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薬局薬剤師になる前に!労災保険の処方せん、対応できますか?【基本編】業務災害・通勤災害の見分け方と薬局で使う様式

※本記事の内容は2026年7月時点の情報をもとにしています。労災保険の書式・手続きの運用は、労働基準監督署や勤務先の薬局によって対応が異なる場合があります。正確な情報は勤務先の薬局や、管轄の労働基準監督署への確認をお願いいたします。


こんにちは、フリラ・プラスの小池です。
私は2013年から薬剤師としてドラッグストアに勤務し、2023年1月にフリーランス薬剤師として開業、2025年1月に合同会社フリラ・プラスを設立して、現在はフリーランス薬剤師×法人運営で生活をしています。


保険調剤の経験がまだ少ない方は、労災の処方せんを受け付けたときに「何か書類が必要なのだろうか」「とりあえず患者様が持ってきた書類を預かればいいのかな」と戸惑う場面があるのではないでしょうか?

労災は、国民健康保険や社会保険とは異なるため、初回の受付時には処方せんとは別に、指定の労災の用紙が必要になります。
そんな労災の用紙ですが、患者様や会社から渡された書類をよく見てみると「薬局では使えない書類だった…」ということも多々発生したり、初回の受付時にはまだ労災の用紙がないということもあり得ます。

この記事は基本編として、調剤薬局で労災の処方せんを受け付けたときに、まず押さえておきたい「見分け方」と「基本の様式」をまとめます。

※患者様が公務員のときの扱い(公務災害)と、労災アフターケア制度については、後編の記事でまとめています。


この記事のポイント(先にまとめ)
✅ 処方せんは保険の欄(保険者番号)が空欄かどうかが労災に気づく手がかり
✅ 薬局で使用する労災の様式は「業務災害」と「通勤災害」の大きく2系統
✅ 様式は「病院用」と「薬局用」で別々の原本が必要(コピーでは対応できない)
✅ 労災の相談があった時点で、原本が必要な旨を先に伝えておくとトラブルを防げる
✅ 様式の記載事項には、見逃しやすい確認ポイントがある


処方せんのどこを見ると労災だとわかるのか?

実は、労災の処方せんに「これは労災です」とはっきり書かれているとは限りません。処方せんに「労災」と記載しなければならない、という決まりはないためです。

そのうえで、受付で「もしかして労災かな?」と気づくための手がかりを紹介します。

 

① 保険の欄(保険者番号・記号番号)が空欄になっている

労災は健康保険を使わないため、通常の処方せんにある保険者番号や被保険者の記号・番号の欄が、空欄のまま発行されます。
※まれに保険者番号などの記載がある場合(消し忘れ?)があります。

 

② 「労災」の記載や負傷年月日が入っていることもある

医療機関によっては、処方せんに「労災」といった記載やスタンプ、負傷(発病)年月日が入っていることがあります。ただし、これは必須ではないため、記載がない=労災ではない、とは言い切れません。

 

③ 最終的には受付での確認がいちばん確実

処方せんの見た目だけでは判断しきれないことも多いため、保険者番号などの記載がないことが分かった時点で、私は患者様に状況を確認するようにしています。
※労災以外にも、自賠責やマイナンバー(資格確認証)忘れなど、様々な可能性が考えられます。

労災であれば、あわせて労災の様式(このあと紹介する様式第5号・第16号の3など)が必要になるため、その用紙の有無もセットで確認を行います。

なお、患者様が国家公務員・地方公務員の場合は、労災保険ではなく「公務災害」という別の制度の扱いになり、使う様式も変わります(後編の記事で紹介します)。


薬局で使う労災の様式は大きく2系統

労災保険の対象には「業務災害」「複数業務要因災害」「通勤災害」があります。
薬局で初回に使用する様式は、①業務災害・複数業務要因災害と、②通勤災害の2系統に分かれます。

業務災害は、仕事中や業務に関連して負ったケガ・病気のことです。
一方、通勤災害は、自宅と職場の間を移動している途中に事故などに遭ってしまった場合のケガ・病気を指します。

ここがポイントなのですが、業務災害か通勤災害かによって、薬局で受け取る・提出する様式(用紙)が変わります。
そのため、まずは「これはどちらの労災なのか」を確認することが、最初の一歩になります。


業務災害と通勤災害で「使う様式(用紙)」が変わる

労災保険指定薬局(労災の指定を受けている薬局)として薬剤の支給を行う場合、初回に必要になる様式は次のとおりです。


①業務災害の場合の様式

様式第5号「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書」を使います。

病院に提出する分と、薬局に提出する分は、それぞれ別の原本が必要です。


②通勤災害の場合の様式

様式第16号の3「療養給付たる療養の給付請求書」を使います。

名称は異なりますが、役割は様式第5号とほとんど同じで、こちらも病院用・薬局用でそれぞれ原本が必要です。


③転院・薬局を変更した場合の様式

すでに様式第5号・16号の3を提出済みの方が、別の医療機関や薬局に移った場合は、様式第6号(業務災害)または様式第16号の4(通勤災害)という「指定病院等(変更)届」を使います。


④薬局が労災保険の指定を受けていない場合の様式

患者様が薬剤費をいったん全額自己負担した場合は、次の薬局用様式を使用します。

・業務災害・複数業務要因災害:様式第7号(2)
・通勤災害:様式第16号の5(2)

薬局は、薬剤師の証明欄や調剤内容、金額などを記載して患者様へ返却します。その後、患者様ご自身が所轄の労働基準監督署へ費用を請求します。


通常の保険調剤薬局であれば、ほとんどの場合、労災保険指定薬局としての指定を受けているため、①②のケースで対応することが多いと思います。

なお、同じ労災事故について同じ薬局を継続して利用する場合、様式第5号または第16号の3の書類については、処方せん受付のたびに提出してもらう必要はありません。
※患者様からは一度だけ書類を受け取れば大丈夫です。

様式第5号等の宛先は、被災した労働者の事業場を管轄する労働基準監督署長です。
ただし、薬局からは薬局所在地を管轄する都道府県労働局に提出を行い、そこから経由して各労働基準監督署に送られます。


「病院用のコピーでいい」と言われたら?よくある誤解と私の実体験

労災の処方せんを応需する場面で意外と遭遇するのが、患者様から渡された書類が「病院に提出した分のコピー」だったという状況です。

実は、様式第5号・16号の3は、病院用と薬局用、それぞれに原本が必要で、コピーでは薬局として受け付けることができません。

 

数年前、社会人になって2〜4年目あたりの頃の話です。

業務中のケガで労災の処方せんを応需した際に、患者様から「この書類で良いと言われたので持ってきました」と、少し面倒くさそうに言われたことがありました。

しかし、お預かりした書類は病院用の様式のコピーで、薬局としてはそのままでは対応ができません。

そのため、その場で「薬局用の原本がもう1枚必要になります」とお伝えして、会社にあらためて確認していただくようお願いしました。
※うろ覚えですが、会社に直接お電話してお伝えしたこともあったと思います。

後日、あらためて原本を持ってきていただき、労災としての対応ができました。

 

正直なところ、労災を申請する側の会社の担当者が、薬局用も必要であることを把握されていないケースが多いと感じています。
ただ、労務担当の方も日々多くの業務を抱えるなかで、薬局用の書類も必要とまで把握するのは難しい部分があるのだと思います。

だからこそ、薬局側から先に伝えておくことが大切だと私は考えています。

労災の相談のお電話または来局された時点で、こちらから先手を打って「病院用とは別に、薬局用の原本も必要になります」とお伝えしておくと、後々のトラブルや、患者様に何度も足を運んでいただく手間を防ぐことにつながります。

ちなみに、さらに一歩進んだ対応として「業務災害は様式第5号」「通勤災害は様式16号」というように、どの様式が必要になるかをメモなどで伝えると間違いが少なくなると思います。


様式の記載事項・薬局で見逃さないようにしたい確認ポイント

様式第5号・16号の3には、主に次のような事項が記載されます。

・労働保険番号
・患者様の氏名・生年月日
・負傷または発病年月日
・事業場の名称・所在地
・災害発生の状況
・指定病院等(薬局)の名称・所在地

特に、労働保険番号、生年月日、負傷または発病年月日は、薬剤費請求の内容を照合するための重要な項目です。

ちなみに、「指定病院等の名称・所在地」欄には、提出先となる薬局の名称・所在地を記載します。
病院の名称・所在地が記載されている場合は、通常、その病院へ提出するために作成された書類と考えられるため、そのまま薬局用として使用せず、薬局へ提出する原本を改めて用意してもらうように伝えます。
※持参されて書類が原本であれば、病院の記載部分を二重線等で訂正し、薬局の情報を記載して対応できる場合もあります。

これらの記載に漏れがあると、処方された分の照合ができず、審査に進めないことがあります。
受け取った際は、記載漏れがないか一度目を通しておくと安心です。


まとめ(前編)

  • 処方せんは保険の欄(保険者番号)が空欄かどうかが労災に気づく手がかり

  • 薬局で使用する労災の様式は「業務災害」と「通勤災害」の大きく2系統

  • 様式は「病院用」と「薬局用」で別々の原本が必要(コピーでは対応できない)

  • 労災の相談があった時点で、原本が必要な旨を先に伝えておくとトラブルを防げる

  • 様式の記載事項には、見逃しやすい確認ポイントがある

労災の処方せんは、保険調剤と比べると対応する機会が少なく、初めて応需したときは戸惑う方も多いと思います。

「業務災害か通勤災害か」
「薬局用の原本があるか」

まずはこのあたりを押さえておけば、現場でも落ち着いて対応できると私は思っています。

後編では、少し応用的な2つのテーマ——「患者様が公務員のときは労災ではない(公務災害)」と「労災アフターケア制度」——を紹介します。

あわせて読んでいただけたら嬉しいです。


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