プレイヤーから見たディーラーと、ディーラーの実態 20250815ポーカー話

Shuffle up and deal, れくです。
今回は表題の通り「プレイヤーから見たポーカーディーラー」について、筆者が主宰するポーカーサークル「Wheels」の公式声明として発表します。
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営利ディーラーへの不満

近年、都市圏のみならず地方においてもアミューズメントポーカールームが多数開業しており、大会も全国各地で頻繁に開催されるようになりました。
それに比例して、ディーラーやフロアなどポーカー業に関わるスタッフの需要も高まっています。
一方で、熟練のポーカースタッフやポーカースタッフを教育する養成機関の供給不足ないし不在が現状として有り、各店舗や大会は技術や経験の不足するスタッフを営利の稼働に供用せざるを得ない状況となっています。
それらのスタッフによるサービス提供を受けたプレイヤーが「正規の料金を支払って参加したゲームで、正規の報酬を受け取っているスタッフによるサービスがその程度とは何事か」と不満を抱くことは想像に難くありません。これはポーカー業に限らず広く一般に「プロフェッショナルとしてあるべき姿との乖離に対する不満」であり、顧客として当然の反応でしょう。
理想論として、ディーラーならゲーム進行を、フロアなら円滑なイベント進行および的確な裁定を熟せる最低限の能力を備えていないスタッフは、正規料金を支払っている顧客の前に出るべきではありません。その水準に達するまでは自己研鑽やスクール等での教習、非営利活動、社内研修を通じて訓練を行うか、客前に出るならせめてその部分は非営利(フリーロールイベントやレーキフリーゲームなど)であるべきです。
現実論として、最低限の能力を備えていないスタッフを正規の顧客の前に出し、あろうことか重大なミスやエラーを犯し顧客に不利益を与えることは要員計画や調達計画の瑕疵、企業理念の欠如と言わざるを得ずビジネスとしては失敗です。そのような状況で「営利活動」を行うべきではありません。

これらの論を述べたところで、プレイヤーの不満は解消しません。ですが、それを卓内で直接ディーラーに叱責したり、陰口を叩いたり、SNSへ晒したりしたところで何一つ解決も改善もしません。ディーラーはプレイヤーにゲーム進行を提供しますが、以前の記事で述べた通りプレイヤーはディーラーの上司ではなく、プレイヤーの指摘や指示によって物事を判断し行動することはディーラーの業務ではなく権限もありません。不満や意見は店舗および大会の責任者へお伝えいただきますよう、お願い申し上げます。

プレイヤーからディーラーへの転向の是非

ポーカーゲームを業として行い多くの時間や資金を費やしてきた熟練プレイヤーはしばしばディーラーやフロアと接点を持ち、また多くのプレイヤーやスタッフを観察してきた経験から「自分でもディーラーができるのではないか」と考えがちです。
そして、特に専業プレイヤーを経験した人は適応力や行動力、状況判断に優れていることから、実際にディーラー業への転向を行いがちです。
しかし、これは多くの場合で誤った判断や行動となりがちです。その理由として先述の通り「最低限の能力を備えていないディーラーはプレイヤーの前に出るべきではない」ということ、そして「最低限の能力とは何であるかを過不足なく理解できてはいないこと」が挙げられます。
このことが発生する理由は、次章で詳細に解説します。

ディーラーの真の業務

以後の話を便利に語るために、本題からは逸れますが次のような概念を導入します。
多くの方には馴染みが無いと思われますがインターネットの仕様書とでも呼ぶべき「RFC(Requests For Comments)」という文書群が存在します。筆者はIT技術者でもあるので紹介するのですが、「こんなものがあるんだ」くらいに思っておいてください。
その中のRFC 2119およびRFC 8174から「仕様の強制力を表す助動詞」を引用し、「ディーラー業務の分類」を下記のように定義します。

  1. しなければならないこと("MUST", "REQUIRED", "SHALL")

  2. するべきこと("SHOULD", "RECOMMENDED")

  3. してもよいこと("MAY", "OPTIONAL")

  4. しなくてもよいこと("MAY NOT")

  5. 避けるべきこと("SHOULD NOT", "NOT RECOMMENDED")

  6. してはならないこと("MUST NOT", "SHALL NOT")

RFCに限らず一般的に英文はこのように書かれていますので、この分類を頭の片隅においた上でTDAルール英語版を読むとディーラーやフロアの業務について解像度が向上します。

ここで重要なのは、プレイヤーから見えるディーラーの業務は原則的に上から3つだけであり、真に重要な、最低限として求められる要素が下から2つに多数含まれているということです。
このことが「プレイヤー視点での最低限のディーラー能力に関する過不足のない理解」を妨げます。なぜなら、熟練したディーラーほど客前では下2つの要素をエクスポーズもショーダウンもせず、プレイヤーにその存在を認識させる機会を与えないからです。
したがって、これらの情報や知識を得るためにはプレイヤーとしてディーラーを観察するだけでは不十分で、専門の教育や情報を取り入れる必要があるのです。
ディーラーとして上手くなればなるほどプレイヤーから意識されなくなり作業や手技にも注目されなくなる、まさに黒子です。そして多くのポーカーディーラーは「黒子であるべき」という信念を持って日々の研鑽や営業に臨んでおり、それを喜びとしているのです。

これこそが、プロのディーラーをプロフェッショナルたらしめる肝腎要なのです。そのため具体的な業務や要素の列挙についてはディーラーおよびフロアとして営利に直結する内容であり無償で公開できる範囲ではなくなってしまうため、本稿では割愛します。

ディーラーとフロアの関係および業務分担

とはいえディーラーも人間ですから、ミスやエラーは必ず発生します。
それが「してはならないこと」に該当するものであった場合、取り返しのつかない事態に発展します。
ところがそれではゲームが進まなくなってしまうので、この「取り返しのつかない事態に折り合いをつける業務」を担当するのがフロアパーソンであります。
したがって、ディーラーは「してはならないこと」や「避けるべきこと」をやってしまった場合、直ちにフロアを「呼ばなければなりません(MUST)」。
ディーラーには責任がない代わりに判断する権限も与えられていません。判断はフロアの仕事です。これが「ディーラーとフロアの関係および業務分担」であります。

ギブアンドテイク

ディーラーになって初めてわかる「しなければならないこと」や「してはならないこと」は想像を大きく上回るほど多数あります。そして、それら全てを知識として備え、手技として行うことができ、プレイヤーの前で実践できることが、求められる「最低限」ということになります。
一方で、高水準の専門技術が要求される割に報酬はそこまで高額ではなく、日本の文化からチップももらえず、上手くなればなるほど褒められもせず感謝もされず、性別や容姿ばかり注目され特に男性にとっては非常に不利な、総じて不遇で報われない仕事です。現在の状況は、ギブアンドテイクが在るべき均衡から著しく乖離していると言わざるを得ません。

ここまで読んでいただいた方の中には「これからディーラーになりたいけど思ったより大変そうだな」と感じた方もいるかと思われます。
実際その通りで、同じ努力をするならコストやリスクに対するリターンが多く見込める職業は他にたくさんあります。
それでもこの仕事を営利業務として、ひいては非営利活動として行うことができているのは、先述した「黒子で居ることの喜び」であったり「プレイヤー達が安心して安全にポーカーを楽しんでいることを間近で見られる喜び」といったやりがいがあるからです。プレイヤーおよび店舗・大会経営者各位におかれましては、現場スタッフのやりがいに甘んじて搾取的な扱いをするのではなく、正当な敬意と応分の対価で報いていただきますよう、業界の端くれとしてお願い申し上げ、本論の締めとさせていただきます。

それでもディーラーになりたい

「それでもディーラーになりたい!」と思っていただける方向けに、簡単なロードマップをご紹介します。

1. 信頼できる情報源の確保

誤った知識や誤った前提は、そこから先の訓練や得られる成果を全て誤ったものにしてしまいます。たとえば、漢字練習で間違えたまま書き続けても正しい漢字を覚えられないのと同じです。
入り口でつまづかないためにも、まず信頼できる情報源を探しましょう。
情報化のすすんだ現代社会においては、無償で手に入る範囲でも扱いきれないほど多くの情報が得られます。それらの中には正確で有用な情報も確かにある一方で誤ったものや不正確なものもありますが、真偽の区別がつけられるのであれば十分です。
自信のない方は、身近なポーカー業関係者のうち信頼できる方を探し、教えを乞うという方法もあります。個々人の関係性に大きく依存するため誰にでも取り得る手段ではありませんが、そういった方法もあることを知っておくと良いでしょう。あるいは、信頼できる人を知っていそうな広い人脈を持つ方にお願いし、紹介してもらうのでも構いません。
それも難しい方は、お金を払ってカジノスクールや講習会に参加しましょう。少なくない費用がかかることと当たり外れがあることが難点ですが、誰にでも平等な機会が提供されており、かつ一定の確実性が見込めます。

2. 正しい知識と手技の修得

先に挙げた6分類に基づき、正しい知識と手技の修得に努めましょう。このとき、「最初に」正しい知識や手技、そのメカニズムや構造に触れることがとても重要です。知識も手技も、後からアップデートし矯正することはとても大変です。そのため、最初が肝心です。

3. 弛まぬ自己研鑽や研修

知識や技術、メカニズムを習っただけでは実際にできるようにはなりません。
基礎的な手技とされる「シャッフル」「ピッチング(スライディング)」「チップハンドリング」「チップカウント」は、練習の繰り返しによってのみ上達します。可能であればカードとチップとマットを自宅に用意し、毎日少しでも触るようにしましょう(RECOMMENDED)。

4. プレイヤー前での実践

基礎的な知識や手技を身に付けてから、実際にゲーム進行ができるかを試していきましょう。
ディーラー候補生がプロのディーラーに成るにあたって、ここが関門となることも多いです。これは、冒頭で述べた「養成機関の不足ないし不在」が大きく関係しています。
ここに到達した段階では実際のゲーム進行の経験が不足しており、またゲームテーブルでは様々な状況が発生するためそれらへの対処も求められることから、顧客の前に出られる状態にはありません。
実践機会の獲得としては実践形式の研修や講習の受講、非営利サークルに参加してのディーラー担当、自らホームゲームやプライベートゲームおよびサークルなどを企画設立しディーラー担当、などが手段として挙げられます。店舗や大会だけがポーカーではないので、視野を広く持ちたくさん行動しましょう。

5. 応用的な知識や技術の獲得

ここまで来れば晴れてプロのディーラーです。おめでとうございます。
ところで、「シャッフルやピッチングの高速化」や「マルチウェイでのオールイン処理」、「チョップポットの効率的な作り方」や「多種多様なミックスゲーム」など、プレイヤーから見てワクワクするような高度技術や特殊対応への知識はここに至ってから取り組めば十分です(OPTIONAL)。裏を返せば、基本が未完成なうちからそれを疎かにして応用的な内容ばかり取り組んでも、無益どころか有害にすらなり得ます(SHALL NOT)。
基本なくして応用なし、です。焦らず、着実に、積み重ねましょう(SHOULD)。ことディーラー業においては、努力はあなたを裏切りません。

最後に

本稿の投稿日はちょうど終戦記念日ですね。
誰かを傷つけるだけで誰も幸せにしない無益な論争はもうやめにして、みんなで未来を向いてプレイ体験や業界をよくしていこうではありませんか。

また、弊サークルでは多種多様なミックスゲームを遊べるイベントを不定期に開催しておりますので、ご興味のある方はぜひ𝕏のフォローをお願いします。

内容が役に立った、為になったと思われた方はチップをお願いします。

長くなりましたが、この辺で。
One seat open!

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