のひとつとして、記すことにしました。

記事の分割も検討しましたが、一貫性を保ちたく、
目次を採用し、1本の記事のままとしました。

構想、数十年。
やっと、言葉になりました(笑)

筆者は、就学前と低学年時に暴力や体罰について強いできごとがありました。それでも、今回の先生たちのことは、とても信頼しています。

これだけの長文をお読みいただきまして、
誠にありがとうございます。

それではまた、次の記事でお会いしましょう!


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久藤 あかり | はじめまして! スキ、コメントが1番うれしいです。私の記事を元にあなたの記事を書いてもらうのも大歓迎!心が動く言葉はありましたか?ご感想お待ちしています😊